ソフトバンクは、デジタルツインを活用したIPネットワークの運用自動化システムを開発し、全国のメトロネットワークで運用開始したと11月25日に発表。人の操作を介さずに、異常検知から復旧までシステムが自動実行するゼロタッチ運用を実現した。障害対応の迅速化や、運用工数の削減が可能になり、業務効率化とサービスの安定性向上に寄与するとしている。

  • ソフトバンクが全国のメトロネットワークで運用開始した、デジタルツインを活用したIPネットワークの運用自動化システムのイメージ

    ソフトバンクが全国のメトロネットワークで運用開始した、デジタルツインを活用したIPネットワークの運用自動化システムのイメージ

このシステムは、ネットワーク機器の微細な変化を把握してサービスへの影響の前兆(予兆)を捉える「予兆検知基盤」と、障害発生時に迂回可否を自動で判断する「迂回可否自動判定システム」で構成したもの。なおメトロネットワークとは、コアネットワークとアクセス回線を接続するIPネットワークのことで、ソフトバンクのメトロネットワークでは全国1万台規模の機器を擁するとのこと。

同システムを導入したソフトバンクのメトロネットワークの運用については、通信業界を中心とした国際的な業界団体であるTM Forumが定める「Autonomous Networks」(自律型ネットワーク)の「IP Fault Management」シナリオにおいて、国内初のレベル3(条件付き自律)の認定を取得。ソフトバンクでは、「世界的にも高水準の自律運用」とアピールしている。

今後は生成AI技術なども取り入れて運用のさらなる高度化を進め、レベル4(高度自律運用)相当をめざすほか、コアネットワークなど他のネットワーク領域への同システムの展開により、迅速で安全な自律運用とサービスの安定化・品質向上にも取り組む。

システムの概要

IPネットワークにおける機器の故障から復旧までのプロセスは、一般的には以下の流れで構成される。

  1. 異常検知
  2. 迂回制御などによるサービスの復旧措置
  3. 機器の復旧措置
  4. ネットワークの正常確認

ソフトバンクは今回新たに、プロセスをまたいだ自動化の大きな障壁となっていた「迂回可否判断」を自動化するための「迂回可否自動判定システム」を開発し、運用を開始。

さらに、ネットワーク機器の微細な変化を把握してサービスへの影響の予兆を捉える「予兆検知基盤」を構築し、高精度な異常検知と迅速な迂回制御を可能にすることで、サービスのさらなる安定化を実現した。従来は技術面やリソース面の制約により実現が難しかったものだという。

同社はふたつの仕組みで構成したシステムを全国のメトロネットワークで運用し、通信ネットワークおよびサービス品質の向上を図る。

今回開発した「迂回可否自動判定システム」は、機器や関連システムから取得した設定情報やステータス情報、作業情報、アラーム情報をほぼリアルタイムに収集し、ネットワークの構成変化に特化したデジタルツイン上で状況を分析するというもの。実際の状態に基づいた自動判定を行い、サービス復旧までの時間を大幅に短縮できるとする。また、監視工数の削減や個人のスキルに依存しない安定的な運用体制の構築にも寄与するとのこと。

一般的に、異常検知時の迂回判断では、該当機器のトラフィックの流れやネットワークの冗長構成、迂回経路などの設計情報に加えて、作業や故障によって変化するネットワークの状態などを総合的に把握して判断する必要がある。このため定型的な自動化が難しく、従来は熟練の技術者が都度状況を確認し、判断する必要があったが、これを上記の判定システムで自動化した。

  • 迂回可否自動判定システムの概要

    迂回可否自動判定システムの概要

もうひとつ、新たに構築した「予兆検知基盤」では、ネットワーク機器からデータを自動的に送信する“テレメトリー(Telemetry)”を活用。プッシュ型で、リアルタイムに近い頻度で細部の状態を継続的に把握できる仕組みで、機器の機能有無に依存せず多様なネットワーク機器を対象に、機器の状態や通信統計データなどを従来の約5倍の頻度で取得でき、より迅速かつ詳細な把握を可能にした。取得データに対して柔軟な分析やアラート化を行い、サービス影響の前兆となる傾向変化を早期に検知。ネットワークのさらなる高信頼化に寄与するという。

これまでは、ネットワーク機器を遠隔で一括して監視・制御するための標準プロトコル「SNMP」(Simple Network Management Protocol)や、機器に搭載されたモニタリング機能を用いて、機器の性能や状態の把握を行っていたが、サービスに影響が出る前に検知することが難しく、機能の有無が機器に依存するといった課題があった。予兆検知基盤を導入することで、こうした課題もクリアしたかたちだ。

  • 予兆検知基盤の概要

    予兆検知基盤の概要