後藤秀夫 シック・ジャパン社長の 「人生の転機」【米国留学とMBA取得】

わたしたち『Schick(シック)』はおかげさまで29年連続国内ウェットシェービング販売シェアNo.1となるなど、剃刀メーカーとして多くの方々にご愛顧いただいてきました。

 しかし、少子高齢化が進む日本で何も手を打たなければ、市場が大きく伸びるわけではありません。そこで当社は、剃刀を日常生活に必要な雑貨として捉えるのではなく、シェービングに肌ケアを組み合わせた「ビューティグルーミング」という新たな市場をつくることを目指し、成長を加速しています。

 多くの方々を見ていると、財布のヒモが固いとは言っても、価値を感じる商品やサービスにはお金を出すものです。今は美意識の高い若い方が増え、ウェットシェービングやボディシェービングなど、商品を使う人や剃る場所(部位)が増えており、チャンスはまだまだあると考えています。

 わたしはもともとジョンソン・エンド・ジョンソンに入社し、営業を担当していました。

 自分としてはマーケティングを希望していたのですが、マーケティングは英語が必須且つ、ビジネス全般を分かっていないといけないということで、在職中に自費で米国留学しました。これが人生の大きなターニングポイントになりました。

 初めは言葉もおぼつかないし、文化も戸惑いの連続で何度も壁にぶつかりましたが、何事も経験です。実際、視野が広がりましたし、本当に行って良かったと思います。

 そして、米国サンダーバード国際経営大学院でMBA(経営学修士号)を取得し、マーケティングの仕事に就くことができました。若い頃にセールスとマーケティングの両方を経験できたことが、その後の人生に確実に生きています。

 わたしが当社の社長に就任したのが2022年。そこから早くも3年が経ちました。パーパス・ビジョンを策定・浸透し、戦略の立案、組織の基盤を再構築したことで、売上もターンアラウンドし、企業変革という意味では、まずまずの手応えを感じています。何より、当初55%だった従業員のエンゲージメントスコアが、足元では86%まで改善していることが嬉しく思います。

 当社は米エッジウェル・パーソナル・ケアの一員ですが、グループの中でも日本は米国に次いで2番目に売上が高く、いろいろな権限を委譲してもらっています。その一つが日本独自の製品開発でして、『シックファースト トーキョー』や『プロジスタ』は米国の本社ではなく、当社が日本で独自開発したブランドです。

 今後は日本で新たにつくったブランドを海外へ発信し、グループの中で、日本がイノベーションハブと言われる存在になりたいと考えています。

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