AIエージェント「Devin」を手掛ける米Cognitionは7月14日(現地時間)、AI支援による統合開発環境を開発・提供する米Windsurfの買収合意を発表した。これは、OpenAIによるWindsurf買収交渉の破談や、GoogleによるWindsurf主要メンバーの引き抜きといった、ここ数日の目まぐるしい動きの末に決定したものであり、激化するAI開発競争の象徴的な出来事として注目を集めている。
今回の買収により、Cognitionは、Windsurfが持つ製品、知的財産(IP)、ブランド、そして事業全体を傘下に収める。今後、「Devin」と「Windsurf」のメリットを組み合わせて、「ソフトウェアエンジニアリングの新たな未来を築く」という同社のミッションの実現を加速させる考えだ。
Cognitionは「Devin」で、AIエージェントが自律的に振る舞い、開発プロジェクトの目標を理解して自ら計画を立て、コーディング、デバッグ、テストまでの一連の作業を遂行することを目指している。その先進性から大きな注目を集めているが、一方でその能力がまだ完全ではないとの指摘も受けていた。
Windsurfは、AIが開発者と対話しながら、効率的に質の高いソフトウェア開発を行えるよう支援する開発ツールである。実用性が評価され、350社以上の法人顧客と数十万人規模のデイリーアクティブユーザーを抱える。年間経常収益(ARR)は8200万ドルに達し、エンタープライズ向けのARRは四半期ごとに倍増している。
激化するAI人材獲得競争の渦に巻き込まれたWindsurf
Windsurfに対しては、OpenAIが買収に乗り出し、約30億ドルで合意間近と報じられていた。しかし先週、最終的な決裂が報じられ、その直後に事態は急展開を迎えた。Googleが、Windsurfの創業者・CEOと主要な研究リーダーらトップ人材のみを引き抜くという「Reverse Acquihire」(人材や技術獲得を主な目的とした行為)を行ったのだ。
これにより、Windsurfは経営陣と技術的なリーダーの多くを失い、残された従業員は先行きが不透明な状況に置かれた。さらに、このGoogleの契約では、株式の権利確定済みの従業員のみに金銭的な見返りがあり、権利確定済みの株式を持たない従業員(多くは一年以内に入社)には利益配分されないと報じられ、トップ層と投資家だけが利益を得る契約として批判を浴びていた。
また、この混乱により、Windsurfは製品競争力においても危機に瀕していた。OpenAIによる買収の噂が活発に報じられたことで、AIモデルを提供するAnthropicが、競合であるOpenAIに自社技術が渡ることを懸念し、Windsurfへの高性能モデルの提供を制限。これにより、一部の顧客が離れる事態も発生していた。
リーダーを失ったWindsurfにとって、今回のCognitionによる買収はまさに「救済」と言えるものであった。Cognitionは発表の中で、「全従業員への利益配分」や「ストックオプションの権利が確定するまでの待機期間の撤廃」など、Windsurf従業員を手厚く迎え入れる姿勢を強く打ち出している。また、Windsurfが失っていたAnthropicの高性能モデルへのフルアクセスの回復も明らかにした。