laed=2025年8月に開催された年次イベント「VMware Explore 2025」で、Broadcom傘下のVMwareは、プライベートクラウド基盤の最新バージョン「VMware Cloud Foundation(VCF)9.0」を発表した。同製品を活用して日本のレガシー環境からの大規模な脱却ニーズに、どうアプローチするのか。AI活用が検証段階にある日本企業に対し、どのような戦略を描くのか。ヴイエムウェア カントリーマネージャーの山内光氏に同イベントの会場で話を聞いた。

Broadcom傘下のVMwareは、2025年8月に開催された「VMware Explore 2025」年次イベントで、プライベートクラウド基盤の最新バージョン「VMware Cloud Foundation(VCF)9.0」を発表した。

Broadcomアジア太平洋地域・日本担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーのSylvain Cazard(シルヴァン・カザール)氏は「VCF 9.0は25年にわたる研究開発の成果を結集しています。『VMware Private AI Services』を標準搭載したVCF 9.0は、企業が自社データセンターでクラウド同様の体験を得られるAIネイティブ基盤へと進化しました」と自信を見せる。

市場ではクラウド利用戦略の見直しが進み、パブリックからプライベートへの回帰が強まっている。企業はコストや主権、拡張性をより重視するようになり、この潮流に応える形でリリースされたのが、VCF 9.0だ。カザール氏は「今が投入の最適なタイミング」と強調し、導入から価値実現までパートナーと共に支援する姿勢を示している。

では、世界でも独特とされる日本のレガシー環境からの大規模な脱却ニーズに、どのようにアプローチしていくのか。AI活用が検証段階にある日本企業に対し、どのような戦略を描くのか。シルヴァン・カザール氏とヴイエムウェア カントリーマネージャーの山内光氏に、VMware Explore 2025の会場で話を聞いた(本文敬称略)。

  • 左から、ヴイエムウェア カントリーマネージャーの山内光氏、Broadcomアジア太平洋地域・日本担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーのSylvain Cazard(シルヴァン・カザール)氏

    左から、ヴイエムウェア カントリーマネージャーの山内光氏、Broadcomアジア太平洋地域・日本担当上級副社長兼ゼネラルマネージャーのSylvain Cazard(シルヴァン・カザール)氏

VCF普及の手応え、日本顧客の受け止めは……

--一年前のVMware Explore 2024で、CEOのHock Tan(ホック・タン)氏は「企業はこれからパブリッククラウドよりもプライベートクラウドとプライベートAIが中心的なインフラになる」と訴求し、「The Future of the Enterprise is Private」という戦略を提示しました。それからの1年間を振り返って、プライベートクラウドは日本市場にどの程度浸透しましたか。また、その浸透を促すためにどのような取り組みを行いましたか--

山内氏: この1年は変化の大きな年でしたが、プライベートクラウドとプライベートAIを柱とする戦略に対して、日本のお客様から幅広い賛同をいただけたと感じています。業種も規模も多様なお客様が関心を寄せており、プライベートクラウドを基盤としてどう実現していくかに真剣に取り組まれています。

私たちはまず、VCFを通じてプライベートクラウドの基盤をしっかり固め、その機能をお客様に活用いただくことに注力してきました。これは私たちだけでなく、日本のパートナーとも連携して進めてきた取り組みです。今回新たに発表したVCF 9.0では「VMware Private AI Services」を標準搭載し、その基盤の上に新しいワークロードや業務を展開できる姿を示しました。多くのお客様が「この基盤を柱にすれば安心して次のステップに進める」と確信を持っていただけたのではないかと考えています。

  • VCF 9.0の概念図。コンピュート・ネットワーク・ストレージを統合し、自動化とオーケストレーションを実現する

    VCF 9.0の概念図。コンピュート・ネットワーク・ストレージを統合し、自動化とオーケストレーションを実現する

--この1年で、パートナーや顧客によるVCFを活用した新しいユースケースが登場してきました。例えば、教育分野での取り組みや、データセンター事業者によるストリーミング環境の構築などです。一方で、市場ではオープンソースのハイパーバイザーやハイパースケーラーのネイティブ環境を選択する動きも見られます。こうした競合の存在をどのように評価していますか--

カザール氏: 大規模なエンタープライズにおいて、オープンソースのインフラだけでクラウド体験とエンタープライズ級のスケールを安定的に提供できた事例はこれまでありません。確かに一部の非基幹領域では利用の余地がありますが、基幹業務には適していないのです。むしろ、当初はクラウドで対応できると考えられていた重要なアプリケーションが、コストやプライバシーの観点からプライベートクラウドに戻る動きが顕著になっています。

日本はクラウド移行が比較的遅れていたため、今後はプライベートクラウドを軸とした近代化が進むでしょう。25年にわたる知的財産と1万人規模の人材を投入して、エンタープライズ基盤を構築できるのは私たちだけだと自負しています。オープンソースソフトウェア(OSS)で同等の品質を実現するには膨大な開発や運用リソースが必要であり、現実的な選択肢とは言えません。

