サステナブルな次世代農業を起点とする超循環社会の実現を目指し、高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の開発・製造・販売および関連する技術サービスの提供を行う名古屋大学(名大)発スタートアップのTOWINGは、同社シリーズBラウンドにおいて、総額約19.4億円の資金調達を実施したことを発表した。

「宙炭」での農業改革へ15者が総額約19.4億円を出資

世界各国では、現状の食料システムを持続可能な形に改善する取り組みが行われている。その中でTOWINGは、農業が抱える課題である“化学肥料依存”や“土壌劣化”などの課題解決に加え、地域における未利用バイオマスの利活用や農地への炭素固定による温室効果ガス削減など、ひとつの資材でさまざまな課題を解決する土壌改良資材として宙炭を開発。その社会実装に向けた取り組みを国内外で進めてきた。

  • 宙炭100%の土壌で栽培される野菜

    宙炭100%の土壌で栽培される野菜(出所:TOWING)

同社によると現在、全国各地での宙炭の試験導入を実施し、一定以上の効果を確認しているとのこと。また宙炭の供給体制構築に向け、地域パートナーと連携した宙炭製造拠点の立ち上げを推進しているといい、2024年に研究開発と量産化を目的に豊橋プラントを稼働させた後、2025年3月には岩手県内に岩手プラントを建設し、4月より試験運用を開始している。また、リジェネラティブ(循環再生型)農業やカーボンクレジットなど、宙炭に関連する周辺事業も手掛けているというTOWINGは、大手グローバル企業や国際協力機構(JICA)、農林水産省などとも連携しながら、持続可能な農業への転換を目指す取り組みを進めているとする。

そんなTOWINGは今般、宙炭に関する技術の高度化や量産を担うプラントの開発・拡充、国内外での事業拡大に向けた採用および組織体制の構築を目的に、計15者より総額19.4億円に上る資金調達を実施。これにより同社の累計調達額は約29.5億円となった。

  • TOWINGのメンバー

    TOWINGのメンバー(出所:TOWING)

  • 資金調達先一覧

    資金調達先一覧(岡田光信氏を除く)(出所:TOWING)

出資者の一員である博報堂は、今回の出資により、同社のマーケティングにおける知見やネットワーク力と、TOWINGが保有する革新的技術を掛け合わせることで、企業のサステナブルな農作物づくりや農業経営における共通価値創造(CSV)などの支援につなげるとする。また両社の連携によって、地球環境に配慮しながら高い生産性を発揮する、新たな農業ソリューションの普及も目指すとした。

今般の資金調達に際し、TOWINGの西田宏平代表取締役CEOはコメントを発表。「世界各地でTOWINGが展開するプロジェクトのニーズがあることを確認しており、できるだけ早くさらなる体制強化を行い、各地で発生している食料生産関連のローカル課題を解決していく」としている。