米国のAI企業Perplexityは3月21日(現地時間)、公式ブログで「A vision for rebuilding TikTok in America」を公開し、中国のByteDanceが所有する動画共有サービス「TikTok」の米国事業の再建プランを明らかにした。
TikTokを巡っては、安全保障上の懸念から今年1月に米最高裁が米国での使用禁止を容認する判断を下し、一時サービスが停止した。その後、トランプ大統領が禁止措置を75日間延期する大統領令に署名し、サービスは再開したものの、4月5日の禁止措置期限が迫っている。
米政府はByteDanceにTikTokの米国事業の売却を求めており、具体的な買い手候補として、Oracle、Microsoft、フランク・マコート氏率いる投資家グループ、そしてイーロン・マスク氏などが挙がっている。そうした中、Perplexityも今年1月に関心を表明していた。同社は、投資家コンソーシアムによる買収にはByteDanceがアルゴリズムを管理し続けるリスクが存在し、一方で巨大テック企業による買収では市場の独占状態が生じる懸念があると指摘する。TikTok米国事業の事業価値はPerplexityのそれを上回っており、同社は直接的な買収には言及せず、技術協力やパートナーシップを通じてTikTokの透明性、信頼性の向上、そして独立運営の実現を目指す考えを示した。
Perplexityが提案する再構築案は以下の通りである。
- 基盤システムを米国のデータセンターで再構築し、米国の監督下で開発・運営し、米国のプライバシー基準や規制に準拠する。
- 透明性を指針としてアルゴリズムをゼロから見直し、「おすすめ」フィードをオープンソース化する。
- NVIDIAのDynamo技術を活用してAIインフラを強化。
- Perplexityの引用機能とコミュニティノート機能を導入。
- Perplexityの回答エンジンでTikTokの検索を強化。
- PerplexityのLLM (大規模言語モデル)オーケストレーション技術を活用。
Perplexityは、TikTokを「中立的で信頼されるプラットフォーム」へと再構築するとしており、その中心となるのは「レコメンドシステムの透明性」である。動画が推奨される基準を明確に理解できるよう、アルゴリズムのオープンソース化に取り組み、これまで「ブラックボックス」とされてきた不透明さを解消する方針である。
NVIDIAが技術カンファレンス「NVIDIA GTC 2025」(3月17〜21日)で発表したオープンソース推論フレームワーク「Dynamo」を活用することで、TikTokのレコメンドモデルを従来の100倍規模に拡張しつつ、高速な推論処理を実現するとしている。
さらに、強力なコンテクストシステムとコミュニティからのフィードバックを活用し、信頼性の高い情報エコシステムを構築する計画である。その目標に向けた第一段階として、ユーザーが動画を視聴しながらリアルタイムで情報を照合できるよう、TikTok動画の機能を拡張するとしている。
PerplexityのLLMオーケストレーションを活用することで、動画内容の用語解説や背景知識の補足、多言語への自動翻訳、より深い検索などが可能になり、コンテンツの活用範囲が広がると説明している。一方、Perplexity側にTikTok動画を組み込みことも計画しており、「関連するコンテンツをより専門的に、推論や深いリサーチに活用できるようにする」としている。