ノーコードツールとして国内で高いシェアを持つサイボウズのkintone。日本企業の海外進出に合わせ海外でも利用者が増加し、現在世界で40,000社以上が利用するサービスに成長した。拠点もアジアを中心に中国、香港、台湾、マレーシア、タイ、ベトナム、加えて、アメリカ、オーストラリアなどに設けると共に、海外でイベント「kintone Days Global」を開催するなど世界展開に力を入れ始めた。同社は10月27日に年次イベント「Cybozu Days 2025」を開催。当日行われたセッションで中国、台湾、タイ、マレーシアの拠点の代表が一堂に会し、現在アジアで起きているkintoneによる企業DXの現状について報告会を行った。どのようなDXが行われているのかレポートする。

  • 「Cybozu Days 2025」、「グローバル企業が選ぶ kintone 〜世界4拠点のリアル事例から見る、業務改革の最前線」の模様

    「Cybozu Days 2025」、「グローバル企業が選ぶ kintone 〜世界4拠点のリアル事例から見る、業務改革の最前線」の模様

「Cybozu Days 2025」で中国、台湾、タイ、マレーシアの拠点の責任者が集結。アジアのDX事情を紹介

サイボウズのkintoneは、専門の知識がなくとも簡単に業務用アプリケーションを作成できるノーコード開発ツール。2011年の販売開始以来、41,000社以上(2025年10月31日時点)が利用し、パートナー企業も500社以上(2025年8月時点)になり、年々ユーザーの数を増やしている。同社はアジアを中心に中国、香港、台湾、マレーシア、タイ、ベトナム、加えて、アメリカ、オーストラリアなどに拠点を設置し世界展開を図っており、今まで「kintone Day China」として中国で開催していたイベントを拡大し「kintone Days Global 2025」として9月、バンコク、深セン、上海、台北で相次いで開催した。台湾では、初代デジタル発展省大臣 オードリー・タン氏が登壇するなど話題となった。

その一方で、国内では年次イベント「Cybozu Days 2025」を10月27日と28日に幕張メッセで開催。当日は同社のkintoneやGaroonなどを提供するパートナー企業の製品やサービスがブースとして展示された他、多くの著名人、関係者によるセミナーが開催された。その中のセミナーの一つ「グローバル企業が選ぶ kintone 〜世界4拠点のリアル事例から見る、業務改革の最前線」では、中国、台湾、タイ、マレーシアの拠点責任者が一堂に会し、それぞれの地域での企業DXの成功事例について紹介が行われた。

セミナーは、司会をKintone SEA マレーシア拠点の代表 中澤飛翔氏が務め、中国拠点 総経理 増田導彦氏と台湾拠点 支店長 菅沼康太氏、Kintone Thailand 代表 ナムヤー・ワユーパープ(Namya Wayuparb)氏がそれぞれ事例の説明を行った。

  • 司会を担当するKintone SEA 代表 中澤飛翔氏

    司会を担当するKintone SEA 代表 中澤飛翔氏

今回紹介する事例は、「kintone Days Global 2025」で登壇した企業、中国拠点のダイキン工業の金清研先進科技(惠州)有限公司の事例、台湾拠点の台湾ポーライトである台灣保來得股份有限公司の事例、タイのKOBELCO SOUTH EAST ASIA LTDの3つ事例となる。それぞれ詳細を見ていきたい。

1人の新人の活躍でkintoneを使って一気に進む企業DX。中国深センのダイキンの事例

中国深センでのダイキンの事例では、同社の中国事業である大金清研先進科技(惠州)有限公司は空調設備ではなく化学事業の部門で主にフッ素ゴムの製造販売をしている。企業DXに関しては中国でもIT人材が国内同様不足しており、同社もIT内製化に高い関心を持っていた。今回の事例ではkintoneを活用した内製化による業務効率化が実施、そこで新人のIT技術者が重要な役割を果たしたという。

  • サイボウズ 中国拠点 総経理 増田導彦氏

    サイボウズ 中国拠点 総経理 増田導彦氏

その中心的な役割を果たしたのが管理部IT課IT企画主任 林 延徳氏 。彼女は昨年の4月に入社したばかりの新人だが、日本とIT技術に知見があり深センで開催されたkintone daysで、ノーコード、内製化という言葉に共感し、会社の上長に働きかけkintone開発プロジェクトをスタートさせたという。

  • 管理部IT課IT企画主任 林 延徳氏(講演資料より)

    管理部IT課IT企画主任 林 延徳氏(講演資料より)

プロジェクトリーダーの林氏は、各部門約2名をプロジェクトメンバーとして招集、計8名でプロジェクトを開始し、IT知識もないメンバーに直接レクチャーし、kintoneアプリ開発を推進していった。プロジェクトは、10カ月程度のものだったが、最終的に約8名のメンバー全員がそれぞれ管理部、営業部、製造部、SCM部で利用できるアプリを作ることが可能になった。中でもその営業部の新規顧客登録管理台帳や価格登録管理台帳の完成度は高く大きな成果を得ることができたという。最終的にはこの取り組みに参加したプロジェクトのメンバーは、中国のDX化変革貢献賞を受賞している。

  • 中国のDX化変革貢献賞を受賞(講演資料より)

    中国のDX化変革貢献賞を受賞(講演資料より)

