コンカーは8月28日、事業成長戦略に関する説明会を開催した。同社はこれまで「経費精算のない世界」を掲げ、間接費業務の効率化、ガバナンスの強化、運用の高度化を推進してきた。

これからは、保有するビッグデータとAI AgentやAIチャットボットを組み合わせることで、人の手を介さない、業務効率化とガバナンス強化、自律運用を実現し、企業の成長を支える戦略的データインサイトの提供へつなげていくという。

代表取締役社長の橋本祥生氏は、「当社は経費精算の分野で30年以上の実績があり、年間10億件の経費明細や3,000万件の出張データとを保有している。これらにSAPシステムのデータを連携し、統合されたデータ活用やインサイトを提供していく。経費削減をなくすだけでなく、ビッグデータとAIを活用してインサイトを提供する世界を目指す」と述べた。

  • 代表取締役社長 橋本祥生氏

    代表取締役社長 橋本祥生氏

3つのステップから構成される「Vision2028」

同社は戦略的データインサイトの提供に向け、3つのステップから成る「Vision2028」を策定、今後はこれに沿って取り組みを進める。

最初のステップは「経費精算のない世界」。このステップでは、AI AgentやAI Co-Pilotにより利用者・管理者・運用者の業務を自動化・自律化。ユーザーは手入力なしで、内容を判断するだけで業務が完結する世界を目指す。

次のステップ「自律運用」では、人手に頼っていたSAP Concurの導入・設定・運用をAIが支援し、負担を極小化する。国・業種・業界に応じたベストプラクティスを自動・対話型で適用し、運用効率を向上させる。

最後のステップの「データの民主化」では、同社が抱えるビッグデータを活用し、データを起点に業務最適化、ガバナンス強化、収益改善を支える戦略的インサイトを提供する。

  • 「Vision2028」の概要

    「Vision2028」の概要

橋本氏は「将来、経費精算業務はなくなると考えている。われわれは設定運用のベストプラクティスを提供することで、人手を介さずに業務の効率化、ガバナンス強化を実現する。これからはAI活用を前提として業務を再構築するマインドへのシフトが必要」と語った。

AIコパイロット「Joule」とAIエージェントによる機能を提供

続いて、カスタマー&ソリューション統括本部 プロダクトマーケティング部部長の舟本憲政氏が、今後SAP Concurが提供するAI機能について説明した。SAP Concurには、SAPのAIコパイロット「Joule」とAIエージェントが組み込まれ、複雑なプロセスを自動化する。

  • コンカー カスタマー&ソリューション統括本部 プロダクトマーケティング部部長の舟本憲政氏

    コンカー カスタマー&ソリューション統括本部 プロダクトマーケティング部部長の舟本憲政氏

SAP Concur全体

SAP Concur全体に対しては、Conversational Help Search with JouleとAdministrator Consultation with Jouleを2025年年末以降リリース予定。

前者は自然言語による会話で業務を支援する。知りたい情報について、Jouleを通じた対話により生成AIが回答を即時に作成するほか、回答の根拠となるソース情報も表示する。

後者はSAP Concurの設定をAIが支援するもので、監査ルールなどの設定の分析や改善が、Jouleとの対話のみで完結する。

Concur Travel

出張にまつわる手続きを一元管理できる「Concur Travel」では、以下の2つのAI機能のリリースが2025年年末以降に予定されている。

Booking Agent
Jouleとの対話で出張手配が完了、個人の嗜好や会社の規定に合わせて最適なフライトを提案する。画面操作で行っていたフライト予約がJouleとの対話で完結する。旅行の文脈に応じて、駐車場・鉄道・ビザサービスなどの追加手配を自動提案し、旅行者の満足度とプログラムの利用率を向上する。

Meeting Location Planner Agent
AI Agentが出張費用の計画と見積もり、メンバーが会合する最適な場所の設定、宿泊施設やフライトの提案を実施する。世界各地にいるチームメンバーのグループ出張計画からメールでの共有までAI Agentがサポートする。社内調査では、作業時間が9割削減されるという結果も出ているという。・

Concur Expense

経費精算を行える「Concur Expense」では、以下の2つのAI機能のリリースが2025年年末以降に予定されている。

Expense Report Validation Agent
経費申請前にAIが抜け漏れを自動で検出し、チャットでサポートする。正確かつコンプライアンスに準拠した経費精算レポート提出を支援し、差し戻しを削減することで経理部門の負荷を軽減する。

Policy Trip Tips
AIが自動的に読み込んだ会社規定を分析し、規定の情報を申請者に表示することで従業員の規定遵守をサポートする。

3つの柱から構成される事業成長戦略

事業成長戦略については、橋本氏がカスタマーサクセス、公共向けビジネス、政策提言活動の3つの観点から説明した。

カスタマーサクセス

橋本氏は、カスタマーサクセスの活動として、サービス提供に加え、継続して業務改革を支援する体制をとることで、導入後の行動変容や風土改革を促していると述べた。稼働したら終わりではなく、間接費業務の改革を通して、企業風土改革の実現をサポートする。

カスタマーサクセスにおいては、オリジナルの成熟度マップを用いているが特徴的だ。このマップは「経費精算をなくす」ためのノウハウを集約したもので、このマップに基づき、顧客の現状を把握し、課題解決をサポートする。

  • コンカーの「成熟度マップ」

    コンカーの「成熟度マップ」

公共向けビジネス

新たな取り組みとしては、公共向けサービスを拡充する。その理由について、「日本の行政は遅れており、旅費業務において大きな課題を抱えているから」と橋本氏は述べた。あわせて、旅費法改正への対応も求められている。

公共のニーズに応えられるよう、2024年9月には国内にデータセンターを開設したほか、セキュリティ評価制度(ISMAP)にも登録した。実際、日本原子力研究開発機構、福井県などで導入が進んでいるそうだ。

政策提言活動

また、制度と実務をつなぐため、2024年3月以降、インボイス制度に関する政策提言活動を積極的に展開している。今年8月には、ビズリーチ、マネーフォワード、ラクスと立ち上げた経費MIRAI協議会より「経費精算業務の更なるデジタル化・効率化に向けた税制改正要望」を発表した。