サイボウズは4月15日、名古屋市内でkintoneの公式ユーザーイベント「kintone hive 2025 nagoya」を開催。同イベントではkintoneを活用した6つのユーザー事例が紹介された。
本稿では、コンタクトセンターのオペレーター100人のシフト管理を皮切りにkintoneの社内活用を広げ、社内ベンチャーの立ち上げまで行った事例を紹介したデータセレクトの公演の模様をお届けしよう。
膨大な工数がかかっていたExcelによるシフト管理
データセレクトは、愛知県豊明市にあるダイレクトメール発送代行、データ入力、テレマーケティング、アンケート調査・集計、コンタクトセンターなどのBPO(業務委託)を行っている会社で、従業員数は600名弱だという。
森琢弥さんは「kintoneで広げる野望」と題して講演を行ったが、その野望とは、効率的に働いて、なるべく体力を残して帰り、家族と時間を過ごすことだという。
森さんはデータセレクトに2021年に入社し、コンタクトセンターに配属。入社当時、オペレーターのシフト管理は、100人から毎週メールでシフト希望を受け付け、そのメールを見ながら希望時間をExcelに手入力していた。そうして出来上がったシフト候補を一行一行見ながら調整し、全員に結果をメールで送付していたため、シフト管理に、膨大な工数がかかっていたという。
そんなとき、巡回しながら社内業務の改善を担当する社員(岩佐さん)がコールセンターを訪れ、kintoneによるシフト管理の業務改善がスタートしたという。
kintone導入でシフト管理の工数を大幅削減
業務改善としては、まず、オペレーター100人から毎週届くシフト希望メールを、直接、kintoneにデータ入力するように変更した。これには、トヨクモが提供するホームブリッジというプラグインを利用したという。その結果、ルックアップを使用することで氏名が自動的に入り、入力ミスがなくなった。
その後、出来上がったExcelのシフト管理表は、Excelのマクロを介してkintoneにアップロード。オペレーターへの通知はメールではなく、kViewerを使って、直接kintoneのデータを参照してもらうようにした。
「すべてがkintoneの中で収まり、手作業を大幅に削減することができました」と、森さんは効果を説明した。この業務改善により、約15時間の工数が削減されたが、費やした時間はわずか8営業日だったという。
「これを外注してしていたら、業者選定から始まり、膨大な時間と費用がかかっていたと思います」(森さん)
では、なぜ、オペレーターのシフト管理をスムーズに改善することができたのか。森さんは、3つのポイントを挙げた。それは、kintoneの得意不得意をきちんと理解すること、変えるべきではないところにはこだわらないこと。そして、改善に人を巻き込んでいくことだという。
kintoneの活用を社内全体に展開
こうしたコンタクトセンターの改善は、社内全体に展開されることになった。
この後も岩佐さんは、他の部署を回って改善を続けていたが、コンタクトセンターの経験を踏まえ、kintoneリボーンプロジェクトを発足させた。このプロジェクトでは、売上や減価など、あらゆるデータを一旦kintoneに集め、貯まったデータを活用できるようにアプリの連携をすることを目的にした。
「どうしてもExcelから抜け出せない部分もありましたが、Excelファイルを簡単にアップロードすることでアプリに自動的にフィールドに落とし込んでくれるM-SOLUTIONSさんのプラグインがありましたので、それを使っています」(森さん)
このような形であらゆるデータをkintoneに貯めていくことで、売上など、データをリアルタイムで確認できるようになったという。
また、kintoneの社内研修も行った。研修では、kintoneの機能を覚えてもらうだけでなく、自身の業務を改善、提案できるようにすることを目指していたという。
そのため、事前にその部署で行われる業務をヒアリングし、落とし込めそうなアプリを研修で試しに作ってみる、そういったことを意識して研修を行たという。これにより、ある部署ではすぐに20個を超えるアプリが作られ、業務が効率化されたという。
クライアントにも広がるkintoneの活用
同社はさらに、kintoneの活用をクライアントへの報告業務にも広げた。クライアント連携専用のkintone環境を用意し、クライアントのアカウントを作って、アプリやスレッドで情報共有を行ったという。これによって、クライアントに報告するためのExcelが不要になったという。
「クライアントに好きなタイミングでkintoneにログインして見てもらうだけで、報告が完了します。報告のための残業がなくなりました」(森さん)
そうすると、クライアントからkintoneの導入サポートを支援してもらえないかという声がかかったという。
「BPOという業態を通して、生きたkintoneをクライアントに利用してもらうことは、効率的にkintoneの良さを広めていることになると感じました」(森さん)
こういった経験を経て、データセレクトは、2024年秋にサイボウズのオフィシャルパートナーとなった。そして、「Studio Do-Senara」という社内ベンチャーを立ち上げることにつながったという。
「Do-Senara(どうせなら)という社名は私が考えたのですが、どうせならもっと効率的に、どうせならもっと楽しく、そういったどうせならに続くポジティブな出来事を実現していきたい、そういった思いを込めて、社名を付けました」と森さんは、社内ベンチャーの目標を語った。