TISインテックグループのインテックは10月24日、岩手医科大学と共同で、医療文書の見落とし防止に向けたAIの有効性に関する実証実験を2024年12月から2025年8月まで実施した結果について発表した。

インテックは2020年、岩手医科大学に医療データを一元化して高度な利活用を支援する医療情報連携プラットフォームを導入し、医療文書の見落としや確認漏れを防ぐ仕組みとして既読管理システムを構築した。今回の実証実験では、医療文書の重要所見のアラートを医師に通知するシステムの実現に向けて、複数のAIを連携して読影レポート(CTやMRIなどの医療画像をもとに医師が診断結果や重要な所見を記載した医療文書)に書かれている重要所見を判定する手法の妥当性を検証した。

取り組みの背景

医療ニーズが多様化する中、医療安全や医師の負担軽減を目的に、医療文書の重要所見の見落としを防ぐ仕組みの構築が求められている。一部の医療現場では診療医へ重要所見を通知するシステムが考案されており、判定方法として専門医による判定やキーワード判定があるものの、専門医の負担が大きく、キーワードにない重要所見や曖昧表現への対応が難しいという課題も残っている。

そこでインテックと岩手医科大学は、複数のAIを連携させて読影レポート中の重要所見を判定する手法を開発し、特許出願と学会発表を実施した。AIを導入することで所見の見落としを防ぎつつ、今回開発した手法によって重要所見のみを精度よく判定できるようになると考えられるという。今回の実証実験は、この手法の判定結果の妥当性を実際の読影レポートで評価し、現行システムへ活用することを目指す。

  • AIによる医療文書の重要所見判定イメージ

    AIによる医療文書の重要所見判定イメージ

実証実験の概要

インテックと岩手医科大学は、考案した重要所見判定手法をさまざまな読影レポートに適用し、判定結果を複数の専門医で評価することで、重要所見を判定するのに妥当な手法であるかを確認した。

読影レポート50件に対する判定結果を複数の専門医で評価した結果、正解率は94%(50件中47件)、重要所見に対する誤判定は1件(107件中1件)だったものの、この誤判定1件は許容可能なものであった。この結果から、重要所見を判定する手法としての有効性(妥当性)が確認されたという。

今回は読影レポートを対象に重要所見判定手法の評価を実施したが、他の医療文書にも応用できる可能性があるとのことだ。

  • 考案した手法の概要

    考案した手法の概要