日本ヒューレット・パッカード(HPE)は11月20日、ハイブリッド・マルチクラウド管理・運用を包括的に実現する統合サービス「HPE Unified Cloud Management」の提供を開始すると発表した。同日にはオンラインで説明会が開催された。

ハイブリッド・マルチクラウド環境の課題

新サービスでは、顧客のビジネス戦略も見据えてITインフラにおける8つの領域を網羅し、AIも用いて管理・運用の最適化およびシンプル化に向けた構想の策定から構築・運用まで一気通貫で実施するサービスを提供する。

まず、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 アドバイザリー&プロフェッショナルサービス 事業統括本部長の挾間崇氏は「2022年以降、日本市場においても生成AIの需要・活用が広がっている。企業がAIの活用を広げるためには、従来以上に俊敏かつ柔軟にサービスを開発、提供、運用していく必要があり、その環境はさまざまなワークロードに広がっている。ハイブリッド・マルチクラウド、オンプレミス、エッジといったIT環境の使い分けは複雑化していく」と指摘。

  • 日本ヒューレット・パッカード 執行役員 アドバイザリー&プロフェッショナルサービス 事業統括本部長の挾間崇氏

    日本ヒューレット・パッカード 執行役員 アドバイザリー&プロフェッショナルサービス 事業統括本部長の挾間崇氏

続けて、同氏は「これらの複雑性はデータの機密性のみならず、データをどこでどのように処理すれば俊敏性と柔軟性が得られるのかも検討しなければならない。だからこそ、ハイブリッド・マルチクラウドへの対応が求められてくる」との認識を示した。

実際に、こうした状況はグローバルマーケットでは生じており、Market Research Futureの調査によると、グローバルにおけるマルチクラウドプラットフォーム市場の年間成長率は2032年までに16.1%と見込まれている。

多くの企業がハイブリッド・マルチクラウド環境を最善策と考えており、IT環境として単一のクラウドプラットフォームを活用するよりも優れたROI(Return on Investment:投資利益率)を実現できると考えている。

その反面、多くの企業がクラウド環境の統合や管理の問題など複雑性に関する課題に直面しているほか、コスト上昇も懸念材料となっている。日本のマーケットも近い将来、同様の課題に直面することを前提に対策が必要だという。

挾間氏によると、管理する複数IT環境の複雑さが増して最新技術への適応が困難になり、部分最適によるサイロ化で全体最適が欠如してしまうほか、データにもとづくリソースやパフォーマンス管理などの欠如でコストも含めたリソースが増大し、均一ではないセキュリティポリシーやコンプライアンス規制でインシデントリスクも増大するという。

同氏は「その都度、局所的に対応していては膨大なマニュアル作業が発生し、最適化の継続性を欠く。あらゆる課題に対して継続性を担保することは、真のハイブリッド・マルチクラウドにデザインするうえで最も重要な要素だと考えている」との見立てだ。

  • 企業におけるハイブリッド・マルチクラウド環境の課題

    企業におけるハイブリッド・マルチクラウド環境の課題

最適化の要素を備えた「HPE Unified Cloud Management」とは

最適化の継続性に向けては、異なるプラットフォーム、パブリッククラウドに分散するワークロードやサービスをシンプルな方法で管理、運用、オーケストレーションできる能力を持つことは不可欠だという。その要素として、クラウドエクスペリエンス、柔軟性と拡張性、可視性とコントロール、シンプル化と自動化、AIの最大活用、サステナブルなライフサイクルを挙げている。

このような要素を具備したものが、HPE Unified Cloud Managementというわけだ。新サービスは、複雑なIT環境のシンプル化、最適化の継続、競争優位性を持続するための経営資源の確保と活用を支援。

リファレンスモデルを活用したワークショップを通じて8つの領域におけるAs-Isの分析にもとづくTo-Beのギャップを特定し、HPEやパートナー製品を含めたエコシステムの導入、インテグレーションを支援するという。8つの領域は以下の通り。

