
AI向けデータセンターの整備を加速するのが狙い
金融市場が混迷を極める前に決定した巨額投資の行方は――。
ソフトバンクグループ(SBG)は3月31日(米国時間)、生成AI(人工知能)「チャットGPT」で知られる米オープンAIに最大400億ドル(約6兆円)を追加出資すると発表した。
米CNBCテレビによると、未上場のIT企業における1回の資金調達では過去最高額となる。400億ドルのうち、100億ドルは外部の投資家から募るという。
SBGは追加出資により、AI向けデータセンター(DC)の整備を加速する狙いがあるとみられる。
今年1月には、SBG会長兼社長の孫正義氏とオープンAI最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマン氏がトランプ米大統領と共同で会見し、米国におけるAIのインフラ整備に4年間で約78兆円を投資すると表明。孫氏は「これは米国の黄金時代の始まりだ」とトランプ氏の政策を礼賛し、トランプ氏は孫氏を「偉大なリーダーであり、投資家だ」と持ち上げた。
だが「権力者の懐に入ることにかけては天才的」(業界関係者)と評される孫氏も、トランプ氏が世界経済を大混乱に陥れることまでは想像していなかったかもしれない。
4月3日に25%の自動車関税を発動し、トランプ氏が貿易相手国と同水準まで関税率を引き上げる「相互関税」も課すと打ち出したことで景気後退の懸念が急速に台頭。4日にはダウ平均株価が暴落(前日比2231ドルの下落)して、1日の下落幅としては過去3番目の大きさを記録した。
その後、トランプ氏が相互関税を90日間停止すると発表したことで株価が値を戻す場面もあったものの、「朝令暮改を警戒する投資家は少なくない」(証券アナリスト)。オープンAIのような有望企業と言えども、リスクオフの潮流に押される恐れは拭えない。
SBGの業績は、投資先の新興企業を取り巻く環境に大きく左右されてきた。生成AI分野では、中国ディープシークなどの攻勢も激しい。孫氏の胆力と舵取りがこれまで以上に試されることになりそうだ。