
石破茂政権が物価高対策の目玉として決めた国民1人当たり2万円の現金給付が逆風にさらされている。6月22日投開票の東京都議選で自民党が想定以上の議席減で惨敗し、減税を訴える野党と一線を画した形で打ち出した給付金が「足を引っ張った」(閣僚経験者)結果となったためだ。
消費税減税の断行に傾きかけた首相に対し、現金給付の優位性を唱えた政権幹部の一人が加藤勝信財務相だ。7月20日投開票の参院選次第では、加藤氏に対して「現政権が少数与党になれば加藤氏も次はない」(同)との声がくすぶる。
政府・与党は減税への慎重姿勢を崩していないが、参院選の結果次第で方針転換する可能性もある。6月に閣議決定した経済財政運営の指針「骨太方針」では減税政策と比べて賃上げ政策を強調したものの、政府関係者によると、文言調整の過程で「減税の余地を残した」という。
加藤氏は政策通といわれるが、「官僚答弁と変わらない」(官邸筋)発信力では政治家としての伸びしろは限られるだろう。自民党総裁への挑戦をあきらめていないとされる加藤氏にとって、実質賃金が伸び悩む経済状況の打開に向けて存在感を高める好機なのだが、その片鱗はみえない。
トランプ米政権の高関税政策を巡る日米交渉でも、17日の閣議後会見でベッセント米財務長官との協議は「具体的な日程は決まっていない」と述べ、手詰まり感が漂う。国会での安定した答弁能力で首相の信頼を得ているといわれる加藤氏だが、加藤氏のリーダーシップ発揮を求める声が高まっている。