米Microsoftは5月27日(現地時間)、Windows IT Proへの投稿を通じて「Windows Updateオーケストレーションプラットフォーム」(以下、WUOP)の開発者向けプライベートプレビューを発表した。現在アプリごとに行われている更新プロセスを集約し、Windows Updateを通じて一元的に管理することを目指している。これにより、ユーザーにとってはよりシンプルで効率的なアップデート体験が、開発者にとってはアップデート管理の負担軽減が期待される。

現在のWindows環境では、OSのアップデートはWindows Updateによって提供されるものの、多くのサードパーティ製アプリケーションやドライバは、それぞれの開発元が独自に用意した仕組みで更新されている。この断片化された更新プロセスは、ユーザーにとっては煩雑でわかりづらく、IT管理者にとっては作業負担の増加やポリシー統一の難しさといった問題を引き起こしてきた。また、複数アプリの同時更新によるCPU・ネットワーク負荷の増大、重複通知、更新漏れによるセキュリティリスクなども無視できない。

WUOPは、Windows OSの標準的なアップデート機構の上に構築された新しいAPIと管理基盤である。開発者やIT製品チームはこのAPIを通じて、自社のアプリケーションを「update provider(更新提供者)」として登録することで、次のようなメリットを得られる。

  • エコ効率的な更新スケジューリング:ユーザーの使用状況やAC電源接続、システム負荷、さらにはエネルギー効率の高い時間帯などを考慮し、更新を最適なタイミングで実行できる。
  • 一元化された通知と履歴管理:Windowsネイティブの通知機能を利用でき、ユーザーにとって自然で一貫した通知体験を提供する。また、更新履歴も「設定」画面で確認可能となる。
  • 管理者向けポリシー統合:アプリや管理ツールは、期限や通知に関する管理者ポリシーをサポートする。
  • 共通のログ・診断情報:すべての更新ログが統一され、トラブル時の原因特定が容易になる。
  • パッケージ形式の柔軟性:MSIXやAPPXだけでなく、Win32アプリケーションなどカスタム実装にも対応可能。

ユーザーやIT管理者にとっては、アプリケーションやドライバの更新に伴う作業中のパフォーマンス低下やバッテリー消費を抑えることができる。また、アップデート通知がWindows Updateに統合されることで、一貫性のあるシームレスな体験が得られ、「設定」アプリ内でアプリのアップデート履歴を確認できるようになり、情報が一カ所に集約される。

WUOPが広く採用されれば、長年の課題であったWindowsのアップデート体験の断片化が解消され、よりユーザーフレンドリーで管理しやすいエコシステムが実現する可能性がある。

しかしながら、Microsoftは過去にもMicrosoft Storeを通じてアプリのアップデート管理の集約を試みたが、すべてのアプリがMicrosoft Storeに対応していないのが現状である。特に企業は自社の基幹業務アプリを個別に管理・更新することを好む傾向がある。今回のブログ投稿では、従来のソフトウェアのダウンロードや単独アップデートの今後については明言されていない。