DevRevは10月23日、日本法人を設立したと発表した。同日には米国本社創業者兼CEOのディラージ・パンディ氏、日本事業責任者の河南敏氏が説明を行った。
DevRevが日本法人を設立
ご存知の方もいるかと思うが、パンディ氏はNutanixの創業者であり、2020年までCEOを務めていた。DevRevは同氏が退任した同年に元Nutanix幹部のManoj Agarwal氏とともに設立。現在ではグローバルで650人の従業員を抱え、8カ所のグローバル拠点を構えており、これまで2億ドル以上の資金調達を行い、評価額は10億ドル以上になっている。米カリフォルニア州パロアルトに本社を置き、顧客サポートとプロダクト開発を統合するAIネイティブなSaaS(Software as a Service)プラットフォームを提供している。
AIとデータプラットフォームを活用した「Computer」ソリューションは、顧客のナレッジを一元化し、あらゆるワークフローにチームインテリジェンスを提供し、他のAIツールとは異なり、構造化データ(CRMレコード、チケット、ログデータなど)と非構造化データ(文書、メール、チャットなど)を単一のAI対応の情報源「Computer Memory」に統合する。
Computerは単に情報を見つけるだけではなく、システム内でアクションを実行、ワークフローを自動化し、顧客のビジネスコンテキストに基づいたインサイトを生成。自動化されたチケットから複雑なビジネス分析まで、専用に構築されたアプリケーションとカスタムAIエージェントを通じて、顧客のチームと連携するとのこと。
同氏は「Nutanixは、私が日本を理解する最初のきっかけだった。そしてDevRevでも日本と素晴らしいビジネスを築きたいと考えており、日本のお客さまやパートナーの皆さんは、私たちに『細部へのこだわり』を学ばせてくれた」と述べた。
パンディ氏が語るAIに必要なOS的発想とは?
DevRevのコンセプトについて、同氏はこれまでのテクノロジーの変革と非常に似ているという。例えばFAXやコピー機、プリンターなどが一体化していった時代は、本質的にはハードウェアをソフトウェアに仮想化し、統合することであり、テクノロジーにおいて唯一変わらないものは“小型化”とのことだ。
パンディ氏は「どのように仮想化、小型化、統合を実現するのかするのか?AIはアプリケーションやSaaSアプリケーション、さらには一部の人間の役割までも仮想化していく。人間の役割をエージェントに仮想化し、最終的にはすべてを統合して世界を再定義する。仮想化、小型化、そしてアプリからエージェントへ。ERPやCRMなどのアプリケーションを導入するには3年がかりの大規模プロジェクトが必要となるが、もっとエージェントフレンドリーな形で統合するべき」と指摘する。
最近では多くの企業がAIプロジェクトに動いているが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のレポートでは、AIプロジェクトの95%が失敗していると報告されており、多くはパイロットやプロトタイプ止まりとなっている。AIによる変革が大きなものがあると同時に、実行していくには多くの課題があるという。
同氏によると、50~60年前のコンピュータも同じであり、巨大で高価で無駄が多かったものの、それを有用にしたのは「OS」だったという。OSがあったからこそ、PCは役立つものになり、チームやワークグループの概念が生まれ、さらに小型化が進み、Microsoft Officeが登場し、生産性と創造性が向上したことを振り返る。
パンディ氏は「AIにも同じことが必要。AIには“OS的な発想”が必要であり、セキュリティ、認可、説明可能性、精度などはOSの概念だ。20~30年にわたって組織に存在する、サイロ化したデータをどうやって統合するのか?それには、AIをチームに統合すること、AIをチームメイトにすること、そして小さく会話型で多言語・マルチモーダルなサービスにすることが重要となる。これがDevRevのAIへのアプローチ」と説く。
検索・SQL・MCP – DevRevが提唱する新しい能力
AIが仕事を奪うことや人間の役割をすべて置き換えるという話でなく、エージェントが本来果たすべき価値を提供することであり、同社はチームの一部として顧客を支援する。
同氏は「では、どうやってそれを実現するのか?AIはあらゆる環境に組み込まれ、コード操作や新しいスキルが求められる。確率的な判断や非決定論的な判断、従来のソフトウェアにはなかったスキル。さらに、構造化データと非構造化データの両方を扱い、これを整理された方法で実現する必要がある。個人のエージェント、チームのエージェント、企業のエージェント、そしてOpenAIやAnthropicのような世界規模のエージェント。このすべてを統合するには、真のOSが必要」と断言する。
