将来宇宙輸送システムは、金属3Dプリンターで製造した“国内最大規模”の推進薬タンクの耐圧・気密試験を実施したと3月24日に発表。試験結果を踏まえ、実際のロケット機体で使う推進薬タンクや、機体構造を作っていくとしている。

  • 金属3Dプリンターデ製造した推進薬タンク。黒丸部分は製造工程で積層時に発生したムラで、耐圧・気密試験において、漏洩(リーク)等は発生せず、所定の性能を満たしていることを確認したという

将来宇宙輸送システム(ISC:Innovative Space Carrier)は、宇宙往還を可能にする次世代輸送システムの実現をめざすスタートアップ企業。今回の取り組みは、同社が提携する3Dプリンター製造会社である英WAAM3Dと、クランフィールド大学、愛知産業との協業によるもので、検討開始から1年で推進薬タンクの製造・試験にこぎ着けたかたちだ。

ISCでは2028年をメドに、人工衛星を軌道投入することを目標に掲げており、開発効率を飛躍的に向上させる手段として、金属3Dプリンター技術を活用したアジャイル型の開発を進めている。その一環として、アーク放電の熱を使って金属ワイヤーを溶かし、溶接・積層する手法である「WAAM」(Wire Arc Additive Manufacturing)装置を導入した。

従来の開発手法では、大型ブロック材の確保や専用加工機の準備に長いリードタイムが必要だったが、WAAM技術を活用することで材料調達が容易となり、必要な形状を直接造形できるため、短期間での開発も可能になるとしている。また、金属3Dプリンターによる開発は設計変更への対応が柔軟で、修正を即座に反映し、新たな造形を迅速に実施できるという。この特長を活かし、開発サイクルの短縮や設計の自由度向上が見込まれるとのこと。

ISCでは、2024年3月のロケット後部構造モックアップ製造を経て、4月からFM(Flight Model)推進薬タンク開発に向けたプロダクト要件の策定、設計・製造プロセスを検討してきた。同年7月にはWAAM3Dと、WAAM技術の世界的知見をもつクランフィールド大学、日本国内でいち早く金属3Dプリンターに取り組んできたという愛知産業と業務提携の契約締結。これを皮切りに、国内最大規模となる推進薬タンクの製造を開始した。

こうして製造した金属3Dプリンター製推進薬タンクの耐圧試験と気密試験を、2025年2月に愛知・大府市のKSTで実施した。耐圧試験では純水を試験流体として使い、目標値の0.76MPaに耐えられることを確認。気密試験では窒素を試験流体として使い、目標値の0.69MPaで漏れなどがないことを確認したとのこと。

  • 耐圧試験の結果

  • 気密試験の様子