大阪公立大学は、冷蔵保存してもご飯のおいしさが保たれる新しい炊飯方法の開発をめざし、電気炊飯器で炊いたご飯と「過熱水蒸気」を用いて炊いたご飯を冷蔵した後に、おいしさについての官能評価試験を実施。その結果、過熱水蒸気で炊いたご飯の方が柔らかくツヤがあり、実験参加者が高い満足度を示したことを、5月23日に明らかにした。

  • 過熱水蒸気と電気炊飯器で炊いたご飯の微細構造の比較画像
    (出所:大阪公大Webサイト)

同成果は、大阪公大大学院 生活科学研究科の石橋ちなみ講師、同・竹中重雄教授、エースシステムの共同研究チームによるもの。詳細は、食品に関連する科学分野の全般を扱う包括的な学術誌「Food and Humanity」に掲載された。

日本人の主食であるご飯は、冷えると硬くなり、炊きたてのおいしさが失われてしまうのは誰もが知るところだ。これは、ご飯に含まれるデンプンの「老化」と呼ばれる現象により、粘度が低下するためである。

常に炊きたてのご飯を食べられれば最良だが、コンビニエンスストアや弁当屋、スーパーなどで流通するおにぎりやお弁当のように、保存性や安全性の観点からご飯を冷蔵保存する必要がある場合も多い。このように、食品産業においてご飯の冷蔵保存は不可欠であり、冷蔵保存してもデンプンが老化しにくく、おいしさを保てるご飯を実現する技術の開発が強く求められている。

過熱水蒸気とは、100度で蒸発した飽和水蒸気を常圧で100度以上に加熱した気体状態の水のこと。乾燥や焙煎処理、殺菌、酵素の不活化など、多岐にわたる分野で活用されている。近年、この過熱水蒸気が持つ高い加熱能力に着目し、その特性を活かした新たな調理・加工技術への関心が高まっている。そこで研究チームは今回、デンプンの老化を抑制する新しい炊飯方法の開発を目指し、過熱水蒸気で炊いたご飯のおいしさを評価し、そのメカニズムの解明を試みることにした。

今回の研究では、20歳から22歳までの男女29名が実験に参加し、過熱水蒸気で炊いたご飯と電気炊飯器で炊いたご飯の冷蔵後のおいしさについて、人の五感を活用した評価手法である官能評価試験が実施された。その結果、過熱水蒸気で炊いたご飯は、電気炊飯器で炊いたご飯と比較して、冷蔵(4度で24時間)後も柔らかさやツヤが保たれ、総合的な満足度が高いことが明らかにされた。

過熱水蒸気で炊いたご飯の冷蔵後における老化の程度も、詳細に分析された。その結果、電気炊飯器で炊いたご飯と比較してデンプンの老化が約65%に抑制されていることが確かめられた。

さらに、ご飯内部の微細構造が走査電子顕微鏡を用いて詳しく観察された。その結果、過熱水蒸気で炊いたご飯は多孔質な構造を持つことが判明した。この多孔質な構造によって水分がより細かく均一に分布し、結果としてデンプンの老化が効果的に抑制されたことが推察されるとした。

今回の研究成果は、冷蔵保存してもご飯のおいしさが保たれる新しい炊飯方法を提案するものであり、食品加工分野における新たなご飯関連製品開発の基盤技術になるという。研究チームは今後、冷凍や調味米飯への適用など、さまざまな製造・保存条件下における過熱水蒸気を利用した米飯の調理・加工特性の解明を進めていくとのこと。