
タイパ・コスパを極める商品
令和6年時点(総務省統計)で日本は共働き世帯が前年比で22万世帯増の1300万世帯となり、全体の7割を超えた。反対に、専業主婦世帯は減少し共働き世帯の約1/3となった。
物価高騰下では、パート勤務であった妻もフルタイム勤務に変更し、共働きでないと家計が回らない時代に突入している。令和5年の1世帯当たりの平均所得金額は「全世帯」で536万円、「児童のいる世帯」は820.5万円という数字からも、子育て中の現役世代はダブルインカムで生活を回していることがわかる。
夫婦ともに仕事や育児で忙しい毎日を過ごす中で、食卓も大きく変化。コロナ禍以降冷凍食品の市場は大きく伸びているが、小さな子どもがいる世帯は安さだけでなく、栄養価が高く安心安全な食べ物を食べさせたいという需要も高い。そうした社会背景の中、消費者に刺さっている商品がOisixの取り組むミールキットサービスである。
「キーワードは『時短かつリーズナブル』。忙しいけど、家族の食卓には手を抜きたくないというニーズは昔からある。これを今の時代に合わせた形で進化させている」─。こう話すのは、食品の宅配事業を行うオイシックス・ラ・大地執行役員Oisix EC事業本部長の青木孝哲氏。
「Oisix」は、「つくった人が自分の子どもに食べさせられる食材のみを食卓へ」をコンセプトに、有機野菜や特別栽培野菜や、できる限り添加物を使用せずに作った加工食品などの食品を取り扱うEC食品宅配サービス。現在約35万人の会員が利用する(25年6月時点)。
特に忙しい子育て現役世代向けに同社が2013年から注力してきたミールキット『kit Oisix』は、20分で野菜が5種類以上を使った主菜と副菜が完成するというもので、会員数は24万人を超える。適量の材料、調味料がセットで届き、同封のレシピ通りに調理すればあっと言う間に、立派な料理ができるというものである。
しかしこの簡便さを生み出すためには商品開発部の相当な苦労がある。調理時間20分以内、野菜を5種以上使い、満足感も得られるという条件下で、栄養バランスにも配慮。美味しさはもちろん、食べ飽きずに食の楽しさを与えるなど、多くの条件の中で最適解を導き出す。サブスクリプション型サービスのため、商品レパートリーは3カ月サイクルで考え、重ならないよう約1000メニューを持つ。
このミールキットをさらに時短化した10分で完成する『超ラクKit』も開発。2025年上期の同商品の売上は前年同期比で1.9倍と好調。今年10月にリニューアルを行い、調理効率を強化した。包丁も使わず、洗い物も少なくなるよう設計し、極力調理の手間を省く。1人当たり税抜490円~という価格設定もポイントだ。
「日常の食品の価格設定としては相対的に高い部分があると思うが、外食と比較し安いとお客様は考えてくれているのだと思っている。家族人数が増えるほど自炊回帰する。2~3人を対象としたミールキットでは、量を増やすときにかさましできる食材の提案も行っている。買い物に行く時間、献立を考えて作る時間、片付ける時間、トータルでの時短を叶え、総コストのコスパは優れているとの声をいただく」(同氏)
ミールキットは現在さまざまな進化を遂げている最中。例えば、医師・管理栄養士監修でがん患者向けに塩分量など栄養バランスが考慮された『ヘルスケアKit Oisix』を開発。治療中で体調が優れない本人や家族の調理負担を減らすよう設計された。今後もこういったターゲットを絞ったミールキットの横展開も出てくるだろう。
今年1月、さらに時短を追求した調理不要の商品が週3セット届く「Oisixデリコース」を開始し会員は2万人を突破した。製造が追いつかず一時はコース登録待ちが4000人(3月下旬時点)という状態になり、製造体制の強化が課題でもある。
食品ECとしての役割とは
「コロナ禍にあらゆる業界でEC全体が伸びたとはいえ、日本における食品の宅配はまだまだ10%に満たない。今後も時短サービスを強化し会員を伸ばしていく」と青木氏。
同社は「これからの畑、これからの食卓」を会社のミッションに掲げ、生産者と消費者をつなぐ役目を担う。昨今では猛暑により青果の生産量が落ち、形や色の見た目の出来が悪いものも多い。しかし、こうした見た目が悪いだけで味には問題ない商品ということを消費者に伝え、規格外野菜の販売にも注力する。
「規格外野菜については好評で売り切れまでいきます。当社は市場価格によらず、畑を買い取らせていただいているので価格設定は年間計画。そのため、今年話題になったキャベツやコメ価格の高騰も影響を受けず、スーパーより圧倒的に安い価格で販売することができた。生産者の収入も保証しつつ、お客様にも価格を下げて提供できるよう努力している」と青木氏。市場価格の影響を受けづらい面、消費者にとっては毎月の食費をコントロールしやすいという利点は価値でもある。
レシピ考案や買い物に行く手間、食事後の片付けまで、見えないコストも削減する考えられた同社のサービス。単に食材を売るだけでなく、働く現役世帯の脳となり食卓をサポートする役割を担う同社である。