日本オラクルは5月13日、業務アプリケーションにおけるAIエージェントの最新動向に関する説明会を開催した。同社は2024年に約50のAIエージェント機能を発表し、現時点で38のAIエージェント機能を利用できる。

今年2月には、業務アプリケーション・スイート「Oracle Fusion Applications」に新たに組み込まれた「サプライチェーン」「人事」「営業」のAIエージェントを発表した。

インフラからアプリまでオラクル一社でAIを提供可能

理事 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 インダストリーSE本部 本部長 中山耕一郎氏は、「当社のAI戦略はインフラとアプリケーションの2面を対象にしている点で他社と異なる」と述べた。同社はインフラ、データプラットフォーム、AIサービス、アプリケーションのスタックで企業向けのAIを提供している。

  • 日本オラクル 理事 クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 インダストリーSE本部 本部長 中山耕一郎氏

さらに、中山氏は同社しか提供できない技術として「OCI Supercluster」を挙げた。これは、最大13万1072基のNVIDIA Blackwell GPUを搭載可能なコンピューティングクラスタ。データベースの並列処理の機構を開発する中で、AIの並列処理への応用に成功したことで「OCI Supercluster」が生まれたという。

AIエージェント、エージェンティックAIの違い

昨年辺りから、生成AIの先の話として、「AIエージェント」「エージェンティックAI」という概念が語られるようになってきた。中山氏は「エージェンティックAIはいろいろな意味で使われている」と語りながら、以下のCohereの定義を引き合いに出し、「エージェンティックAIは人間の行為を模倣する場合に使われていることが多い」と説明した。

生成AI

与えられた入力に基づいてテキスト、画像、音楽などのコンテンツを生成することに特化したAI技術。

AIエージェント

特定の環境やユーザーと相互作用しながら、タスクや目標を達成するように設計されたシステム。自律的に行動し、環境から情報を収集し、学習し、意思 決定を行うことができる。生成AIはAIエージェントの機能の一部として組み込まれることもある。

エージェンティックAI

AIエージェントの概念を説明するために使用される場合もあるが、通常はより狭い意味で適用される。自律性、意図性、およびエージェンシーに関連する概念に重点を置くときに使用される。 エージェンティックAIは、人間の仕事を代理すること、また、その意思決定プロセスを模倣または再現を目指す際に利用される。自発性、計画、学習、および環境との複雑な相互作用を実現するAIシステム。

Oracle Fusion Cloud ApplicationsのAIエージェントの強み

オラクルは顧客のニーズに合わせて、3つのAIエージェント・ソリューションを提供している。具体的には、自社でAIエージェントを作成するためのソリューション、オラクルが事前に定義したAIエージェント、AIエージェントが組み込まれたアプリケーションを提供している。

  • オラクルのAIエージェント・ソリューション

Oracle Fusion Cloud ApplicationsのAIエージェント・ソリューションは、AIエージェントが組み込まれている。同ソリューションは「作成」「回答」「実行」というタスクを実行できる。

中山氏は、Oracle Fusion Cloud ApplicationsのAIエージェントの特徴として、以下5点を挙げた。

  • OCIによるイノベーションの速さ
  • SaaSアプリケーションの標準ビジネスプロセスに組み込まれて提供され、ビジネスプロセスがAIエージェントによって進化する
  • ERP内の最新データをAIにフル活用できる
  • 新たなエージェント・ワークフローを拡張できる
  • 追加費用が不要

「他社のAIエージェントは支援を行うコパイロットが多いと見ているが、当社のAIエージェントはSaaSの標準プロセスに組み込まれて提供される。われわれはビジネスプロセスをAIによって自動化して進化させることに取り組んでおり、他社とはアプローチに大きな差がある。また、単一のデータベースの下で業務アプリケーションを提供していることもAIエージェントにおいて生きている」(中山氏)

AI Agent StudioでAIエージェントの作成・展開・管理を実現

今年3月、AIエージェントとワークフローの作成・展開・管理できるプラットフォーム「Oracle AI Agent Studio for Fusion Applications」が発表された。

同製品は、ビジネスプロセスを自動化できるよう、複数ステップのAIエージェントを事前定義したテンプレートを50以上提供する。テンプレートは、外部サービスや既存サービスと連携できるよう、API連携や認証連携などが組み込まれている。

LLMは、オラクルが最適化したもの、ユーザーが作成したものなど、目的に応じて選択可能。今夏にはユーザーが任意のテンプレートを作成することが可能になるという。

  • 「Oracle AI Agent Studio for Fusion Applications」の概要

自然言語によって指示を出す形でAIエージェントを利用するアプローチをとるベンダーもいるが、オラクルはテンプレートを組み合わせてテンプレートを組み合わせてAIエージェントを構築し、ビジネスプロセスを自動化するというアプローチをとる。

ガートナーがこのほど、「AIエージェント」と「エージェンティックAI」の見解について発表したが、まだまだこれらは発展途上の技術といえ、導入にあたっては、検討を重ねる必要があるだろう。