
バズワードに振り回されず、物事の本質を見抜け!
リンクアンドモチベーション会長・小笹芳央
パーパス、ジョブ型、働き方改革、ワークライフバランス、キャリアデザイン、リスキリング……。
近年、経営の流行り言葉、いわゆるバズワードが多く見受けられるようになりました。これらの趣旨を否定するつもりはありませんが、物事の本質を見抜いていかないと、これらバズワードに振り回されるだけだということを強く感じています。
例えば、女性活躍推進が叫ばれるようになって久しくなりますが、性別にかかわらず、誰もが個性を発揮できる社会こそが本来目指すべき姿です。また、「女性管理職の比率を30%まで引き上げる」などの数値目標も、なぜ30%なのか? という本質を見抜くことなく表層的な流行に踊らされることは、企業にとっても働く個人にとっても大きな損失であると思います。
日本企業を見ていると、実は数値目標の達成のためだけに、女性管理職の登用を急ぐ企業も散見されます。いつしか手段が目的化し、目標達成にとらわれて本末転倒になっている企業は本当に多いです。
そこで今回、わたしがリクルート時代から40年をかけて、組織人事の世界で見てきた本質とは何か? そして、バズワードに惑わされず、物事の本質にたどり着くために何をするべきか? について、わたしなりの考えをまとめました。
物事の本質を見抜くことができれば、どんな環境変化があったとしても生き抜くことはできるはずです。皆さんがそうしたヒントを得られるように、本著は経営者だけでなく、管理職の方や一般のビジネスパーソンにも読んでもらえるような構成になっています。
バブル崩壊以降、”失われた30年”といわれる中で、日本企業は強みに対する自信を喪失し、欧米流の経営手法の導入を進めました。ですが、結果として期待されたような成長を実現することができませんでした。この間、様々な人たちが、それぞれの立場、それぞれのポジショントークでいろいろなことを言い始めるのですが、事の本質は”One for All, All for One”(「組織成果」と「個人の欲求充足」の同時実現)であり、これは企業が永遠に追求すべきテーマだと思っています。
また、わたしは20年ほど前から「アイカンパニー」という言葉を提唱してきました。一人ひとりが自分株式会社の経営者になったつもりで経営戦略を考え、自らの強みを発揮するために、自立的かつ主体的に自分のキャリアをマネジメントしていくことが必要だということです。
現代の日本では、こうした意識が十分に浸透しているとは言い難いと考えています。だからこそ、企業も個人も自立心と主体性を持つことが、今後ますます求められていくのだと思います。
『組織と働き方の本質 迫る社会的要請に振り回されない視座』小笹芳央著
日経BP・日本経済新聞出版 定価1980円(税込)