Microsoftは7月14日(現地時間)、「Enhancing Code Quality at Scale with AI-Powered Code Reviews - Engineering@Microsoft」において、同社が開発した「AIコードレビューアシスタント」の導入メリットと将来のビジョンを伝えた。

開発者の生産性とコード品質の向上を目的として始まったイノベーションの1つが、社内PR(プルリクエスト)全体の90%以上をサポートし、毎月60万件以上のPRに影響を与えるまで成長した経緯、そしてGitHubのAIコードレビューサービスにも組み込まれ世界中で活用されている能力について伝えている。

  • Enhancing Code Quality at Scale with AI-Powered Code Reviews - Engineering@Microsoft

    Enhancing Code Quality at Scale with AI-Powered Code Reviews - Engineering@Microsoft

社内問題の解決が発端

MicrosoftがレビュープロセスにAIアシスタントを導入したきっかけは、複数の問題を解決するためだった。同社のレビュー担当者は、構文の問題や名前の不一致など価値の低いフィードバックに時間を費やすことが多く、アーキテクチャー上の決定やセキュリティ対策など重要事項を見落としたり遅延することがあったという。

その一方でPR作成者は十分なコンテキストの提供に苦労しており、何千人もの開発者とリポジトリが存在する現場では、すべてのPRをタイムリーかつ徹底的にレビューすることは困難だった。こうした問題を解決するため、レビューの反復作業や見落としがちな問題をAIアシスタントにまかせることを目標にツールの開発が進められた。

同社が開発時に重視した点は、ワークフローへの統合。AIが自動的にレビュアーの一人として参加する仕組みを採用し、コードの変更点にコメントを書き込み、ときには具体的なコード改善も提案する機能が実装された。また、PRに適切な要約が含まれていない場合に要約を自動で追加、さらにPRディスカッションで対話に応じることも可能だという。

AIレビューアシスタント導入の効果とメリット

同社が開発したAIレビューアシスタントは人間のレビュアーのように動作する。この機能によりワークフローを変更する必要がなくなり、開発者はシームレスにAIを活用することができるようになる。同社は高い採用率の理由の一つとして、導入を容易にするこのスムーズな連携を挙げている。

品質および速度の面でも貢献することが示されている。品質では見落としがちなバグの検出が可能なこと、速度ではPR完了時間の10~20%の短縮(中央値)に成功した実績を挙げている。

AIで時間短縮が可能な理由はその即応性にある。人間の業務が立て込むとスケジュールの空きを待たなければならないが、AIであれば即座にレビューを開始することができる。軽微な修正といったAIの応答を信用できるケースでは、PRの承認とコードマージの迅速化が期待できる。

社内で得られた知見が世界に貢献する

MicrosoftはAIレビューアシスタントの導入で成功を収めたと言える。同社によると、この知見は人間が関与するレビューフローなどのエクスペリエンスの定義にも役立ち、一連のフィードバックループがGitHubの「Copilot for Pull Request Reviews」のリリースに貢献したという。

AIレビューアシスタントはすでに数百万人もの開発者に恩恵をもたらしたとされるが、同社はこれら成果を「ほんの始まりに過ぎない」と述べ、カスタマイズと品質への継続的な投資を続ける方針を新たに発表した。

今後はAIのコンテキスト認識の深化に重点を置き、リポジトリー固有のガイダンスの導入、過去PRの参照、人間のレビューパターンの学習を通じ、チームルールや希望に合致するインサイトを提供する予定だ。より高品質なコードを簡単に、短時間に開発できる未来が訪れるだろうと自信を示している。