NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)は11月11日、企業の社員とその親をつなぐ、ビジネスケアラー予備軍を対象とした「リボンdeCoCo プロジェクト」を開発しトライアルを開始するとして、記者説明会を開いた。
ビジネスケアラーの経済損失は約9兆円
日本では少子高齢化社会が進み、要支援・要介護者の認定数は増加している。その主な要因は認知症であり、その前段階のMCI(Mild Cognitive Impairment:軽度認知障害)を含めると患者数は2022年時点で1000万人を超え、2050年以降は1200万人以上で推移すると試算されている。
認知症の主な症状は、記憶障害や見当識障害といった中核症状と、徘徊や多動、幻覚、誤認などの周辺症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)に大別される。特に周辺症状は、暴言や暴力など、周囲の人に危害を加える可能性がある症状も含まれる。
主な介護者は配偶者(22.9%)であるが、子(19.2%)と子の配偶者(5.4%)を合わせると配偶者とほぼ同数となる。これは、介護事業者(15.7%)よりも高い割合を占める。
子世代は就労している世代である場合も多く、仕事をしながら家族を介護する、いわゆる「ビジネスケアラー」も課題となっている。現在ビジネスケアラーは約300万人いるとされ、介護離職者は年間10万人に上るなど、介護負担の大きさと早期対策の重要性がうかがえる。
経済産業省によると、2030年にはビジネスケアラーが約318万人、その経済損失は約9.1兆円になると試算されている。介護の発生前後では3割ほどパフォーマンスが低下し、特にマネジメント層の女性社員のパフォーマンス低下が顕著だという。
約4割のビジネスケアラーが企業などに何かしらの支援を求めているとする調査結果もあるが、企業の半数以上は介護と仕事の両立支援の基礎となる「従業員の介護の実態把握」ができていない。
こうした課題に対しNTTドコモビジネスは、認知機能が低下する初期段階で行動変容を促すため、「健康をプレゼントして親孝行 リボンdeCoCo プロジェクト」を開始する。このプロジェクトは子世代が介護リスクの高まる親世代に対し、脳や体の健康状態を把握できるようサポートする。
フィンランドで高齢者を対象に実施した、複数のコンテンツによる同時介入(多因子介入)を2年間行ったFINGER研究では、有意な認知機能改善効果が確認された(Ngandu T, et al.,2015)。国内においても、「認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較研究」、通称J-MINT研究で認知機能の改善効果が確認されている(Sakurai T ,et al.,2024)。
しかし高齢者本人が介護リスクを認識し、行動変容を起こすことは困難だ。精密検査が推奨される対象者のうち、検査を受診しているのはわずか7%だ。また、核家族化が進み、親子が離れて暮らす家族も増えている。親が通っていたスポーツ教室を辞めた、怪我で家にこもっていたなど、子が知らない間に親の生活環境が変わる場合もある。
親子がコミュニケーションを取ることで、子が親のリスクや予兆を把握できるようになり、高齢者の行動変容をフォローして重篤化の防止や早期発見につなげられると期待できる。
「リボンdeCoCo プロジェクト」で親子のコミュニケーションをサポート
介護リスクの早期発見や重篤化の防止には、親子の密なコミュニケーションが必要だ。しかし、子と同居しない一人暮らしの高齢者が増え、子に迷惑をかけたくないと健康状態を隠す人も多い。
一方で子は仕事や子育てなど日々の生活に追われ、自信が介護当事者になる自覚が薄れている場合もある。そこで「リボンdeCoCo プロジェクト」では、親と子の双方のボトルネックを解消しながら、コミュニケーションを支援して介護・認知症に対する早期発見を促す。
具体的には、NTTドコモビジネスが開発した「脳の健康チェックダイヤル」および「おもいでダイヤル」と、SOMPOケアの認知機能低下予防プログラムを組み合わせて提供し、リボーンウェルネスが専用サイトや啓発コンテンツの作成、事務局の運営などを担当する。
「脳の健康チェックダイヤル」は、脳の健康の変化をその場ですぐにかんたんに検知し、早期のアクションが可能となるサービスで、「おもいでダイヤル」はフリーダイヤル「0120-468354」へ発信することで、懐かしい新聞記事をもとにAIと過去の思い出を振り返ることができるサービス。
これらをパッケージ化してNTTドコモビジネスが導入し、社内でトライアルを実施。2024年11月~2025年11月までの第一期トライアルでは、社員に対する介護予防コンテンツの早期提供アプローチや、社員からその親への声掛けに関するハードルが検証された。
NTTドコモビジネスの従業員は親に対し、運動教室体験への参加や脳の健康チェックの実施を働きかけた。その前後で参加者の自覚の変化や、子である社員から見た親の変化、親子の関係性などが検証された。
第一期トライアルの結果はトライアル完了後に公表される予定であり、第二期では一部のメニューを見直しながらトライアルを継続。健康習慣の継続による長期的な交換検証も実施予定だ。将来的には他社での有償トライアルなども実施予定。
第一期トライアルに60代の母親が参加したというNTTドコモビジネスの社員は、「母は以前から認知症やアルツハイマー病について関心があった。今回は社内の案内でプロジェクトを知り、私自身が責任世代になりつつある中で、キャリアと介護の問題も無縁ではないと思い母の参加を促した。『今日は運動教室に行ってきた』と母からメッセージがあるなど、コミュニケーション創出にもつながった」と、話していた。








