
筆者は、2021年以降、岸田内閣が創設した全世代型社会保障構築会議のメンバーを務めている。近年、わが国の社会保障は高齢化等による給付増が続いている。財政全体にとっても重荷になるとともに、現役世代を中心に保険料負担の増加が重くのしかかっている。
不断の改革努力が不可欠であり、引き続き全世代型社会保障会議が中心となり、医療・介護の改革を前に進めていく必要がある。
医療分野においては、まず人口減少が進む中で、希少な医療資源を可能な限り効率的に活用して、持続可能な医療提供体制を構築していくことが重要だ。医療法改正案を次の国会で確実に成立させて、病院機能の再編・統合や分化・連携の推進、外来機能の集約化を進めていく必要がある。
また、医師偏在対策については、実効性が何より重要であり、ディスインセンティブ措置を有効に活用することが肝要である。
加えて、医療保険制度も不断の見直しが必要だ。高額療養費制度の見直しに関しても、国民皆保険の持続性確保のために必要な面があるのではないだろうか。改めて結論を得るとされている本年秋に向けて丁寧に議論を進め、来年から着実に実行に移してほしい。
また、長年の課題であるOTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについては、3党協議で議論が進められている。年末に確実に結論を出し、働く人々の利便性向上と保険料負担の軽減につなげていくべきだ。
あわせて、今年は年末にかけて診療報酬改定に向けた議論が行われる。毎回お祭り騒ぎのようになるが、そもそも日本経済が長らくデフレに直面してきた中で、医療費は増加を続け、それが現役世代の社会保険料負担にも大きな影響を与えていることを忘れてはならない。医療機関の経営状況についてデータに基づいて精緻に分析をした上で、メリハリのある診療報酬改定を行い、国民負担の軽減につなげるべきだ。
介護についても、改革工程に掲げられたケアマネジメントへの利用者負担の導入や2割負担の範囲の見直しを年末にかけて検討し、今回こそ確実に実施するべきである。介護職員の処遇改善も必要なことではあるが、生産年齢人口が減少していく中で、人手不足は他産業にとっても共通の課題だ。限られた人的資源の活用という観点から、ICTの活用や配置基準の緩和など、生産性向上に向けた取組が必須であろう。
ここまで指摘してきた通り、社会保障分野では25年の年末にかけて重要な改革が目白押しとなる。
丁寧に議論を進めていくためにも、7月20日の参議院議員選挙終了後にできるだけ早く全世代型社会保障改革に向けた議論を深めることが期待される。