
「データサイエンスを活用した課題解決を」─セカンドサイトアナリティカ社長の高山氏はこう強調する。企業向けにデータ分析やAIを活用したコンサルティングサービスを提供。「人」が提供するコンサルティングや大型プロダクトの他、拡販型の小型プロダクトも徐々に広がりを見せている。その原点にあるのは「お客様の課題を解決したい」という思い。上場から3年、創業から9年が経ち、今後の方向性をどう見据えているのか。
データサイエンス・AIはあくまで手段、商品は課題解決
─ 2022年の上場から3年が経ちましたが、この3年を振り返っていかがですか。
高山 この3年で生成AI(人工知能)ブームが訪れ、AIに対する世の中の見方も大きく変わったと感じています。キーワードとしての生成AIが先行して広がったことで、AI全般への関心が一気に高まったのだと思います。
我々のようにAIの領域で事業をしている会社としては、そのことはプラスに働いていると思っています。もちろん、その波と関係ないところでも収益を伸ばしており、順調に成長できているかなというのが実感です。
─ 創業からは9年が経ったわけですが、手応えはいかがですか。
高山 紆余曲折があり、いろいろ大変だったなというのが正直な感想です。最初はデータサイエンスAIのコンサルティングを中心に取り組んでいましたが、どうしても労働集約型で、人に依存する面が多かったのですが、だんだんお客様が広がる中で、そこで得た知見を基にパッケージ製品をつくったことで、パッケージが働くような世界が徐々にできてきているところです。
実際、当社では一過性のプロジェクトを手掛けた際のフロー型収益と、継続して我々のパッケージ製品を利用していただいたことで得られるストック型収益と分けて見ていますが、今は特にストック型収益を重視しており、その積み上げも徐々に大きくなってきています。
─ 高山さんが起業前に所属していたコンサルティング会社は新生銀行(現SBI新生銀行)グループが顧客で、そこで合弁会社を設立したことがセカンドサイトアナリティカ創業のきっかけとなったそうですが、今のSBI新生銀行との関係は?
高山 SBI新生銀行は、当社の資本業務提携先であり、当社のソリューションを展開し、協業していくということは、以前と変わらず取り組んでいます。
─ 金融領域からスタートしているわけですが、大企業の割合は大きいですか。
高山 ええ。当社のお客様は大企業が多いですね。サービスを提供している業種は幅広いのですが、売上シェアでは今も金融領域が大きいというのが現状です。
金融領域で実績が積み上がってきたことによって、金融業界に加え、それ以外の業種の企業からお声がかかる状態になっています。案件需要が旺盛なこともあり、人が足りなくなってきています。事業領域を広げると同時に、それを担う人材を確保していくことが大事になっています。
─ 金融領域ではどういった企業が顧客になっていますか。
高山 多いのはカード、貸金事業者、リース、銀行、保険などです。
─ セカンドサイトアナリティカが持つ強みをどう認識していますか。
高山 起源がコンサルティングで、データサイエンスを活用して課題解決をすることにあります。あくまでもデータ分析・AIは手段であり、当社の商品は課題解決だと思っています。
そして、お客様の課題解決にコミットメントを持って動く人材が揃っているというのが大きいと思います。
─ 今は全産業的に人手不足で、特に理系人材は獲得競争が激しいと聞きますが。
高山 確かに人材は取り合いになっていますね。特に「データサイエンティスト」「コンサルタント」というラベルがついた人材の価格は高騰しています。
当社はキャリア採用が中心です。彼らはAIベンチャーで働きたいというモチベーションを持って応募してくれています。
志望動機を聞くと、「データサイエンスで課題解決に取り組みたい」「AI技術を実際に使って社会に貢献したい」といった思いに共感して、仲間になってくれる人が多いですね。
─ 企業からはどういった課題の相談が多いですか。
高山 例えばクレジットカードやカードローン事業を手掛ける企業にとって、事業拡大には売上を伸ばす一方で、貸倒による損失を抑えることも欠かせません。その鍵となるのが審査です。
審査基準の最適化方法次第で、売上拡大とリスクコントロールの両立が可能になります。当社のAIソリューションは、まさにその部分でお役に立てます。
パートナー企業との連携で拡販を図る
─ 次の成長に向けて課題としていることは?
高山 基本的に今考えているのは、現状の我々の体力でできることと、それ以外の部分を分けていくことです。
我々はコンサルティングに加えて、AI関連の大型パッケージ製品を提供しています。コンサルティングはもちろんのこと、大型パッケージ製品では、お客様のニーズに合わせて、我々のエンジニアがカスタムすることが必要になります。
一方で、拡販型の小型プロダクトではカスタムする必要がありませんから、大企業のみならず中堅・中小企業のお客様に提供することも可能です。
この領域は、当社のエンジニア、専門人材ではなく、パートナー企業さんと連携して手掛けることができます。必要に応じてリソースを補填しながら営業体制を整えて、拡販をしていきたいと考えています。
─ 他の企業との連携において、相手から一緒に仕事をしたいと思われる、セカンドサイトアナリティカの持つ強みは?
