シスコシステムズ(シスコ)は3月26日、AIセキュリティ戦略に関する記者説明会を開催した。説明会には、シスコシステムズ 代表執行役員社長の濱田義之氏、米シスコ セキュリティ ビジネス グループ バイス プレジデントのDJ サンパス、Business Development Manager/Robust Intelligence 日本事業責任者の平田泰一氏が登壇。AI利活用をより促進するためのシスコのAIセキュリティ戦略や最新の取り組みの紹介が行われた。
また、ゲストとしてNECのCorporate SVP 兼AIテクノロジーサービス事業部門長 兼AI Research Officerの山田昭雄氏が登壇し、両社がAIガバナンス分野で協業したことを発表した。
Cisco AI Defenseの概要
最初に登壇した濱田氏は、シスコが取り組む中長期戦略として「AI時代のビジネス変革」「テクノロジーので安心・安全につなぐ」「持続可能な未来の創造」を紹介した。
「AI時代のビジネス変革」では、「カントリーデジタイゼーションの推進(政府・自治体・民間企業の DX)」「AIの民主化と保護」「新しい働き方の体現」を実現し、「テクノロジーので安心・安全につなぐ」では「セキュアなネットワークの提供」「ナショナルセキュリティへの貢献」「Splunk との統合で強化されたOne Platform 戦略の加速」に取り組む。
さらに「持続可能な未来の創造」では「次世代の学び方への変革」「デジタル人材育成」「サステナビリティ分野への注力」の3点に注力するという。
シスコは、今年1月15日に米国で開催した年次イベント「Cisco AI Summit」において企業におけるAIトランスフォーメーションを可能にし、安全性を確保する先駆的なソリューションである「Cisco AI Defense」を発表した。
Cisco AI Defenseは、企業が安全なAIアプリケーションを安心して開発、展開できるよう設計されているソリューション。
同ソリューションは、パブリッククラウドおよびプライベートクラウドでシャドーAIアプリケーションや承認済みAIアプリケーションを検出する「AIの検出」、自動化されたテストにより、何百もの潜在的な安全性とセキュリティの問題についてAIモデルをチェックする「モデル検証」、継続した検証により、プロンプトインジェクション、サービス拒否(DoS)、機密データ漏洩などの潜在的な安全性とセキュリティの脅威を継続的に防御する「ランタイムセキュリティ」によって構成されている。
Cisco AI DefenseはSelected Availabilityとして、限定された顧客に対して、日本で3月1から提供開始されている。
さらに、シスコは「AIガバナンス」が当たり前のものとして定着した社会の実現を目指してAIガバナンス協会の立ち上げに参画している。
AIガバナンス協会は、AIに関わるあらゆるステークホルダーが集まるフォーラムとして、適切なリスク管理を通じてAIの価値を最大化する取り組みを行っており、「イノベーションの促進」「マルチステークホルダーでの信頼構築」「社会的な価値の実現」という価値観を重視して活動している。
NEC×シスコ 「Agentic AIのリスク対策」を推進
NECとシスコは、日本企業や自治体のさらなる生成AI活用の推進を目指し、AIガバナンス分野で協業を開始することを発表した。
協業の背景について、山田氏は「Cognitive、Generative、AgenticへとAIが進化するのに合わせて、『AI活用におけるリスク』も変化している。変遷するリスクに対応するには、より高度なリスク管理が必要」と説明した。
NECはこれまでもAIガバナンスを推進しており、業務遂行支援による生産性向上にも貢献している。エージェント時代に向けてより安全・安心なAI環境を実現するために「AIガバナンス」への強化を目指して、シスコとの協業を決めたという。
両社は、今回の協業を通じて「生成AIを誰もが安全・安心に業務に活用できる社会」の実現に貢献する考え。
またこの取り組みの一環として、NECのコンサルティングサービスとシスコが提供するAIセキュリティソリューション「Cisco AI Defense」を組み合わせたNECのAIガバナンスサービスを、金融・製造業や公共機関、自治体を中心とした顧客に向けて、2025年秋に提供開始を予定している。
主な協業内容は「シスコからの技術提供をもとに、NECは『Cisco AI Defense』の先行評価を2025年3月から開始」「NECは『Cisco AI Defense』を活用したコンサルティングサービスを2025年秋から提供開始」「両社はAgentic AIの活用におけるリスクと対応策を検討」の3点。
今後は、シスコとNECで「Agentic AIのリスク対策」を推進し、業務変革に大きな影響を与えるAgentic AI活用を支えていく。