
トランプ大統領の迷走が世界経済を震撼させている。
「アメリカ第一主義」の実現に向けて、トランプ大統領は就任直後から数多くの大統領令等を発出した。
大和総研は「トランプ2.0の主要政策として、①関税引き上げ、②移民規制強化、③政府効率化、④AI規制緩和と投資拡大を取り上げ、「穏健」「リスク」「テールリスク」という3つのシナリオの下で各政策が日米及びグローバル経済に与える影響を定量的に検証している。
結論として、「トランプ2.0」の主要政策は、全体として見れば、個人消費や輸出入を中心とした需要面に加え、労働力や資本ストックといった供給面からも米国経済に悪影響を及ぼすとみられる。穏健シナリオでは経済活動への影響は限定的だが、テールリスクシナリオが発現すると、米国の実質GDP成長率への影響は2025~29年で年率▲1.2%ptと大きい。
日本の実質GDP成長率への影響は最大で年率▲0.9%ptと、ユーロ圏(同▲0.6%pt)よりも下振れする可能性がある。米国経済の影響を強く受ける日本は「トランプ2.0」への警戒がとりわけ必要だ。もっとも、米国が中国などに追加関税を課せば、米国市場ではその他の国の製品に代替需要が発生する。日本がこれを取り込めば輸出の減少幅が縮小し、上記の悪影響が緩和されるだろう。
ちなみに、各シナリオの主な前提条件は、以下の通りだ。関税政策について「穏健シナリオ」では、関税引き上げはあくまで交渉材料として用いられるだけで、実際には対中国で実施済みの10%の追加関税以外は実施されないと想定した。「リスクシナリオ」では、現在実施が延期されているカナダとメキシコに加え、中国に対しても25%の追加関税を実施するほか、自動車や半導体などへの品目別追加関税の実施を想定した。「テールリスクシナリオ」は、リスクシナリオに加え、10%の普遍関税などを想定した。なお、相互関税については本稿執筆時点で詳細が不明であるため、いずれのシナリオにおいても想定していない。仮に幅広い対象国や地域との間で適用されれば、その影響は「テールリスクシナリオ」に匹敵し得るだろう。
このほか、政府効率化省(DOGE)については、トランプ政権幹部の発言や、CBO(議会予算局)試算のより現実的な歳出削減策、すでに開始された人員削減策を参考に各シナリオの想定を作成した。移民政策については、不法移民の流入停止を前提に、主に強制送還のペースで差を付けた。AI関連投資については、投資計画の進捗ペースと、AI導入による生産性向上効果への評価でシナリオを分けている。
以上のシミュレーション結果からみると、トランプ大統領の政策に世界各国が一喜一憂する状態は当面続きそうである。