高山 価値創造に対するコミットメントではないでしょうか。分かりやすいのは金額価値、お客様にとっての利益増であったりすると思いますが、その実現に向けたコミットメントを強く持っています。我々は基本的に、お客様が享受した価値の一部を報酬としていただいているという考え方です。
─ 課題を抱える企業は多いですから、やりがいがありますね。
高山 そうですね。課題はあちこちにあります。それに加えて、起業のきっかけも、大企業が多くのデータを持っていて、それを使えばいろいろなことが改善するのに、それをうまく使えていないという課題を解消したいと考えたことです。
今も様々な企業を見ていて、データをきちんと使えば価値が出るなと思えるところは非常に多いんです。その意味で、まだまだ需要は開拓できると考えています。
お客様の「ありがとう」に喜びを感じて
─ 日本は全産業的に賃上げの機運が続いていますが、先ほどの人手不足を考えても待遇面も意識していますか。
高山 ええ。給与テーブルも状況を見ながら変えていますし、一般的に見ても高い水準ではないかと思っております。
─ データサイエンティストも抱えていますから、彼らの待遇も意識する必要がありますね。
高山 そうですね。一方で、データサイエンティストの定義は企業によってさまざまです。当社では、データサイエンスを武器に課題解決に取り組める人材をデータサイエンティストと考えています。つまり、ビジネスコンサルタント+統計学者のようなスキルや知識を備えた人材です。
他社では裏方として統計解析やAIモデル構築を担う人材を指す場合もありますが、当社ではコンサルタントとしてクライアントに伴走しながらプロジェクトを推進するのが特徴です。
─ セカンドサイトアナリティカのサービス内容を、どのように表現していますか。
高山 サービス名としては「アナリティクスコンサルティング」と呼んでいます。データ分析やAI技術を活用して、課題解決の支援を行うコンサルティングに強みがあります。
─ 創業から9年間の中で嬉しかったことは何ですか。
高山 私自身が現場に立つことは少なくなりましたが、弊社社員が手掛けたプロジェクトで十数億円規模の成果が生まれ、お客様から「本当にありがとう」と感謝をいただけたと聞いた時は、強い喜びを感じました。
やはり私たちの原動力は、お客様からの「ありがとう」です。
価値を生み出すことに重点を置いて
─ 高山さんは京都大学大学院、コンサルティング会社などを経て起業していますね。
高山 私は最初から起業を目指していたわけではありません。コンサルティングの仕事をしている中で、「膨大なデータという宝の山を活かせていないのはもったいない」と感じて取り組んだ事業が、結果的に支援していた本丸の業務以上の収益を生み出しました。その経験が大きなきっかけになったんです。
学生時代は統計学やデータサイエンスを学んでいましたが、当時の日本は「IT後進国」と呼ばれ、今では「AI後進国」「データ利活用後進国」といった言葉も聞かれます。
AIではアメリカや中国が先行し、データ利活用でも日本は遅れている。そうした状況を見て、「このままではいけない」と強く思うようになりました。
─ 企業が今後、データを利活用しようという時、気をつけるべきことは何ですか。
高山 最も大事なのは「解くべき課題をどう設定するか」です。課題設定が不十分なままデータを使おうとするケースは少なくありません。データ分析やAIはあくまで手段であり、課題設定こそが本質だと思います。
─ 海外展開は視野に入れていますか。
高山 はい。我々が直接進出して事業を伸ばせるかは別として、東南アジアの市場は大きく成長すると見ています。
インドネシアに行くと、街の雰囲気は日本の一昔前のように映るのですが、キャッシュレス決済等に関してはむしろ日本より進んでいると感じます。マレーシアやベトナムなども含め、東南アジアは市場として大きな可能性を秘めています。
現在は現地企業やグローバルファームの現地拠点とアライアンスを結び、実際に現地を訪問しながら展開の可能性を探っているところです。
─ 今、社内に向けてはどんなメッセージを投げかけていますか。
高山 表現はいろいろ変えていますが、社内には「お客様のニーズ、潜在的なニーズも含めて価値を創ろう」ということを繰り返し伝えています。
高度なデータサイエンスが必要ないケースもありますが、それは全く問題ではありません。重要なのは、常に価値を生み出すことに力を注ぐことです。
─ その意味で、顧客との接点、対話が非常に大事になってきますね。
高山 大事です。価値を創るには、お客様と膝を突き合わせ、泥臭く対話しながら課題に取り組む姿勢が不可欠です。当社の人材は専門性を活かし、現場でお客様と真正面から向き合いながら解決をリードしています。
─ その中で伸びている人はどういう人ですか。
高山 伸びている人に共通するのは、課題を見極め、それを体系的に整理し、適切な分析設計につなげられる力です。課題を見つけるにはデータサイエンスの知識が欠かせません。
知識がなければ、そもそも何ができるのかがわからないからです。そうした人材を獲得し、育てていくことが重要だと考えています。