日立製作所は6月26日、社会インフラを支える情報制御システムを提供している大みか事業所において、品質保証業務にAIエージェントを適用し、熟練者の経験や知見などの暗黙知を形式知化して組み込むことで、顧客からの問い合わせ対応を高度化・効率化できることを確認したと発表した。

品質保証部門が抱えていた課題

機器故障やトラブルの発生により問い合わせがあった場合、品質保証部門では、発生事象と過去の類似事例やマニュアルなど複数の情報をひもづけ、総合的な判断から対策を導き出している。

しかし、膨大な情報から参考とすべき適切な情報を抽出し、対策に必要な情報とひもづけるには、熟練者の経験や記憶に基づく勘が必要であり、若手担当者が迅速に対応することは難しいという課題があったという。

そこで、トラブルや問い合わせの概要を文章で入力すると、過去に発生した膨大な類似事象をデータベースから抽出できる品質保証業務支援ツールを活用することでトラブルを未然に防いできたが、若手担当者では状況を正しく迅速に把握することは難しいという実態があった。

実証実験の概要と成果

実証実験では、Generative AIセンターのデータサイエンティストを中心としたGenAIプロフェッショナルが、ヒアリングを通して熟練者の暗黙知を生成 AI のプロンプトに落とし込み、改善・評価、チューニングを行うことで、品質保証業務支援ツールに生成AIを組み込んだ。

  • 生成AIによって実現したい品質保証業務

鉄道システム分野の品質保証業務を対象とした実証実験において、3つの効果を確認したという。

  • トラブル事例検索の精度向上(検索時間を約9割削減)
  • 特徴量抽出・分析による品質レベルの向上(分析時間を8割以上削減)
  • 初報レポートのドラフト生成によるトラブル対応の高度化(レポート作成時間を8割以上削減)