スウェーデンに拠点を置くエンタープライズソフトウェア企業のIFSは3月25日、中小・中堅企業を中心にITソリューションを提供するソルパックと戦略的パートナー契約を締結すると発表した。

IFSのEAM(Enterprise Asset Management:設備資産管理)サービスである「IFS Cloud EAM」とソルパックの専門性を組み合わせ、主に製造業向けにIFS Cloud EAMの導入、開発、保守サービスの提供を行う。製造業における設備管理のDXを促進させ、設備の安定稼働や運用効率化の実現につなげる考えだ。

同日にTECH+の個別取材に応じたソルパック 取締役 コンサルティング事業部 事業部長の海塩晋史氏は、「少子高齢化による深刻な労働力不足、熟練技術者の急速な退職、そして老朽化した設備の頻発する故障。日本の製造業は今、未曾有の危機に直面している。特に、設備の老朽化による突発的な故障は、生産ラインの停止や納期遅延、そして莫大なコスト損失を引き起こし、企業の存続をも脅かしかねない。設備資産の全体像を把握することは最重要課題で、製造業における持続的な企業成長を後押ししたい」と、IFSとの協業の狙いを語った。

  • ソルパック 取締役 コンサルティング事業部 事業部長 海塩晋史氏

    ソルパック 取締役 コンサルティング事業部 事業部長 海塩晋史氏

EAMとは、企業が保有する設備資産をソフトウェア、システム、およびサービスを組み合わせて、取得から廃棄までのライフサイクル全体を管理し、設備資産の品質と利用を維持、管理、最適化するサービスのこと。

IFS Cloud EAMは、複数の要素やモジュールなどを結合して構成・組み立てができる点が強み。プロジェクトや財務管理、サプライチェーン、フィールドサービスなどのERPやサービスマネジメント機能だけでなく、最適化されたメンテナンス・スケジューリングとも組み合わせることができる。

AI機能も組み込まれており、実際の稼働状況をAIが分析することで、管理対象の資産における予兆検知といった能動的な設備保全も実施できる。

ソルパック コンサルティング事業部 ソリューション営業課長の加賀有樹氏は、「オンプレミスだけでなくSaaSとして提供できることや、ワンパッケージで必要な機能が網羅されておりAPI連携が必要ないこと、AI技術が製品にしっかりと組み込まれていることなど、IFSの製品には新たな可能性を感じる」とIFS Cloud EAMを評価し、「まずは、人手不足が進みDXが遅れている中小企業をメインのターゲットとして、ソリューションを提供していく」と説明した。

  • ソルパック コンサルティング事業部 ソリューション営業課長 加賀有樹氏

    ソルパック コンサルティング事業部 ソリューション営業課長 加賀有樹氏

具体的には、ソルパックのエンジニアがIFS Cloud EAMの導入、開発、保守サービスの提供を行う。「まずは当社のエンジニアがIFSの製品を理解することを徹底し、その上で特定に顧客に対してPoC(概念実証)を提供していく」(加賀氏)とのこと。設備の故障予知や予防保全の高度化、そして最適なライフサイクル管理を実現し、設備の突発停止の防止や保全コストの低減につなげ、設備の稼働率を向上させることを目指す。

両社は公共インフラの管理に関する国際認証「ISO55001」に準拠したシステムを構築し、長年にわたり社会全体を悩ませているインフラ老朽化問題にも正面から取り組む。また日本アセットマネジメント協会(JAAM)の会員として、アセットマネジメントの専門家育成にも注力する。

取材に応じたIFSジャパン プリセールス本部 部長の宇治原里志氏は「日本市場には1997年に参入し、多くの製造業の顧客に対して製品を提供してきたが、正直EAMの市場ではまだまだ後発組だ。ポテンシャルが高いEAMビジネスを拡大していくためには、実績と専門性のあるパートナーが不可欠。ソルパックとの協業を通じて、どんどん拡大させていきたい」と意気込みを述べた。

  • IFSジャパン プリセールス本部 部長 宇治原里志氏

    IFSジャパン プリセールス本部 部長 宇治原里志氏