プロジェクトの成功には林氏の活躍もあるが、社を挙げた企業DXの支援に加えて、比較的に入社して間もない若手をうまく招集し、ベテラン社員の抵抗をうまく回避したのが成功のポイントとなったという。

kintone導入で、ナレッジの共有と蓄積、ペーパーレス化を実現した台湾ポーライトの事例

小型モーター用のべアリング、軸受で世界トップのシェアを持つ製造企業で、台湾で50年以上ビジネスを展開している台灣保來得股份有限公司(台湾ポーライト)の事例では、同社の副総経理 安部 良夫氏 がGaroonのユーザーでその縁もあり、kintoneを活用した業務改革とナレッジの集積・活用を狙いDX化プロジェクトが行われた。

  • サイボウズ 台湾拠点 支店長 菅沼康太氏

    サイボウズ 台湾拠点 支店長 菅沼康太氏

台湾でも企業DXは、一部を除いてまだ日本と比べて5年から10年ぐらい前の非IT状態で、同社でも未だに100種類以上の紙帳票が使用されデータ化されておらず、データもサイロ化し情報抽出に時間がかかるなど、ナレッジの蓄積と活用がまるで進んでいなかった。これらの課題をkintoneの活用で解決すべく富士フィルムビジネスイノベーションの支援を受けプロジェクトが発足。プロジェクトは、最初に全体1400名のうち、まずは35名ほど選抜して、コア人員として自分でアプリを作れる程度までに教育。次に各自アプリの構築を行ってもらい帳票をアプリ化し、IT部門にてアクセス権限などのチェックを行いつつ本格稼働までにいたる体制を3カ月程度で構築したという。

  • 中心的役割を果たした台灣保來得股份有限公司(台湾ポーライト)の副総経理 安部 良夫氏と林嘉泰氏(講演資料より)

    中心的役割を果たした台灣保來得股份有限公司(台湾ポーライト)の副総経理 安部 良夫氏と林嘉泰氏(講演資料より)

その結果、アプリ化された帳票のデータがkintoneのデータベースに蓄積され、発注、顧客、経費他、様々なデータが検索可能となり、ナレッジとして運用できるようになった。kintoneの利用は進み、現在464名がkintoneを活用、最終的には生産員も含めた1400名全体での利用を目指しているという。導入時の反発については、コア人材の活躍によりある程度抑えられた他、対象部門の要望や不満に対して1週間ごとにトライアルを実施し、現場での不満の解消に努めたと結果だという。

多くの進出企業が進出するタイ、周辺拠点すべてで利用・共有できるkintoneアプリを開発。KOBELCO SOUTH EAST ASIA LTD.での事例

タイは、5千社から1万社ほどの日系企業が進出しており、KOBELCO(神戸製鋼所)も東南アジア地域の全域を統括する拠点としてタイにSOUTH EAST ASIA LTD.を置いている。同社の事例は、Senior IT Manager の糸数聡氏が周辺拠点で共通に利用できるアプリ開発を行ったもの。KOBELCOは、大規模なDX戦略を展開しており、アウトラインの第1ステップ「積極的かつ勇猛果敢なデジタル化」において人材と環境、風土の育成ために汎用デジタルツールの利用率向上と市民開発の促進を進めている。その中でkintoneが利用されてきたが、海外拠点では未だに浸透しておらず、糸数氏はその改善のためプロジェクトをパートナー企業の富士フイルムビジネスイノベーションの支援のもと実行している。

  • Kintone Thailand 代表ナムヤー・ワユーパープ氏

    Kintone Thailand 代表ナムヤー・ワユーパープ氏

同氏は、まずkintoneを導入し自身でも使用し、効果のある事例として告知し、制作アプリを他の拠点でも利用できるようにテンプレート化して、次々と拠点で導入させていった。アプリ導入の際の利用法や運用法などについては、パートナー企業の富士フィルムビジネスイノベーションの支援のもと、「kintoneトレーニング」というイベントを開催し、そこで必要なレクチャーを行ったという。特に現地化において重要なのは、利用者のレクチャーで、このサポート体制がしっかりしているのがkintoneの大きなメリットだという。

  • KOBELCO SOUTH EAST ASIA LTD. Senior IT Manager 糸数聡氏((講演資料より)

    KOBELCO SOUTH EAST ASIA LTD. Senior IT Manager 糸数聡氏((講演資料より)

アプリをタイ語や中国語のような現地の言語で作れるところも大きなポイントになったという。

アジアのDX事情は国内と変わらず、ハードルの低いノーコードツールkintoneが更にAI導入で企業DXを後押し

アジアには、日系企業が多く進出しており、kintoneの海外展開もそれに歩調を合わせたもので、それぞれの地域でも日本と同様に未だに企業DXが進んでいない状況だという。深センの事例では、突出した人材による改革、台湾ではベストメンバーを選出しての改革、タイでは企業全体が後押しした事例となるが、それらの事例を支えているのは、kintoneのハードルの低さと汎用性、そしてパートナー企業も含めたサポート体制だ。

それぞれのアジア拠点では、まだ日本のように現地化したソリューションが揃っておらず、現場の用途に対応したソリューションを現地の人々が開発する市民開発の需要は高い。kintoneはそれらの需要に対応しており、最近では話題のAI機能「kintone AIラボ」を4月にβ版をリリース。検索AI、アプリ作成AI、7月にはプロセス管理設定AIなどの機能を提供している。現地語でこれらの機能を活用することで、現地のDX化は更に進むことが期待される。