トレンドマイクロ創業者・会長、ミンイー財団創設者・スティーブ・チャンが語る「『パソコンのウイルス対策』から『花粉症』の対策へ」

パソコンのウイルス対策から花粉症の対策へ─。これが今の私の活動です。いま私は薬を使わずにスマートフォンを通じて花粉症の緩和にアプローチするプログラムを提供しています。今や日本人の半数超が悩まされている花粉症。中でも中等度以上の花粉症に悩む人は約2000万人いると言われています。

 大半の人は対処法として薬を服用していると思いますが、薬の服用も副作用があったり、年々効果が薄れていったりするなど悩みは解決されません。私も花粉症で苦労していました。そんな私が約20年前にウイルス対策ソフト「ウイルスバスター」を提供するトレンドマイクロのCEOから退き、企業を成長させて利益を創出するビジネスの世界と距離を置きました。

 お金を稼ぐことは自分のミッションではないと考えた私が自分の次なる道として導いたことは「解決法のない世界にソリューションを提供し、自分が知らない人に対しても何らかの力になりたい」というものでした。その具体的なテーマの1つが花粉症対策だったのです。

 私が立ち上げたミンイー財団は世界のNPO法人を支持し、価値ある社会貢献活動の機会を後押ししています。東洋医学とテクノロジーを掛け合わせた「MyRelief(マイリリーフ)」も社会貢献の一環として提供されているサービス。きっかけは8年前、台湾大学のアレルギー研究の専門家と知り合ったことでした。

 彼の研究内容は特定の図形に指を触れることで「経絡」を巡る「気血」の流れをサポートして花粉症の症状を緩和へと導くというもの。そもそも人間の身体には経絡というエネルギーの通り道があって、その中を気血がスムーズに流れることによって体が健やかな状態に調整されると東洋医学では言われています。そして古来、色彩療法など特定の色や図形を見たり、触れたりするセラピーが心や体に深く働きかけることが研究されてきました。マイリリーフはその一連の仕組みと似ています。

 スマホの画面を通じて、特殊技術でデザインされたグラフィックスの上に指を3分45秒間触れることでアレルギーによる鼻・目・喉の不快感を軽減することができるのです。もちろん、全てのバイオマーカー(疾患の診断基準や治療の効果を判定するための検査項目や生体内の物質)が明らかになっているわけではありません。そこは今後の研究課題であると思っています。

 しかしながら、日本で正式にローンチしてから既にマイリリーフの利用者は3万5000人を超えています。また、ユーザーのうちの約70%から「症状が緩和した」といった反応をいただいています。公式LINEで友だち登録するだけで誰もが無料で使えますから、ユーザーの数を少しでも早く、多く増やしていきたいと思っています。

 私が共感する日本人に先般亡くなられた元一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生がいらっしゃいます。先生は「人間関係から生まれる創造性の価値こそが大事だ」と説かれていました。この理論にはとても感銘を受けました。その意味では、私がこれまでのビジネスで得たメソッドを社会貢献に広げていくことが大事だと思っています。

 しかし、社会貢献と一言で言っても実践は難しい。それでも、困難は乗り越えなければなりません。マイリリーフに関しては1つでも多くのデータを集めてアップデートを繰り返し、未知な部分のバイオマーカーを明らかにするための研究所も設立していきます。全財産を投じて1人でも多くの人に役立つサービスに高めていきたいです。

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