なんとなく使っているが実際にその詳細がわからないで使っていることがなんと多いことだろうか。子供のころは目を大きく見開いて、まだそれを理解していこうと分解していたが、いつしかやらなくなる。そのモチベーションは純粋な好奇心でたいていみんな持っていたものだ。しかし大人になるとお金にならないことはやろうとしなくなる。
機械式時計を徹底的に分解して独自の方法でわかりやすくしたノルウェーのエンジニアFredrik Flornes EllertsenさんのブログがHackerNewsに取り上げられ話題になっている。機械式時計の蓋を開けたことのある人であれば、電気も使わずに高速に動くいくつもの物質に興味をかき立てるが、その瞬間に何もできないとその複雑なメカニズムにそっと蓋を閉じるだろう。
時計作りに興味を持ったFredrik Flornes Ellertsenさんは機械式時計のわかりやすい分解図がほしいと思い、その模型作りをはじめる。エポキシ樹脂に各部品を配置し、固まっては次の層を20層重ねて配置していく積層樹脂鋳造を試みるが、層の継ぎ目や屈折率でうまくいかず釣り糸を使ったり材質を変えたりとプロトタイプを重ね、手間と時間のかかる作業の末に腕時計のムーブメントの構造を長方形の樹脂に配置している。
AIで調べればわかるーー
そんな声もあるかもしれない。しかし、いつでも手に取り自由な角度でつぶさに眺められるこの模型はAIの解説とは違う何かが秘められている。作成したFredrik Flornes Ellertsenさんにとってはその何百倍もの知識と技術が模型作成によって得られているはずだ。
分解図や模型はハードルが高いが、仕組みをノートにつけて自分なりの理解増幅のメモやギミックを追加していくことは不可能ではないし、誰しもが学生時代にやっていたこと。学生時代を思い返せば、学習効果が最も高かったのはこのノートにぎっしりと自身オリジナルの図や追加事項が加わっていた時期だ。何かの手間や工程を加えて自分のものにする。美しい機械式時計の立体模型を目にして、"Mechanical Watch"はスキル向上には欠かせない視点だと思った次第である。