NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)は9月17日、豊かな未来社会の実現に向けて策定した「テクノロジーロードマップ2025」を公開した。ロードマップは同社の研究開発の知見を基に、客観的な調査結果を組み合わせたもの。

ロードマップは「AI / ロボティクス」「IoT / データ / デジタルツイン」「仮想化(Cognitive Foundation)」「データセンター / 量子」「セキュリティ」「ICTインフラ(IOWN)」「宇宙 / NTN(Non-Terrestrial Network) / モバイル」の7領域について、短期(~2025年)、中期(2026~2028年)、長期(2029~2034年)に分けて展望を示している。

NTTドコモビジネスのイノベーションセンター副センター長の池尻雄一氏は「単に技術を並べるだけではなく、その技術が社会に浸透する中で企業活動や人々の生活がどのように変化するのかをキーワードで示した」と、ロードマップ策定において工夫した点について説明した。

  • NTTドコモビジネス イノベーションセンター 副センター長 池尻雄一氏

    NTTドコモビジネス イノベーションセンター 副センター長 池尻雄一氏

AI / ロボティクス

AIおよびロボティクスの分野では、業務効率化や自動化を超えて、AI同士の連携による複雑な課題解決を目指す。さらには、AIと人々が共生し、生活や仕事に溶け込み、優しさとゆとりに満ちた豊かな日常の実現を目指すとのことだ。

短期的には、領域特化型のAIエージェントなどを展開し、業務プロセスの効率化や製造プロセスの自動化を進める。中期的にはマルチエージェントなどAI同士がつながり、高度な課題を解決する。長期では自律型のAIとロボティクスの連携により、デジタルな分身のように活躍するヒューマンデジタルツインエージェントの実装を実現するという。

  • AI / ロボティクス領域

    AI / ロボティクス領域

IoT / データ / デジタルツイン

IoTによるデータ収集と管理を自動化し、価値のある多量のデータを用いたデジタル基盤の構築を支援する。さらに将来的には、AIやロボティクスによる自動化とも連携することで、社会全体のオートメーションを促し経済の安定成長に貢献する。

短期的には映像をはじめ新たなIoTプラットフォームを確立し、データ収集と管理を簡素化するとともに、データマネジメントを高度化する。中期では、切れない無線や映像通信などリアルとデジタルをシームレスにつなぐ通信を実現。自動運転の遠隔制御などが可能になる。

長期的には脳波や筋電を活用して個人の感覚を可視化するサイバネティクスを実現し、人とデジタル機器をつなぐ技術を確立する。

  • IoT / データ / デジタルツイン領域

    IoT / データ / デジタルツイン領域

仮想化(Cognitive Foundation)

AI活用に向けたデータ収集・運用が本格化する中で、そのインフラの役割を果たす仮想化(Cognitive Foundation)の分野では、必要なときに必要な量だけ使えるエコなネットワークから、多様なコンピューティングリソースの利活用を実現する。

なお、Cognitive Foundationとは、あらゆるICTリソースを全体最適に調和させて、必要な情報をネットワーク内に流通させるNTTグループの技術。クラウドやエッジ、ネットワーク、端末までさまざまなリソースを最適に制御する。

短期ではNaaS(Network as a Service)のようにブラウザやAPIから制御可能なサービスを展開する。中期ではAIが自律分散型のICTを支える環境を構築。長期的にはシステム管理者の意図を自律型AIエージェントが予測し、適切なリソース管理を支援する。

  • 仮想化(Cognitive Foundation)領域

    仮想化(Cognitive Foundation)領域

データセンター / 量子

データセンターにおいては、冷却技術や省電力技術、GPUなど計算資源の分散技術により、AIのコンピューティングと電力需要に対応する。また、量子コンピューティングの計算能力を活用し、交通、物流、金融、製造などの最適化問題の解決と、新しい産業創出への応用を目指す。

短期では直接液冷方式などの冷却技術で、当面のAI需要と消費電力の増加に対応する。また、必要に応じてGPUなど計算資源を利用可能なオンデマンドサービスも展開する。中期的にはデータセンターの分散化、ワット・ビット連携など、より電力不足に対応する技術を提供する。長期的には量子コンピューティングを実現し社会課題の解決を促す。

  • データセンター / 量子領域

    データセンター / 量子領域

セキュリティ

セキュリティについては特に工場や医療におけるOT(Operational Technology)ネットワークの保護と、分散型識別子などによる信頼基盤を実現する。AIやロボット同士が協調して複雑な問題に対応する未来に向けて、AIが一定のルールの下でリスクに対応するセキュリティへの進化を目指すという。

短期的には工場の保護と安定稼働を支えるセキュリティを構築。また、AIによる脅威のリアルタイム検知や予測分析で迅速な対応を支援する。中期ではトラスト技術やブロックチェーンにより、国境を越えたデータ流通をサポート。長期では自律型のAI同士が暗号を使って自動で通信するような、セキュリティ自動化を実現するという。

  • セキュリティ領域

    セキュリティ領域

ICTインフラ(IOWN)

高速・低遅延・大容量というIOWNの特徴を生かし、自動運転や医療問題の解決を支援する。世界中のデータがリアルタイムに連動する次世代の社会基盤を支え、未来の持続的な資源循環に貢献するという。

短期的にはIOWN技術の構成要素であるAPN(All-Photonics Network)の低遅延な通信により、自動運転と遠隔手術を実現する。中期ではさらに光コンピューティングと光ネットワークによるデジタルツインを社会実装し、都市間の問題解決や遠隔医療の課題解決を実現。長期ではIOWNのネットワークとコンピューティングを統合し、世界中のデータをリアルタイムにつなぐ新たな社会の実現を目指す。

  • ICTインフラ(IOWN)領域

    ICTインフラ(IOWN)領域

宇宙 / NTN(Non-Terrestrial Network) / モバイル

光技術による有線接続だけでなく、無線領域でも途切れない高速な通信の実現を目指す。将来的には宇宙統合コンピューティング環境と連携した強靭なネットワークにより、気候変動や災害にも対応可能なICTレジリエンスの高度化に寄与する。

短期では5Gスライシングや優先接続、ローカル5Gなど、途切れない安定した5G通信の実現を目指す。中期ではHAPS(High Altitude Platform Station:高高度プラットフォーム)によるデータ利活用を実現する。上空からのデータと地上からのデータを組み合わせ、農業や漁業の効率化が期待できるという。また、高高度通信は地上の天候など気象条件の影響を受けにくく、災害時の安定通信や冗長性の担保が期待できる。

長期では6Gの実現と並行して、宇宙統合コンピューティングによりグローバル全体でIoTネットワークを構築する。また、宇宙にデータセンターを設置し、地上のデータを宇宙で処理することで、地上の災害リスクを低減しながら高速で効率的なデータ処理が見込めるとのことだ。

  • 宇宙 / NTN(Non-Terrestrial Network) / モバイル領域

    宇宙 / NTN(Non-Terrestrial Network) / モバイル領域

池尻氏は「未来の豊かな社会の実現に向けて、産業・地域のあらゆるお客様やパートナーとの共創を進め、技術の社会実装を進めたい」と語っていた。また、同氏は「今後は1年ごとに改訂したロードマップを示していきたい」とも話していた。