ニュータニックス・ジャパンは4月16日、都内で記者説明会を開催した。説明会では米国本社からプレジデント兼CEOのRajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)氏が来日し、プレゼンテーションを行った。

国内で採用進むNutanix Cloud Platform

まず、ニュータニックス・ジャパン コーポレートバイスプレジデント兼代表執行役員社長の金古毅氏は「他社のハイパーバイザーから当社のハイパーバイザー『AHV』へスムーズに移行している」と述べ、倉敷中央病院やSTNet、東海理化などの事例を紹介した。

  • ニュータニックス・ジャパン コーポレートバイスプレジデント兼代表執行役員社長の金古毅氏

    ニュータニックス・ジャパン コーポレートバイスプレジデント兼代表執行役員社長の金古毅氏

さらに、同日にはTISが金融業向けのクレジットカード基幹システムに、JR北海道が鉄道のオペレーション、保線、ロボットによるプロセス自動化(RPA)、人事などのコアなアプリケーションにハイブリッド/マルチクラウドインフラストラクチャを構築するソリューション「Nutanix Cloud Platform」(NCP)をそれぞれ採用したことを発表。

また、日本独自のコンサルティングメニューとして「Nutanix Kubernetes Platform コンサルティングサービス」の提供も併せて発表した。クラウドネイティブのモダンアプリケーション開発・ライフサイクル管理を目指す企業を技術支援し、上流(設計)から下流(構築)までのトータルコンサルティングサービスに加え、Nutanix Enterprise AIとの統合環境を後押しする。

  • 「Nutanix Kubernetes Platform コンサルティングサービス」の概要

    「Nutanix Kubernetes Platform コンサルティングサービス」の概要

続いて、ラマスワミ氏が登壇。同氏は多くの企業のCIO(最高情報責任者)と対話を重ね、その結果から導き出したCIOの関心事として「インフラストラクチャのモダナイズとBroadcomリスクの低減」「アプリケーションのモダナイズでビジネスをトランスフォーム」「エンタープライズAIの実現」の3つを挙げている。

  • Nutanix プレジデント兼CEOのRajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)氏

    Nutanix プレジデント兼CEOのRajiv Ramaswami(ラジブ・ラマスワミ)氏

ラマスワミ氏は「多くの経営層は最新で効率的なインフラをどのように展開し、BroadcomによるVMwareの買収からビジネスへのリスクをどのように減らすかを検討している。また、最新のアプリケーションを構築してデータを活用し、競争優位性を本当に得ることが重要であり、そのうえでエンタープライズAIをどのように展開していくかを考えている。その点、われわれは単一のプラットフォームでこうした課題を支援している」と、力を込めた。

Nutanixが注力する3つの領域

インフラストラクチャのモダナイズとBroadcomリスクの低減については、グローバルにおいて大手金融サービス企業は1年間で2万4000のVM(仮想マシン)を、Fortune 500に名を連ねる保険会社(移行継続中)は9カ月で1万2000のVMをそれぞれVMwareからNutanixに移行しており、四半期で700以上の新規顧客を獲得したという。

  • グローバルにおけるVMwareからの移行実績

    グローバルにおけるVMwareからの移行実績

また、これまでのHCIノードに加え、昨年5月に年次カンファレンス「.NEXT 2024」で発表した「Nutanix Cloud Platform for Dell PowerFlex」はコンピュートはNutanixのハイパーバイザー「AHV」、ストレージはPowerFlexでNCPに統合し、外部ストレージにも対応するなど、移行に際する拡張性も備えている。

アプリケーションのモダナイズでビジネスをトランスフォームに関して、ラマスワミ氏は「最新のアプリケーションを構築・展開するための標準はKubernetesとコンテナだ」と断言する。

そのため、Kubernetesを使用したコンテナベースアプリケーションの管理を簡素化する「Nutanix Kubernetes Platform」(NKP)がカギを握るという。同プラットフォームも.NEXT 2024で発表し、VMとコンテナを同じ環境で実行できる。また、EKS(AWS Elastic Kubernetes Service)、GKE(Google Kubernetes Engine)で開発者が要求するKubernetes環境を一貫して導入、管理、保護、運用を可能としている。

  • 「Nutanix Kubernetes Platform」(NKP)の概要

    「Nutanix Kubernetes Platform」(NKP)の概要

同氏は「オープンAPIでベンダーロックインを回避し、ポータビリティを保証することで完全なオープンソースを体現し、主要なパブリッククラウドとも統合している。ネットワークやセキュリティ、オブザーバビリティ、バックアップなどもプラットフォームの一部として組み込まれている」と、そのメリットを説く。

エンタープライズAIの実現に向けてラマスワミ氏は「最新のAIアプリケーションの基盤は何かといえばKubernetesだ。エンタープライズAIを使用して、最新のアプリケーションを実行できるようにするためには、Kubernetesプラットフォームが重要」と話す。そのようなことから、Kubernetes上で稼働し、オンプレミスまたはパブリッククラウド上への幅広い生成AIモデルの展開を支援するエージェント型モデルプラットフォーム「Nutanix Enterprise AI」(NAI)が肝となる。

同サービスは昨年11月に発表し、主要なLLM(大規模言語モデル)プロバイダから選択したLLMをデプロイできる環境を提供するほか、生成AIアプリケーションを接続するためのAPIを作成・管理できる機能も備えている。ユースケースとしては不正検出や文書検索・分析、カスタマーサポート、コード・コンテンツ生成、プロセスの自動化などを挙げている。

  • 「Nutanix Enterprise AI」(NAI)の概要

    「Nutanix Enterprise AI」(NAI)の概要

富士通のLLMを「Nutanix Enterprise Cloud」で提供

そして、同日に富士通とNutanixは富士通の企業向けLLM「Takane」がNAIとNCP上での動作検証を完了し、認定LLMとしてTakaneの利用が可能になったと明らかにした。日本語に特化したLLMがNAIに対応するのはTakaneが初だという。

両社の関係は、2019年に当時のPCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」に、Nutanixが提供する仮想化ソフトウェア「Nutanix Enterprise Cloud OS」を搭載した仮想化統合基盤「Nutanix Enterprise Cloud on PRIMERGY」の国内販売を開始したことにさかのぼる。

NAIに搭載したTakaneは、エフサステクノロジーズの仮想化統合プラットフォーム「PRIMEFLEX for Nutanix」を通して提供し、パブリッククラウドにデータを出せない業務領域や、法規制、業界ルールへの準拠が求められる業務において高品質・高信頼なインフラストラクチャの構築を支援するとのこと。

富士通 執行役員専務の古賀一司氏は今回の取り組みについて「お客さまは日本語と日本の商習慣に最適化されたLLMを業務に活用できるようになり、自社専用のLLMの導入、運用、管理が容易にできるようになる。生成AI活用時にお客さまが課題と考えているデータの秘匿性や法規制、業界のルールなどパブリッククラウドにデータが出せないという企業も多く、こうした領域への対応が可能になる」と説明した。

  • 富士通 執行役員専務の古賀一司氏

    富士通 執行役員専務の古賀一司氏

なお、富士通はTakaneが搭載可能なNAIをマネージドサービスとして7月から提供開始を予定している。

  • NAIの認定LLMとしてTakaneの利用が可能になった

    NAIの認定LLMとしてTakaneの利用が可能になった

また、ハイブリッドクラウドの運用最適化オファリング「Fujitsu Cloud Managed Service」においても、NCP上で稼働するクラウド環境を一元管理し、Takaneを含むクラウド環境の高度な運用をサポートしていく考えだ。