
グループの”要”
「豊田自動織機はトヨタグループの”要”だ」(トヨタ自動車幹部)――。同グループの源流企業である同社が株式非公開化することで、トヨタを軸とするグループ再編が進む形となる。
TOB(株式の公開買い付け)にかかる費用は約3.7兆円。銀行団の融資約2.8兆円を含めれば6兆円規模の買収となる。買収ではトヨタが約7000億円、トヨタ不動産が約1800億円、トヨタ会長の豊田章男氏が10億円を新たに設立する持ち株会社に出資。豊田織機が保有するトヨタを含むグループ4社の株式を約3.1兆円で売却し、トヨタが保有する自社株を約1兆円で取得することで賄う。
「短期的な業績にとらわれず、10年、20年、30年先を見据え、モビリティカンパニーとしてモノの移動を牽引する成長力を発揮していく」とは前出の幹部。そんな豊田織機はトヨタにとって単なる源流企業ではない。
豊田織機の売上高のうちの約7割は世界首位のフォークリフト事業だが、残りの約3割はトヨタ向けの自動車事業。トヨタの売れ筋車「RAV4」の生産や「レクサス」の一部には豊田織機の車載電池が搭載されている。また、次世代リチウムイオン電池や全固体電池でも豊田織機が開発の一部を担う。
更に同社はトヨタ株を約9%、デンソー株を5%超、豊田通商株を11%超保有するなど、グループの持ち株会社的な側面も持つ。そのため、仏の投資ファンドからは資本効率改善に向けた取り組みの開示なども求められていた(その後、株主提案は取り下げ)。仮に豊田織機が「もの言う株主」に買収されれば、「トヨタグループの首根っこを押さえられる」(アナリスト)ことにもなりかねない。
直近のトヨタは電動化やSDV(ソフトウェアによって定義されるクルマ)化、更にはまちづくりといった中長期的かつ大規模な投資を求められており、「上場していなければ短期目線での要請を排除し、経営に集中できる」(弁護士)。
米トランプ関税で環境が激変する中、いかに意思決定を早めて手を打つか。それがトヨタグループに求められている。