NTT東日本/東北電力/日本政策投資銀行(DBJ)の3社は10月16日、東北・新潟地域の強みを最大限に活かしたデータセンター(以下、DC)誘致を推進することを目的に、業務協力協定を締結した。同日開催された3社による締結式では、3社の代表がその意義や東北・新潟の優位性について説明した。

  • 協定書にサインする3社の代表

    協定書にサインする3社の代表

今後3社は、DCの誘致促進に関連する各種施策の検討、DCの誘致促進に資する情報発信、DCの誘致等への関心を示した企業や自治体等との連携強化に協調して取り組んでいくとともに、DCの誘致を通じた新たな産業・雇用の創出による地域活性化・産業振興に貢献していくという。

  • サインした協定書を掲げる3社の代表。左からNTT東日本 執行役員 宮城事業部長 須藤博史氏、東北電力 常務執行役員 販売カンパニー長 佐々木秀明氏、日本政策投資銀行 東北支店長 岡井覚一郎氏

    サインした協定書を掲げる3社の代表。左からNTT東日本 執行役員 宮城事業部長 須藤博史氏、東北電力 常務執行役員 販売カンパニー長 佐々木秀明氏、日本政策投資銀行 東北支店長 岡井覚一郎氏

協定の背景に「GX2040ビジョン」

今回の3社の協定の背景には、現在、国内のデータセンターの8割強が関東/関西圏に集中している状況にあるため、国が提唱する「GX2040ビジョン」を踏まえ、ワットビット連携(電力インフラと通信インフラを連携して整備する構想)などを通じたデータセンターの適正立地、地方分散に向けた機運の高まりがある。

2025年2月に閣議決定された「GX2040ビジョン 脱炭素成長型経済構造移行推進戦略 改訂」には、「DCの東京圏・大阪圏への集中から、地域分散を進める必要がある。その際、国全体の効率的・効果的なインフラ利用から、望ましい立地条件としては、安定した土地と産業用水があり、脱炭素電源が豊富で系統運用に余裕がある変電所の近接地点等のエリアとなる」と記載されている。

3社が連携してDCの誘致に取り組む意義について、東北電力 常務執行役員 販売カンパニー長 佐々木秀明氏は、「誘致に向けて不可欠な要素である電気・通信・ファイナンス分野において、当社は再生可能エネルギーを含む電源確保やエネルギーの効率的利用に関する支援。NTT東日本は通信インフラおよびデータセンター建設・運用、日本政策投資銀行は資金調達やファイナンス機会の提供などの強みを有しており、3社が連携して取り組んでいくことにより、より実効性の高い誘致活動が可能になる。本協定の締結により、データセンターの立地の検討における企業様等の多様なニーズを踏まえながら、電気・通信・ファイナンスの分野において強みを有する3社が連携することにより、ワット・ビット・ファイナンスの各要素を包括的に提供していくことは、(DC誘致の)強力な後押しにつながるものと考えている」と語った。

また、今回の協定には、単なるDC誘致にとどまらず、電力、通信、ファイナンスというDCに不可欠なインフラを横断的に結集し、地域の産業振興・雇用創出・GX(グリーントランスフォーメーション)戦略の推進など、持続可能な社会基盤の構築に寄与する点もあるという。

東北・新潟のDC誘致の優位性は気候と再エネ

NTT東日本 執行役員 宮城事業部長 須藤博史氏は、東北・新潟にDCを建設する優位性として、気候と再生可能エネルギー(再エネ)調達の容易さがあると説明した。

「東北地方および新潟は、(サーバ等の冷却に有利な)冷涼な気候と再生エネルギーの活用ポテンシャルの高さというメリットを持っており、そういったものを最大限に活かしてデータセンターの実現に協力していきたいと考えている。NTT東日本には、通信インフラを構築・運用してきたノウハウがあり、データセンター事業者などに対して、そういったノウハウを提供し、総合的に支援をしていくことをやっていきたい」(須藤氏)

また同氏は、同社が持つIOWN(Innovative Optical and Wireless Network:革新的な光とワイヤレスのネットワーク)でDC間を接続することで、DCを首都圏から東北まで持ってくることによる遅延(レイテンシ)という制約を縮めることができるとした。

さらに同氏は、「データセンターの誘致は雇用の創出にも寄与すると考えている。東北は工学系、IT系、技術系の学生を多く配出できる地域であり、こういった皆さんに活躍いただける場を提供することにもつながっていくのではないか」と、DC誘致は雇用や人材活用においてもメリットがあると述べた。

最近は、再エネ由来の電力を求めるDC事業者が増えているが、このニーズに対して東北電力の佐々木氏は、「再エネ100%といった非化石価値を含め、事業者が実際にどういう電気を求めているかを聞きながら、われわれとして価値を実感できるような電力の供給をしっかり考えていきたい」と語った。

一方、ファイナンス面での提供できるメリットについて、日本政策投資銀行 東北支店長 岡井覚一郎氏は、「われわれには地域の金融機関とのいろいろなネットワークがあり、地域金融機関のファイナンス機会を一緒に作っていくという役目もある。また、(DCを)企業のバランスシートに載せていくのか、あるいはバランスシートから外していくのかなど、いろいろな財務戦略の中でデータセンター事業者がどうしていくのかという話もあり、そういったところでさまざまなファイナンスの経験を最適な形で提供することによって、立地が早く進む」と述べた。

また同氏は、東北支店以外でも本店も含め、いろいろな取引先のネットワークがあり、そういったところでDCに関心がある事業者とつなぐという付加価値を提供できるとした。

さらに同氏は、「(DCの誘致はその地域にとって)固定資産税等、地域への税収増という効果もあるので、これからの人口減少社会における新しい産業立地政策の一つのやり方としてあるのではないか」と語った。

同氏によれば、DCの1メガワットあたりの投資額は20億円程度になり、10メガワットとなると200億円という規模の投資になるという。

今後3社は、東北・新潟地域のDC立地適地性を国内外に発信し、自治体・企業・教育機関等との連携を強化しながら、GX戦略地域制度への対応も視野に入れ、具体的な誘致施策や情報発信、関心を示す企業・自治体との協働を進めていくという。