日本NPOセンターは8月5日、NPOをはじめ非営利団体のIT活用を支援する取り組み「NPTechイニシアティブ」の一環として、フォーラム「AI時代におけるNPOの未来」を開催した。NPTechとはNonProfit Technologyの略で、NPO職員のデジタルスキル向上に特化した研修プログラムを開発しており、2023年9月よりスキルアップ支援を目的とする研修を開始している。

同イベントでは伊藤忠テクノソリューションズ、インテル、NTTデータグループ、デル・テクノロジーズ、LINEヤフーなど参画企業がパネルディスカッションに参加し、NPOを支援する意義などをそれぞれの立場から語った。

参加者は以下の通り。
・NTTデータグループ 金田晃一氏
・インテル 紀伊國雅貴氏
・デル・テクノロジーズ 松本笑美氏
・伊藤忠テクノソリューションズ 浪川知也氏
・LINEヤフー 田村夏子氏
・日本NPOセンター 上田英司氏

  • パネルディスカッションの様子。左から、上田英司氏、田村夏子氏、浪川知也氏、松本笑美氏、紀伊國雅貴氏、金田晃一氏

    パネルディスカッションの様子。左から、上田英司氏、田村夏子氏、浪川知也氏、松本笑美氏、紀伊國雅貴氏、金田晃一氏

インテルはCSR活動の中でRISE戦略を推進

インテルはCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)実現に向けた取り組みとして、RISE戦略を打ち出している。RISEは「Responsible(社会的責任)」「Inclusive(受容性)」「Sustainable(持続可能性)」「Enabled(実現能力)」の頭文字をそれぞれ取ったものだ。

このうち、NPTechイニシアティブの活動は特に「Inclusive」と「Enabled」に関連することから、同社は2023年度からこの活動に参画している。これまでに、「ITリテラシー入門講座~用語説明からパソコン選び~」や「AIの基礎を学び、さらに学びを深める」などの研修をオンラインで実施してきた。

紀伊國雅貴氏は「当社はIT業界の中で作る側の立場であり、使う側の意見が見えにくい。ユーザーである非営利団体の方と一緒に活動することで、新たなユースケースや課題が見えてくる。将来的には社会課題の解決とビジネス成長がつながり、相互にwin-winな関係性を構築できればうれしい」と話していた。

  • インテル 紀伊國雅貴氏

    インテル 紀伊國雅貴氏

デル・テクノロジーズはグローバル全体で非営利団体を支援

デル・テクノロジーズはESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:ガバナンスの頭文字を取ったもの)に資する取り組みとして、「デジタルインクルージョン」を掲げている。

これは、デジタルテクノロジーの利益を享受できる人を増やすための活動で、NPTechイニシアティブの活動理念にも通ずることから、インテルと同じく初期から参加を表明している。同社は「NPOデジタル1Day 留学」として年次イベント「Dell Technologies Forum」に非営利団体職員を招待し、学習の機会を提供した。

  • デル・テクノロジーズのサステナビリティ&ESG目標

    デル・テクノロジーズのサステナビリティ&ESG目標

同社はグローバル全体で非営利団体や地域コミュニティの支援に注力しており、2020年から全世界で3億9600万人にデジタルインクルージョンプログラムやパートナーシップとイノベーションを通じて価値を提供してきたとしている。プロボノ活動を通じて支援した非営利団体は535、2024年度には全社員の総ボランティア時間を合計すると94万時間を超えるそうだ。

松本笑美氏は「一般企業であってもNPOなど非営利団体であっても、誰もがAIを活用する時代になりつつある。当社内でもAIに関するリスキリングを実施しており、AIのような新しい技術とどのように関わるかを社内で検討し、非営利団体にも共有していきたい」と、社内の取り組みを交えて説明していた。

  • デル・テクノロジーズ 松本笑美氏

    デル・テクノロジーズ 松本笑美氏

伊藤忠テクノソリューションズは非営利団体支援の経験でビジネスを拡大

伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は「Challenging Tomorrow‘s Changes(明日の変革への挑戦)」を企業理念として掲げ、サステナビリティ方針を「技術と技(わざ)を未来のために」としている。

また、これらを実現するためのマテリアリティ(重点施策)に、「ITを通じた社会課題の解決」「明日を支える人材の創出」「責任ある企業活動の実行」を定めている。このうち、「明日を支える人材の創出」の実現に向けて、同社はNPTechイニシアティブに参画。

