〈初の女性学長が誕生〉上智大学学長・杉村美紀 「社会的に弱い立場の人たちに寄り添う人材を育成し、知の創生を図っていく」

「寄り添う」を一つのキーワードに

 ─ 4月から新学長に就任された杉村さんですが、まずは就任の抱負を聞かせてもらえますか。

 杉村 これは入学式で新入生たちに申しあげたことと重なりますが、本学には『For Others, With Others(他者のために、他者とともに)』という教育精神があり、わたしはこれを大事に、揺るぎない土台として考えています。

 問題はこの「他者」をどう捉えるかということですが、他者という存在の中には、いろいろな立場に置かれた人や不遇な境遇に置かれた方がいらっしゃいます。

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 特にイエズス会の大学としては、よく「社会的に弱き立場にある人」という言い方をするのですが、精神的・物理的な障がいを持った人たちもいれば、性的マイノリティの方々、あるいは避難を余儀なくされる難民の方々や、地震や火事などの災害で避難している方々がいらっしゃいます。

 こうした社会的に弱い立場や不遇な境遇に置かれた人たちに寄り添うというのが、わたしたちの最大のミッションです。

 ─ それは学生の?

 杉村 もちろん、学生たちや教員も含めた全ての人たちですね。

 わたしはこの「寄り添う」を一つのキーワードにして、そういう弱い立場を考えるための学問、人材育成、あるいは知の創生を図っていくことが重要だと思います。こうしたミッションから軸をぶらすことなく、いろいろな施策を決めていきたいと考えています。

 学長に選任されたことを大変光栄に感じると共に、責任の重さを受け止め、自分自身しっかりやっていかないといけないと思っています。

 ─ 世界を見れば、米トランプ政権の関税政策などで世界が分断・分裂しているわけですが、こういう時だからこそ、弱い立場に人に寄り添うという考えは大事ですね。

 杉村 はい。よく多文化共生ですとか、共生、共存という言葉が叫ばれますが、今ほど、このことが求められている時代はないのではないか。

 ややもすると、われわれは米国を中心とする各国の政治の動きや経済状況に左右されてしまいますが、一方で、わたしは忘れてはならないものがあると思います。

 そうした部分を大事に考えていける大学でありたいし、上智大学で学んだ学生や卒業生たちはミッションに沿って考え、行動し、それぞれの道に進んでいってもらいたいと思っています。

 これまでも実際にそうした活動をしてくれている卒業生が比較的多いと思いますし、海外で活躍している方であっても、国内の各地で活躍している方であっても、このミッションを大事にして忘れずに思い出してもらえるような人となりの卒業生を育てていきたいと強く思っています。

続きは本誌で