ヤマハは、企業向けルーター「RTXシリーズ」の新製品として、従来モデル(RTX830)との互換性を維持しつつ性能を向上し、ローカルブレイクアウトの手軽な運用にも対応した、小規模拠点向けギガアクセスVPNルーター「RTX840」を2025年8月に発売することを発表した。
処理性能を大幅に向上させたRTXシリーズ最新製品
クラウドサービスの利用が急拡大する近年、SaaS型業務システムやWeb会議など日々の業務に不可欠な多くのサービスがインターネット経由で提供されており、拠点ネットワークには“多セッション処理能力”と“インターネットへの直接接続(ローカルブレイクアウト)”への要求が高まるばかりだ。ただ一方でIT人材不足も深刻化しており、ネットワークのメンテナンスに要する時間やコストをいかに削減できるかが重要な課題となっている。
そうした背景からヤマハは、従来より提供する企業向けルーターのRTXシリーズにおける新製品の開発に着手。今般のRTX840発表に至ったとする。
なお同製品は、従来モデルのRTX830に対して4倍ものメモリ(RAM)を搭載。NATおよび動的フィルタの最大セッション数を6万5534から15万まで強化し、TCPコネクション処理性能も約30%強化したという。同社はこれにより、従来製品では性能が不足していた環境においても処理性能不足を解消し、将来に向けても安定した通信環境を実現できるとしている。
ローカルブレイクアウト機能を標準搭載
また、クラウドサービスの利用拡大に伴う課題として、各拠点ルーターからセンタールーター経由の通信が増大し、センタールーターの帯域不足による通信障害リスクが顕在化している中、その対応策として需要が高まる、拠点ルータ―からセンタールーターを経由せずインターネットへ直接接続する“ローカルブレイクアウト”についても、新製品では通信先リスト(IPアドレスまたはFQDNで定義可能)による同機能を標準搭載しているという。
設定が容易かつ、面倒なメンテナンス作業が不要だというRTX840では、特定のクラウドサービスが定義されている最新の通信先リストに、無償でヤマハ管理サーバーから定期的に自動で配信されるため、利用開始時に作製した設定を変更することなく、常に最新情報に基づいた通信制御が可能とのこと。さらに、ユーザーが独自に定義したサービスもローカルブレイクアウトの対象とできるといい、管理者の運用負担軽減に貢献しながら、拠点での安定したネットワーク環境を実現するとしている。
なお、RTX840が発売される2025年8月ごろには、情報処理推進機構(IPA)が策定した「セキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(JC-STAR)」レベル1への適合を表明することが予定されており、企業や公的機関における導入検討の時間を短縮させるとする。また、従来シリーズ製品であるRTX830から性能や機能を大幅に強化しているものの、筐体サイズや対応回線、搭載インタフェースなどはすべて同等で、設定も引き続き使用できるため、置き換えが容易である点も特徴だという。
ヤマハはRTX840の希望小売価格を12万1000円(税込)としており、年間5万点の販売計画を掲げている。同社は新製品の提供により、クラウド利用前提のネットワーク環境に最適な拠点ルーターとして、企業のネットワーク基盤強化に貢献するとしている。