名古屋工業大学(名工大)とGOCCO.は3月27日、室内の電波環境を改善するインテリアパネルとして、メタサーフェスを内蔵した1mm厚の薄型パネル「メタッパネ」を共同開発したことを発表した。
同成果は、名工大 電気・機械工学類の若土弘樹准教授、同・安在大祐准教授らの研究グループとGOCCO.の共同研究チームによるもの。
若土准教授の研究室では、電磁材料メタサーフェスを用いることで、電波の流れを人工的に制御するための研究を進めており、その中でも特に、電子回路部品を組み込むことで自然界に存在する材料からは得られない応答を作りだしているという。また一方で安在准教授の研究室では、電波環境のモデリングに基づいた無線通信技術や無線センシングのための研究に取り組んでいて、特に生体電磁環境に基づいた高信頼性の無線通信技術や位置計測技術の研究に取り組んでいるとする。
そして今回名工大の両研究室は、GOCCO.が独自に開発している銀インク印刷技術を用いて作成したメタサーフェス(人工的に作られた表面を指し、反射した電磁波の反射位相を制御できる)を内蔵したインテリアパネルを開発。微細な複数金属粒子を含有する銀を主とした独自の導電インクを用いるこの印刷技術は、加工性に優れているといい、その活用によって、精密な製造工程を経ることなく、効率的に電波を強化する1mm厚のパネルが完成したという。
研究チームは、メタッパネの軽量化・薄型化を見据え、紙基材を使ったメタサーフェスを設計・作成し、反射特性の測定を実施したとのこと。そして電波暗室での実験結果において、家庭用Wi-Fiを想定した5GHz Modelでは、30°の設計角度で、電波を吸収せずに反射する金属板に比べて約6dBm(4倍)の増幅が確認されたとしている。
また、第5世代移動通信システム(5G)を想定した28GHz帯では、θi=0°の時に30°の設計角度で、θi=10°の時に40°の設計角度で、電波を吸収せずに反射する金属板に比べて約10dB(10倍)もの増幅が観測されたとした。
研究チームによると、これらの結果および反射角度を任意に設計できるメタサーフェスの特性により、複数の反射角度のメタッパネを組み合わせることで、任意の場所に強電波ゾーンを作り出すことも可能だとする。なお同製品は、一般的な家庭用Wi-Fiに対応した5GHzモデルと、5Gに対応した28GHzモデルの2種類を展開しており、さらに次世代帯域への適用に向けて開発を進めているとのこと。その実現により、建物内で電波が届きにくい場所の補佐や、無線大容量通信を必要とする場所での電波設計を、パネルを貼るという手軽な作業で実現できる可能性があるという。
メタッパネは、表面は自由にビジュアルやグラフィックを表示可能なため、美しさと機能性を兼ね備えたアートパネルとしても活用でき、機能性インテリアの新たなカテゴリ創出につながるとする。また同製品で用いられているメタサーフェス技術は、建築材料としても展開が可能だといい、機能性建材の市場にも貢献できると期待されるとのこと。研究チームでは今後、メタッパネの専用アプリケーションで室内の電波設計を行い、適したメタサーフェスパターンの自動設計や製造までを担うサービスの開発に取り組んでいくとしている。