Anthropicはこのほど、「Anthropic Economic Index report: Uneven geographic and enterprise AI adoption Anthropic」において、AI採用の地理的偏在と企業活用の実態を分析した経済指数レポート第3版を公開した。
レポートは米国を中心に急速に普及するClaudeの利用動向について、地理的分析と企業API利用の2つの側面から整理し、ビジネス上の課題克服に利用されるAIの経済的影響を明らかにしている。
Claude利用構造の変化と知識分野の拡大
ClaudeはAnthropicが開発した対話型生成AIだ。2023年に登場し、安全性、正確性、セキュリティを重視した設計がなされている。レポートによるとClaudeの利用は過去8カ月で教育・科学分野の比率が上昇し、教育関連は9.3%から12.4%、科学関連は6.3%から7.2%へ拡大した。コーディング関連の利用率は全体の約36%を維持しているが、デバッグ比率は低下し、新規コード作成が増加したという。これはClaudeに自律動作を求めた結果とみられ、ユーザーは1回の指示で目標の達成を試みたことが示唆されている。
利用形態では、タスクを完全に委任する「指示型」が27%から39%へ増加した。背景にはモデル性能の向上および利用者の信頼感の向上があるとみられている。この変化は労働市場における職務構造や技能需要の変化を促すとの指摘がある。
新機能の投入も利用構造を変化させている。Web検索やリサーチモードの導入により、電子情報やデータベース検索、教材作成、マルチメディア資料作成などの比率が上昇した。これはAI機能の向上、利用方法の高度化に伴う変化とみられ、新しい働き方につながっている可能性を示している。
地理的分析とAIの経済的影響
地理的分析では、150カ国以上および米国全州におけるClaudeの利用データが分析された。米国およびシンガポールなどの高所得国では労働人口あたりの利用率が高くなる傾向がみられる一方で、それ以外の多くの国では利用率の極端な低下傾向がみられた。
Claudeの総使用量(会話の回数)に対する国別シェアでは米国が突出して高く(約21.6%)、2位はインド(約7.2%)となった。一人あたりの利用率ではイスラエルが最も高く、これにシンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、韓国が続き、米国は6位だった。総使用量で2位のインドは一人当たりの利用率ではボリビアやインドネシアよりも低く、米国の10分の1以下とされる。
総使用量で4位の日本(3.7%)は、一人当たりの分析では20位圏外となった。この使用量と利用率のばらつきは、各国の所得格差の現れとされる。利用率と労働人口あたりの国内総生産(GDP: Gross Domestic Product)には強い正の相関関係があり、一人当たりのGDPが1%増加すると、一人当たりのClaude利用率も0.7%増加するという。
つまり、日本は高収入の利用者が一定数存在する一方で、一人当たりのGDPが低いことを示している。この評価については異論もあると考えられるが、米ドルを基準とした評価において、ある程度の直線的な分布が確認されている。
レポートは各国のAI利用状況を示し、AI採用の経済効果や地域格差、労働市場への影響などを伝えている。新人の労働市場が悪化する一方で既存労働者の需要と賃金が上昇するなどの仮説を打ち立てており、これら仮説の検証を通して恩恵の地域的集中や所得格差拡大の是正政策の立案などに役立てることが期待されている。