  • DataOps:データのライフサイクル管理によるデータ活用の効率化
  • PlatformOps:一元管理とインテグレーションによる継続的な最適化
  • GreenOps:電力消費の可視化など、サステナビリティ戦略の促進支援 
  • SecOps:サイロ化の解消と継続的な最適化によるセキュリティ・ガバナンス強化
  • SSAMOps:ソフトウェア資産の最適化によるコスト削減
  • FinOps:資産とコストの可視化による企業全体の財務管理
  • AIOps:AIを最大限に活用した可観測性向上と自動化
  • NetOps:ネットワーク環境の自動化とプログラム化による効率化

このうち進化させるべきOpsを「PlatformOps」「SecOps」「AIOps」「NetOps」、新たに検討すべきOpsを「DataOps」「GreenOps」「SSAMOps」「FinOps」と位置付けている。

  • 8つのOpsの概要

    8つのOpsの概要

8つのOpsによる戦略的クラウド運用

日本ヒューレット・パッカード アドバイザリー & プロフェッショナルサービス 事業統括本部 ビジネス開発部 部長の魚住広貴氏は「8つの領域それぞれに対して成熟モデルを開発することで、各オペレーションを再定義した。単なるIT戦略ではなく、今後のAI時代において市場競争優位性を確保するという、顧客のビジネス戦略に踏み込むものだ」と話す。

  • 日本ヒューレット・パッカード アドバイザリー & プロフェッショナルサービス 事業統括本部 ビジネス開発部 部長の魚住広貴氏

    日本ヒューレット・パッカード アドバイザリー & プロフェッショナルサービス 事業統括本部 ビジネス開発部 部長の魚住広貴氏

8つの領域は市場競争優位性を確保していくものであり、進化しなければならない領域と検討すべき領域に大別している。独立して検討していくものではなく、各オペレーションが連動することで断片的、局所的な最適化を避け、デザインされたハイブリッド・マルチクラウド環境を実現していくという。

魚住氏は「その中心を担うものがPlatformOpsであり、当社では中核となるハイブリッドクラウド管理製品『HPE Morpheus Enterprise』が最大の差別化要因となる。Morpheusが他領域とインテグレーションし、PlatformOpsから各領域をコントロールすることで一元化と自動化を可能としている」と説明した。

新サービスは、コンセプト整理から構想・計画・検証、構築・運用までの3ステップをアドバイザリーサービス、プロフェッショナルサービス双方で一貫して提供する。

  • 「HPE Unified Cloud Management」の概要

    「HPE Unified Cloud Management」の概要

アドバイザリーサービスは勉強会、ワークショップ、ロードマップ策定までを支援。勉強会ではHPEの事例紹介やデモ実演、ワークショップについてはアセスメントをもとにしたディスカッションベースで課題を洗い出し、目指すべき姿を描くなどのアクションプランを策定。ロードマップ策定では、最適化に必要なツールの候補選定や既存環境とのインテグレーションを考慮しつつ、各Opsの優先順位決定やスケジュール策定などを実施する。

  • アドバイザリーサービスの概要

    アドバイザリーサービスの概要

一方、プロフェッショナルサービスはPoC(概念実証)、設計・実装、展開・運用までを支援する。PoCで各Opsで優先順位が高いものから必要なツールを選定し、目的とゴールを明確にしてスケジュール作成、環境構築詳細設計などを行い、PoCを実施。設計・実装では既存環境とのインテグレーションを考慮しつつ、ユーザー視点でシステム概要基本設計から詳細設計までを行い、インテグレーションのプロフェッショナルが要望に対し、カスタマイズして構築する。展開・運用に関しては、知見豊富なグローバルPMO(Project Management Office)を活用した海外展開や国内グループ企業に展開し、グローバルマネージドサービスを活用して統一した品質で運用を実施していく。

  • プロフェッショナルサービスの概要

    プロフェッショナルサービスの概要

最後に魚住氏は「新サービスはお客さまのビジネス戦略に踏み込んでハイブリッド・マルチクラウド環境を最適化するサービスだ。IT環境における最適化の継続、シンプル化の実現、AI時代の競争力を加速させる新たなリソース確保が実現できる。当社がアドバイザリーからプロフェッショナルサービスまで一貫して実施できる」と述べ、説明を結んだ。