また、「ITを通じた社会課題の解決」として、日々の営業活動だけでは把握しきれない社会課題を考えるきっかけとしても、NPTechイニシアティブに参画する意義があるという。

  • 伊藤忠テクノソリューションズは非営利団体の支援を通じてビジネス拡大につなげるという

    伊藤忠テクノソリューションズは非営利団体の支援を通じてビジネス拡大につなげるという

浪川知也氏は「お客様の目先の要望に対応するだけでは、先回りした提案が難しい時代になった。プロボノ(専門知識・スキルを活用した社会貢献活動)として社員が官公庁やNPOを支援することで、広い視野を養うことを期待している」と、NPTechイニシアティブに参画する背景を説明した。

  • 伊藤忠テクノソリューションズ 浪川知也氏

    伊藤忠テクノソリューションズ 浪川知也氏

LINEヤフーが新たにNPTechイニシアティブに加入、その狙いは?

LINEヤフーは社会貢献活動の柱として、「災害対策・復興支援」「未来世代につなぐ責任」「情報技術社会の発展」「地球環境への配慮」の4点を挙げている。このうち「情報技術社会の発展」の項目では、地域やコミュニティにおけるデジタル活用の支援や産業と情報革新の基盤づくりなどに取り組んでいる。

同社は独自の取り組みとして、NPO向けにITを活用した情報発信を支援する講座を2021年に開始、2025年度にNPTechイニシアティブに加入した。

  • LINEヤフーのプロボノ活動の例

    LINEヤフーのプロボノ活動の例

田村夏子氏は「NPOを支援したい気持ちはあるが、1社だけでは対応可能な団体数が限られてしまうので、NPTechイニシアティブに参加することで多くの団体に情報を届けたい」と、参画に至った背景を語った。

  • LINEヤフー 田村夏子氏

    LINEヤフー 田村夏子氏

NTTデータは新しいマテリアリティの下で非営利団体を支援

NTTデータグループは7月1日、持続可能な社会の実現に向けて取り組む13項目のマテリアリティを策定。その中で「魅力ある会社を作り、デジタル技術でより良い社会をデザインし、全ての人が暮らしやすい世界を実現する」ための活動に、「社会のデジタル・アクセシビリティの向上」を定めた。

  • NTTデータグループの新たなマテリアリティ

    NTTデータグループの新たなマテリアリティ

同社はデジタルアクセスを向上させる取り組みとして「デジタルの恩恵を受ける人を増やす」「使いこなす人を増やす」「創る人を増やす」を設定。このうち「使いこなす人を増やす」がまさにNPTechイニシアティブへの参画につながっている。

NTTデータがNPOなどの非営利団体を支援する背景は、CTCに似ている。日常業務の定型的なアプローチでは対応しきれない非定型のアプローチをプロボノ活動の中で実践することは、社員の新しい働き方の発見につながるそうだ。

  • NTTデータグループが非営利団体を支援する意義

    NTTデータグループが非営利団体を支援する意義

金田晃一氏は「NPOと協力することで、普段の業務では使えないアプリやコミュニケーションツールが活用できる。業務における過剰な忖度もなく、好きな事柄や得意分野の強化につながり、充足感が得られる」と、その利点について述べていた。

  • NTTデータグループ 金田晃一氏

    NTTデータグループ 金田晃一氏

日本NPOセンターが企業の参画を呼び掛け

企業による社会貢献活動は有意義と考えられるが、その成果を可視化しづらい課題がある。そこで日本NPOセンターでは、「非営利団体のIT活用のための実態調査」を定期的に実施するなど、NPTechイニシアティブに参画するIT企業の取り組みを支援している。

日本NPOセンターの上田英司氏は「NPTechイニシアティブは、非営利団体だけでなくその先の当事者をITでどのように支えるのかを一歩ずつ考えていく。このパネルディスカッションに登壇した企業も、苦労しながら社員の方と団体のマッチングを進めているはず。この取り組みを通じて、各地の非営利団体の方にDXの進め方を考えてもらうとともに、企業の方には新たな社会貢献の形としてPTechイニシアティブを知ってもらえたら」と述べていた。

  • 日本NPOセンター 上田英司氏

    日本NPOセンター 上田英司氏