コンタクトセンター向けソリューションを手掛けるNiCEの日本法人であるナイスジャパンは7月25日、コンタクトセンターCX(Customer Experience:顧客体験)調査の結果について報告する記者説明会を開いた。
調査は消費者とコンタクトセンターを運営する企業担当者のそれぞれ250人に対し、問い合わせチャネル状況の把握とそのギャップを確認するために実施した。今回が5度目の調査となり、昨今の事情を考慮してコールセンターでの生成AI導入状況やカスハラ防止条例施行に関する設問が追加された。
電話問い合わせの満足度は消費者と企業の間に差が
調査の結果、消費者が商品やサービスの不明点に対し、まず最初に「自分で調べる」との回答が96%だった。それでも解決しない場合、このうち34.6%の人が次の行動として「問い合わせる」を選択している。また、「家族や友人、知人に聞く」の後に「問い合わせる」と回答した人を合わせると、75.8%の人が問い合わせを行うことが明らかになった。
また、不明点が解決できないまま商品やサービスを購入・利用する人は15.6%。「他社の代替商品やサービスを購入または検討する」という人が32.4%、「あきらめる / 利用しなくなる」という人は52.1%で、顧客の離反を防ぐためにもWebサイトの分かりやすさやFAQの充実による疑問解消が求められる。
また、消費者に不明点が生じた際に取る行動として、「WebサイトのQ&A閲覧」(88.8%)や「Web問い合わせフォームの利用」(77.6%)が多いが、企業側が提供していると回答した割合はそれぞれ59.6%と63.2%だった。
消費者が問い合わせた際に不明点が解決する場合が多いのは、「電話 / オペレーター」で90.4%。消費者が最も利用する「WebサイトのQ&A閲覧」で解決したという回答は53.6%で、利用の割合に対して解決率が低い結果となった。
消費者は「電話 / オペレーター」や「店頭・実店舗」(79.8%)で不明点が解決する割合が高いと回答した一方で、解決度が最も低いのは「チャットボット」(37.3%)だった。
電話での解決度は高いものの、消費者が電話以外での問い合わせを選択する理由について「電話はつながりにくいため」との回答が52.8%で最多となった。「電話をしたかったが電話番号がなかった」(33.3%)「電話問い合わせは好まないため」(31.5%)「出勤中や空き時間に問い合わせをするため」(28.7%)なども挙げられた。
一方で、消費者がつながりにくいと感じている「電話 / オペレーター」は、企業ではその認識が低い(20.9%)ことが明らかになった。
カスハラ防止条例による影響は?
昨今、客からの過剰な要求や迷惑行為、暴言などの「カスタマーハラスメント」、いわゆる"カスハラ"が問題となっている。「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」をはじめ、群馬県や北海道でも同様の条例が施行されている。
こうしたカスハラ防止条例の施行による消費者のコールセンター利用姿勢の変化について調査したところ、「より言動に注意する」が最も多く75.8%だった。「できるだけネット(FAQ)を見て自分で解決しようとする」(54.5%)「コールセンターへの質問を減らす」(33.3%)などの回答が続いた。
企業側におけるカスハラの事例では、「自社での事例があり生産性を下げる要因になっている」が37.4%と最も多い結果に。「自社での事例はあるが離職率は変わっていない」は32.4%だったものの、「自社での事例がありオペレーターから対策を求められている」(22.5%)や「自社での事例があり離職率が高くなっている」(20.3%)などの回答もあった。「影響はない」とする回答は14.4%だった。
企業側のカスハラ防止条例施行後の対応の変化については、「カスハラを受けた場合のSV(スーパーバイザー)への通知方法を各地るすることで可視化を進める」が42.2%で最も多く、「特に変更はなくこれまで通り」は35.6%、「カスハラを検知するようなシステムの仕組みを検討中 / 検討予定」は21.6%だった。
人材不足に対し大企業ではより生成AIの導入が進む
コンタクトセンターにおける生成AIの導入について、すでに開始している企業は23.6%と、前年調査の17.0%よりも増加していた。特に大企業においてその傾向が顕著で、前年の21%から31%まで増加した。
生成AI導入による効果は「コスト削減」が66.1%で最も高く、「正答率の向上」(57.6%)や「応答時間の短縮」(47.5%)などの回答が続いた。
ナイスジャパン セールスディレクターの島田宏巌氏は「電話での解決認識は高いものの、企業の提供チャネルとしては年々減少傾向にある。消費者の多くはWebで不明点の解決を試みるが、企業側のチャネル提供は少ない。Webサイトでの解決認識率は高いため、商品・サービスからの離反を避けるためにもWebでの解決度合いを上げていく必要がある」と、コンタクトセンターにおける課題を解説した。
また、コンタクトセンターにおける人手不足などの課題についても指摘し、「オペレーターの業務自動化や、ナレッジの整備とAIなどを活用した解決効率の向上、入電数の削減を目的とした生成AIの導入や顧客導線の改善が求められる」と、課題に対するアプローチを提案していた。