暗号資産やWeb3をテーマとするカンファレンス「WebX2025」が、8月25日~26日に都内のホテルで開催された。このイベントでBinance Japanの代表取締役を務める千野剛司氏が、Web3の基礎やWeb3業界におけるキャリアについて大学生向けに特別講義を実施した。本稿ではその講義の内容をレポートする。
Web1~Web3までの変遷と特徴を振り返る
Binance Japanは全国の大学生を対象に、出張授業プロジェクトによる一日集中型のワークショップ「Binance Academy Roadshow」を開始する。北海道から九州・沖縄まで全国の大学を対象にツアー形式で講義を展開し、Web3に関する基礎知識を学ぶ機会を提供するという。今回の千野氏による特別講義は、「Binance Academy Roadshow」の模擬講義に位置付けられる。
また、同社がWeb上で提供するBinance Academyは、Binanceユーザーに限らず誰もが無料で利用できる教育コンテンツプラットフォーム。ブロックチェーンや暗号資産について学習でき、初心者から中級者向けの実用的な知識の獲得をサポートする。Binance Academy Roadshowは、教育コンテンツプラットフォームであるBinance Academyの活動の一環として開催される。
千野氏はまず、Web技術の進化やWeb2とWeb3の違いから紹介した。Webが登場した第1世代では、情報はテキストが中心だった。静的なサイトが多く、主な役割は情報検索だった。
1990年代以降に訪れたWeb2の時代には、Webサイトへのコメントなど双方向のやり取りが可能となった。その後、GAFAM(Googlet、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの頭文字を取ったもの)をはじめ大手プラットフォーマーが中心となり、SNSなど参加型のコンテンツが増加した。
しかし、Web2は大手プラットフォーマーがユーザーのデータを囲い込むため、情報と権力の集中や、個人情報漏えいリスクの増加、プライバシー侵害、プラットフォーム依存など、さまざまな課題も浮かび上がってきた。
このように課題を抱えていたWeb2に対し、分散型の思想を反映したのがWeb3だ。特定の企業ではなく、ユーザーが主体となってデータを保有する。また、中央集権的なプラットフォームに依存しないのも特徴だ。
Web3を語る際に頻繁に出てくるのが、ブロックチェーンという技術だ。ブロックチェーンは分散型型台帳とも呼ばれ、分散ノード間で台帳を共同管理するため改ざんが難しい。
千野氏は「Web3とブロックチェーンは必ずしも同じものを指すわけではない。Web3という思想を実現するために必要な技術の一つがブロックチェーン。Web3でユーザーが主体となってデータを保有するという分散型の思想と相性が良いので、ブロックチェーンがよく使われている」と説明した。
暗号資産取引所、CEXとDEXの違いとメリット・デメリットは
Web3において暗号資産を保有・運用する際には、Binanceのような取引所が重要だ。この取引所は、CEX(Centralized Exchange:中央集権型暗号資産取引所)と、DEX(Decentralized Exchange:分散型取引所)に分けられる。
CEXは企業など第三者機関が運営し、取引の仲介役を介して取引が成立する。ユーザーは法定通貨や暗号資産を取引所に預け入れ、取引は取引所の内部システムで実行される。資産は取引所が保管しており、運営組織による問い合わせ対応などユーザーサポートが受けられる。
一方で、取引所にユーザーの資産を預けるため、ハッキングのリスクがある。また、運営主体の財務状況やシステムトラブルなどの影響で資産が凍結されるリスクもある。
反対にDEXは仲介者が不在で、プログラム上で取引が成立する。運営によるサポートが受けられないので、ある意味ですべてが「自己責任」となる。しかしユーザー同士が直接取引可能で、自身のウォレットから直接資産を売買するため、CEXよりも低コストだ。
「暗号資産取引の初心者や技術的に不安のある方はCEXで取引を始め、慣れてより高度な取引を実現したくなったときにはDEXに参加するのがいいだろう」(千野氏)
Web3業界で働きたい人が身に付けておくべき2つのスキル