そのため、最初にやるべきことは、すべてのデータを集めることであり、過去20~40年のレガシーデータをAIネイティブな形に再構築することだという。それらを同社は企業のナレッジグラフとしてComputer Memoryと呼んでいる。
次に、新しい能力の獲得であり、検索、SQL、MCP(Model Context Protocol)の3つを挙げている。検索については20年前、検索エンジンは20社ほど存在したが、生き残っているのは数社だけであり、検索は文脈を理解しなければならないことに加え、GPUを使った推論も必要だという。
SQLはデータモデリングの知見をAIに活かす必要があり、検索で解決できない際は質問を投げるとエージェントが動的にSQLを生成するというもの。MCPに関して同氏は「90年代のDNSのようなもの」と述べており、自然言語でAPIやワークフローを発見することで新しい世界と古い世界をつなぐとのこと。
パンディ氏は「課題はどれをいつ使うか?検索、SQL、MCPのどれで答えるか?場合によっては3つすべて。これはモデリングの問題でもある。そして、これらを支えるのがナレッジグラフだ。CIOやCTOは、これまでアプリを作ってきたが、これからはエージェントビルダーやスキルビルダーを使い、エージェントを作るようになるだろう」と展望を口にする。
そして、同氏は「われわれは『Applied AI(応用AI)』に重点を置いており、AIを単なる技術ではなく、ビジネスプロセスに深く結びつけることがポイントになる。それをパートナーとともに実現し、教育にも力を入れていく。エージェントやスキルを作りたい人のために、教材を提供する」と述べていた。
日本市場での導入事例 – コクヨ・北銀ソフトウエア・マクニカ
続いて、河南氏が登壇。日本法人立ち上げの経緯について「私は昨年にDevRevに入社した。日本に参入するにあたり、言語が大きな壁になるであろうということを見込み、アプリケーションやWebサイトのローカリゼーションを進めてきた。日本では、まだ新しい製品を積極的に採用してもらえるケースは多くはないが、コクヨさん、北銀ソフトウエアさん、マクニカさんの3社に導入いただいている」と説明。
コクヨでは、レンタルオフィス・シェアオフィス・貸会議室などの施設運営/空間運用管理を支援するクラウド型システムスペースマネジメントシステム「スペースマネジメントシステム」で採用。ユーザー企業の拡大に伴うサポート対応をAIエージェントと担当者が共存しながら運営している。
北銀ソフトウエアは、開発本部全体の業務効率化を目指し、顧客とのメールや会議の議事録ファイルなどの非構造化データと、システム開発におけるプロジェクトを管理するJiraのような構造化データを、包括的に連携するとともに、非構造化データと構造化データを横断したデータ検索を実現することで、業務プロセスの効率化を図っている。
マクニカでは「大量の報告を1クリックで利益に」をコンセプトとした、インサイト抽出・報告作成自動化プラットフォーム「おまとめ忍者」で導入。現場から上がる膨大な報告データをAIが瞬時に解析し、カスタマーインサイトや改善提案を可視化。DevRevと連携して、ユーザーの質問・要望を開発部門へ迅速に還流し、顧客体験の継続的な向上につなげている。
パートナーシップ戦略と今後の展望
一方、DevRev単体での支援にも限界があるのも事実だ。そのためのパートナーシップも強化しており、クラスメソッドとSynthesyの担当者が登壇した。
クラスメソッド 産業支援グループ 業務効率化ソリューション部 部長の竹田信夫氏は「顧客サービス、販売、開発など各部署でサイロ化しており、DevRevのソリューションでツール群をまとめることでそれぞれの業務が効率化していく。現在では、開発現場の意見や販売の意見、顧客サービスのデータを使いながら開発する時代になってきており、生成AIなどを活用するなかでサービス群がつながらないと業務の効率化、つまり部分最適から全体最適に変化していく時代を迎えており、われわれもともに取り組みたい」と意気込みを語る。
また、Synthesy 代表取締役CEOの松崎真樹氏は「DevRevとともに日本企業をAI時代で勝ち抜ける企業に変貌を遂げていく支援をしていく。すでに準備を進めており、事業の大きな柱にすべく、来年末までに2桁の企業への導入を目指し、DevRevを使ったコンサルティング、導入からスタートしていく」と力を込めていた。