山内氏: 競争は当然ありますが、私たちがお付き合いしているエンタープライズ企業から、オープンソースのみでプライベートクラウドを構築するという話はほとんど聞きません。VMwareがBroadcomに買収された際も、(顧客であったエンタープライズ企業は)さまざまな選択肢を検討されましたが、「基幹システム規模で安定したプライベートクラウドを実現できるのはVCF以外にない」、というのが多くのお客様の結論でした。

さらに、プライベートクラウドは自社データセンターだけでなく、国内のクラウドパートナーやハイパースケーラーとの協業モデルでも提供可能です。ライセンス持ち込みの仕組みも整っており、お客様は既存の環境を維持したまま移行できます。こうした点からも、ミッションクリティカルな業務を支える基盤としてVCFが最も現実的な選択肢だと考えています。

--AI活用が世界的に加速する中、日本企業の取り組みはどのような状況にあるのでしょうか。今回のAI機能標準搭載は、こうした日本市場の現状にどのような変化をもたらすとお考えですか--

山内氏: 日本におけるAI活用は現状、まだ検証段階にあります。プロダクションレベルで本格活用している事例は少なく、多くの企業は「どのように使えるか」を模索している段階というのが正直な印象です。

ただし、この状況は大きく変わっていくと考えています。日本は人口減少やIT人材不足といった構造的課題を抱えており、業務効率化や自動化に向けたAI活用のニーズは確実に高まります。これは一時的な技術トレンドではなく、日本社会全体を支えるために不可欠な流れです。

加えて、企業データの取り扱いも重要なポイントです。多くの日本企業は、自社の重要な情報をパブリッククラウドに委ねることに慎重です。コンプライアンスや経済安全保障の観点からも、プライベートクラウド環境でAIを活用することが極めて自然な選択肢になります。今回VCF 9.0に「Private AI Services」が標準搭載されたことで、こうした要件に応えつつ、安心してAIを活用できる基盤が整ったと考えています。

  • モダンITの中核に位置づけられるVCF。基調講演では「統合基盤が企業のデータ活用とクラウド体験を支える」と訴求していた

    モダンITの中核に位置づけられるVCF。基調講演では「統合基盤が企業のデータ活用とクラウド体験を支える」と訴求していた

既存顧客の深化か、新規顧客の開拓か

--VMwareは従来、永続ライセンスとサブスクリプションを併用して提供してきましたが、昨年の発表で最終的にサブスクリプションモデルに一本化する方針が明確に示されました。こうしたライセンスモデルの転換について、日本の顧客からはどのような反応が寄せられていますか--

カザール氏: 永続ライセンスとサブスクリプションは別のテーマですが、現在サブスクリプションは業界の標準となりつつあります。VMware時代から3年間は両方を並行して提供してきましたが、いずれ単一のサブスクリプションモデルに移行するのは自然な流れでした。IT業界でも、MicrosoftやOracleなど主要ベンダーがすでにサブスクリプションモデルを採用していることもあって、お客様は十分慣れています。

--サブスクリプション移行について、顧客の納得を得るためにどのような取り組みを行っているのでしょうか--

カザール氏: VCFについて言えば、私たちは長年、ソフトウェアを通じてコンピュートやネットワーク、ストレージのインフラ導入を支援し、クラウド基盤がハードウェア依存から脱却し、制御をソフトウェアで行う「ソフトウェア定義型」へと進化してきたことを実証してきました。VCFを利用すれば、クラウド体験や自動化されたソフトウェアデータセンターを自社データセンター内で実現できます。

この価値を理解していただくために、私たちは機能説明にとどまらず、移行のロードマップ設計やビジネスケースの策定、パートナーとの協業などに多くの時間を費やしています。単なる製品の提供ではなく、実装と移行プロセス全体を共に描くことこそが、お客様の納得につながっているのです。

--最後に、今後の営業戦略について伺います。既存のVMware顧客との関係強化と新規顧客獲得のどちらを重視されますか--

山内氏: 日本では多くのお客様がすでにVMwareを利用されています。そのため新規開拓よりも、既存顧客のIT基盤を広げ高度化を支援することに注力しています。メインフレームやUNIXといったレガシー環境の近代化や、今後登場するプライベートAIのような新しいワークロードも、同じ基盤上で実現できるよう支援しています。

カザール氏: 一方で、日本市場には新しい顧客層も存在します。公共部門や金融機関など、長年レガシーシステムを利用してきた組織がいま近代化に踏み出そうとしています。彼らは新たな顧客であり、未来のプライベートクラウド基盤を共に築いていく重要なパートナーです。既存顧客の進化と新しい顧客の挑戦の両方を支えることで、日本市場での成長を実現していきます。