続いて、インフルエンサーとして活躍するさなまる氏もステージ上に登場し、千野氏とWeb3時代におけるキャリア選択についてクロストークを繰り広げた。
さなまる氏:Web2の企業とWeb3の企業で働く違いを教えてください。
千野氏:Web2とWeb3はインターネットの歴史の過程なので、はっきりとした区別が難しいです。Web2とWeb3の両方をやっている企業もあります。
あえて違いを挙げるとするならば、Web2はサービス提供者とユーザー(お客様)という関係性ですが、Web3は自分たちの会社やプロジェクトの提供するサービスにユーザーも巻き込んで、一緒にプロジェクトを進める関係性です。
働くことについて考えると、仕事の種類はWeb2とWeb3に差はないと思います。Web3の会社であっても人事や経理が必要ですし、会社が経済活動に参加するために必要な機能は変わりません。では何が異なるかというと、働き方やマインドなどの企業カルチャーだと思います。
さなまる氏:Web3に関わって働くことを考えると、どのようなキャリアの選択肢があるのでしょうか。
千野氏:当社のような暗号資産取引所も選択肢の一つですし、暗号資産を発行して何かプロジェクトを進める仕事もあります。また、先ほど言ったようにWeb3の企業にも人事や経理、営業は必要なので、さまざまな関わり方があります。
Web3企業の働き方について少し補足します。私の周りでWeb3に携わっている方々の例なので、全員がそうだというわけではありませんが、〇時~〇時まで働かなければいけないとか、毎日スーツで出社するといったように、固い就業規則に縛られていません。フルリモートワークの方も多いです。
さなまる氏:これからWeb3業界を目指したい大学生が、在学中に身に付けておくべきスキルや経験はありますか。
千野氏:2つあります。まず、Web3はグローバルな市場なので英語力が必須です。Web3では日本やアジアの枠組みにとらわれることなく、世界中の面白そうなプロジェクトに率先して参加できます。
AI翻訳も性能が高まっていますが、私はAIの翻訳を介した会話で本当に人と仲良くなれるのか疑問に感じています。人と人が仲良くなるためには、やはり翻訳機を介さず自分の感情を自分の言葉で伝えられる方がアドバンテージがあるでしょう。
もう一つは、必要なスキルを自分で身に付けるという経験です。日本企業の多くはOJT(On the Job Training)として仕事を手取り足取り教えてもらえますが、Web3のような新しい業界は頼れる先輩や上司がいない場合も多いです。
Web3企業は自由な働き方ができる反面、決められたルールがありません。プロジェクトの目標とスケジュールだけが決まっていて、その他の詳細な進め方はメンバーに任せられています。必要なスキルは自分から学ばなければ、獲得できません。
学生時代に経験しておくべきことは、自分自身で何かを学んでプロジェクトに貢献した経験、あるいは、アルバイトなど各自の持ち場でリーダーシップを発揮して何かの結果をリードした経験ではないでしょうか。
さなまる氏:Web3企業で働いている人は、どのような人が多いですか。
千野氏:年齢は多様ですが、国内の一般的な企業よりも平均年齢は若いです。若い世代の人も活躍できる業界だと思います。バックグラウンドも多様で、大学を卒業してすぐ、もしくは大学に進学せずに起業した方もいますし、伝統的な大企業・銀行にいた方、コンサル出身の方、インフルエンサーなど、特定の傾向を見つけるのが難しいです。
私はBinance Japanで採用も担当しますが、採用時に重視するのは「目標の山頂を示したときに、この人は自分で装備を整えて向かえる人なのか?」ということです。自走できる能力が重要です。
さなまる氏:大学生の皆さんに、キャリア選択のヒントやアドバイスをお願いします。
千野氏:Web3は非常に若い業界なので、うるさい上司や先輩が少ないです。まったくいないとは言い切れませんが(笑)。若い世代が引っ張っていく業界なので、高校卒業や大学卒業後に、やる気と体力があればいくらでも活躍できます。
一方で、先輩に教わりながらゆっくり成長したいという方には、サポート体制が薄いと感じられるでしょう。業界の特色を自身のキャリア志向と合わせて判断してもらえたらと思います。







