東北大学総長・冨永悌二「国内外の優秀な研究者を惹きつけ、新たな研究大学の姿を示していきたい」

「仙台市街に位置するすべてのキャンパスを共創空間、イノベーションの場としたい」。東北大学は政府が設けた10兆円規模の大学ファンドの運用益で支援する「国際卓越研究大学」の第1号に正式認定された。最長25年にわたる助成を受けることで、世界トップレベルの研究力の構築を目指していく考えだ。

 日本の研究力の国際的な位置づけを見ると、10年前と比較しても総論文数の国際的な順位が世界3位から5位に転落するなど低下傾向にある。中でも質の高いTop1%論文数における日本の順位は7位から12位にまで下がってしまっている。

「海外の有力研究大学は多額の自己資金を潤沢に持っており、その運用益を自分たちが望む優れた研究者の招聘や独自の研究、教育に充当している」。しかし、日本では国からの運営費交付金が法人化以降年々減少し、近年は横ばいだが、物価高騰を考えると目減りする。また国立大学は単年度損益均衡会計が原則で制約も多く、大学自身が自ら資金を得て運用する風土がなかった。

「本学も25年後には大学独自の基金を運用し、その運用益で自分たちの研究や教育ができる大学に成長したい。産業界と大学も密接につながり、我々が知の価値を提供し、それを産業界の方々と共に社会的価値に変えていく。その過程で生まれる資金を使って、もっと優秀な研究者を招き、もっと素晴らしい研究を推進するといった知的価値創造の好循環を生み出したい」と意気込む。

 東北大は海外の大学との人材獲得競争に負けないように、助成の約8割を国内外の研究者の人件費などに充てる方針。また、研究成果を社会に還元する体制も強化する。昨年10月には、研究手法の統合、データ駆動型研究と人文学の統合による「統合日本学センター」などを設置。今年4月には医学部とは独立した「医学イノベーション研究所」も開設する。

 また、投資を呼び込む点では「仙台市のような人口100万人規模の都市は非常に研究や教育に向いた都市」と強調。昨年4月に稼働を開始した次世代放射光「ナノテラス」も青葉山新キャンパス内にある。仙台市街地にほとんどのキャンパスが設置されており、都市部の全キャンパスをイノベーションの場とする取り組みも加速させる。

 もともと東北大は1907年に宮城県と民間が資金を投じて設立された経緯を持つ。そのため、「門戸開放」がDNAの1つ。今回の正式認定は通過点。「例えば医療分野で、課題先進地の東北地方で課題を克服するためのイノベーションを生み出すことができれば、それを世界に展開できる」と未来に目を向ける。

Grand Central(グランドセントラル)代表取締役CEO・北口拓実が語る「コンサルと営業代行の融合で営業領域のインフラ企業へ」