NTTは3月21日、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に出展する「NTTパビリオン」の詳細を発表した。光技術を使った次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」の最新技術を活用することで、パビリオン内の電力消費を8分の1に抑えるとともに、リアルタイムで空間が伝送される世界初の体験などを実現する。
同日の記者発表会に登壇した島田明社長は、「低消費電力社会の実現や、まるで隣にいるような存在を感じる未来のコミュニケーションを、万博を通じて伝えたい」と述べた。
世界初の“リアルタイムで空間が伝送される”体験
NTTパビリオンは、万博会場の東ゲートを入ってすぐ右側に位置する。敷地面積は3500㎡で、大阪・関西万博に参画する民間パビリオンとしては最大規模となる。再生利用可能な布約18万枚やカーボンワイヤー1500本を活用しており、従来の建築に比べて鋼材料を20%削減、CO2排出を15%削減している。
3つの分棟(Zone1~Zone3)から構成されており、コミュニケーションの進化の歴史を学べる映像などさまざまなコンテンツを楽しむことが出来る。最大70人のツアー形式で、所要時間は20分だ。
最大の目玉となるのが、IOWNなどの最新技術を活用した「リアルタイムで空間が伝送される体験」。リアルタイムで3D点群データを作成する技術や、5感の一つである触覚振動を可知覚化する技術を組み合わせて実現する。
4月2日に世界初となるリアルタイム3D空間伝送を実施する予定。大阪・関西万博会場となる夢洲と、1970年大阪万博の会場となった万博記念公園(吹田市)をこれらの技術でつなぎ、3人組ユニットPerfumeのパフォーマンスをリアルタイムでバーチャル再現する。
来場者は3Dグラスを装着し、バーチャルで再現された遠隔地と眼前のパビリオンとが空間でつながる演出を楽しめる。なお、4月13日~10月13日までの会期中は、収録したデータを活用した演出を体験できるという。
「IOWN2.0」を実現するデバイスを初搭載、電力消費8分の1を実現
NTTが2030年の実現をめざして開発を進めるIOWNとは、「大容量・高品質」「低消費電力」「低遅延」を実現する次世代の通信基盤で、伝送だけでなくデータ処理を光技術で実現する。
現在の通信基盤で使用される光は、あくまでも電気で作られた世界の橋渡し役にすぎない。伝送に光ファイバーを使っている場合であっても、一旦電気に戻す必要がある。そこでNTTでは、通信の端から端までを一度も電気に戻すこと無く光の通信のみで完結させる「All Photonics Network(APN)」の実現を目指している。
その鍵となるのが光と電気の機能を組み合わせた「光電融合技術」。その適用領域はネットワークからコンピューティングまで段階分けされており、今回の大阪・関西万博で初実装されるのが構想の第2段階である「IOWN2.0」だ。
低消費電力につながる光電融合デバイス(ボード間を光信号で接続)を世界で初めて搭載し、消費電力を8分の1まで削減する。「必要な機能を必要な分だけ使えるリソース配分が実現できる」(島田氏)とのことだ。
同技術を活用し、来場者の盛り上がりがパビリオンの外観に反映される仕組みを実現。会場内の映像データをAIが表情分析することで、通常時は自然に揺れるパビリオンの幕を人工的に揺らす仕組みだ。パビリオン来場者の盛り上がりや表情がパビリオンの幕と呼応するようにした。
島田氏は「IOWNによって地球に負荷をかけない次世代の通信基盤を作り、幸せな進化を実現していきたい。実際に足を運んで、コミュニケーションの未来を体験してほしい」と呼びかけた。