東日本電信電話(以下、NTT東日本)は5月9日、2024年度の決算について記者説明会を開いた。営業収益は対前年451億円減の1兆6654億円、営業利益は851億円減の2135億円と、減収減益で着地した。
代表取締役社長の澁谷直樹氏は「2024年度から2027年度までの中期事業計画において、2024年度は12連続の増益から一度しゃがんで稼ぐ力を復活させるための重要な年と位置付けていた。結論から言えば、非常に良いスタートが切れた年になった」と振り返った。光サービスのシェア回復、法人ビジネスの成長、新たなビジネス拡大をそれぞれ重点施策とし、いずれも計画に対し順調に進捗したとのことだ。
主要ビジネス領域では着実に弾込め
光サービスは大画面で映像やゲームを楽しみたいという需要が高まり、10ギガ(Gbps)インターネット接続サービス「フレッツ光クロス」の提供エリアを拡大した。その結果、2024年度予想の5万回線に対し、7.5万回線の純増を達成。戸建てシェアは下げ止まりが見られた。
しかしマンション・集合住宅では光サービスのシェアが引き続き減少している。そこで同社は2025年度より大手賃貸物件との戦略的提携を強化し、全戸一括で10ギガサービスを導入するなど効率的なシェア拡大を図る。2025年度には10万回線まで回復させる予定だ。
法人ビジネス事業では以前、クラウド化や仮想化、ゼロトラスト化といった高難易度な案件が増加したものの、社内で対応可能な人材が不足していたことにより受注につながらない課題を抱えていた。
およそ2年間をかけて組織体制を見直し、1000人規模の専門人材を育成することで、法人ビジネスが伸長しつつある。また、高収益が見込める顧客をロイヤルカスタマー化し高度なスキルを持つ専門人材を集中させたことで、収益性も向上した。収益は2024年度の業績予想1900億円に対し2100憶円を達成。
2025年度は自治体ネットワークのクラウド化やAIデータセンター向けのネットワークの需要などを受注につなげ、さらに100億円増の2200億円を計画している。
ネットワーク市場の需要は引き続き旺盛
ネットワークに関してはコンシューマー向け、法人向け、ハイパースケーラー向けのそれぞれの領域で需要が高まっている。低コストかつ短納期での対応、セキュリティの強化、他拠点の一括対応など、顧客の要求が高度化する中で、NTT東日本が強みとする地域密着でのエンジニアリングが受注の追い風になっているそうだ。
「日々進化するお客様のニーズをいち早く読み、市場の変化に先手先手で対応することでネットワーク技術をさらに成長させていきたい」(澁谷氏)
同社は今後、既存のアセットをAI時代に対応するデジタル基盤にアップデートする。「自社で提供するアセットと、世の中のアセットをオープンに活用する部分を戦略的に組み合わせていく」(澁谷氏)としており、デジタル社会を支えるネットワークはIOWNといった技術と現場のエンジニアリングによって強化する。一方で、AIを支えるネットワーク基盤はシェアリングしながら提供する。
ビジネス向けフレッツ光クロス(10ギガ)、6月めどに提供開始
澁谷氏は「2025年度は、2024年度を底として安定的な増益基調を確実なものとする重要な年」と述べ、具体的な3つの取り組みを紹介した。
まずは、ビジネス向けのインターネット光回線「フレッツ光クロス」。コンシューマー向けと比較して、帯域確保による安定した通信やSLA(Service Level Agreement:サービス品質保証)、障害発生時の24時間以内の駆けつけなど、高信頼性を付加した光回線を6月ごろに提供開始する予定だ。
2つ目は、4月に提供開始した、自治体業務の効率化に特化した生成AIサービス。同サービスでは、生成AIの導入や活用に関するスキルを持つ人材がいない自治体に対し、導入準備やコンサルティング、通信環境の整備、職員向け研修、利用者の伴走サポートまで、幅広い業務範囲を支援する。
3つ目は、海外にはこれからブロードバンド市場が立ち上がる国も多いことから、海外事業を強化する。NTT東日本は4月、インドネシアを拠点とするSURGEグループのWeaveへ戦略的出資を決定。NTT東日本が培った現場密着のエンジニアリングを海外で応用し、10年以内に1000万以上の光回線契約を目指す。