東北大学、東急と東急電鉄、三菱マテリアルの4者は、鉄道事業で発生する使用済みケーブルのリサイクルの研究に4月1日から取り組む。東北大と三菱マテリアルが共同開発した原理を応用し、新たな湿式剥離法で銅線と被覆材を回収。鉄道業界への再生ケーブル供給をめざす。研究開発期間は2028年3月までの3年間。
新たな湿式剥離法は、被覆線の湿式剥離法に関する研究・技術開発を先導してきた東北大が主導し、銅をはじめとする非鉄金属の高度な製錬およびリサイクル技術を有する三菱マテリアルが共同開発してきた、湿式剥離法の剥離原理(溶媒膨潤+衝撃付与)を応用したもの。
有機溶媒にケーブルを浸漬すると被覆材が膨張(膨潤)するので、その状態で金属などの小さなボールで衝撃を与え、銅線および被覆材を損傷させずに分離・剥離させることを「湿式剥離法」と呼称している。
今回の研究開発で対象となるのは、現状は廃棄している東急電鉄の電気設備のケーブルや線路脇の信号ケーブル。これらは鉄道独自の外環境に耐えられるよう強度を高めているが、被覆線は細く、既存の被覆線処理技術では銅線と被覆材それぞれを高純度に選別するのは難しい。このため、使用済みケーブルからのリサイクル可能な資源として回収できる素材は限定的だという。東急電鉄では、こういった使用済みケーブルが年間平均約10t発生しているとのこと。
4者は、新たな湿式剥離技術で回収した銅線と被覆材を使い、東急電鉄をはじめとする、鉄道業界で使用する再生ケーブルとしてリサイクルすることをめざす。さらに、リサイクルによるCO2排出削減量と経済効果を定量化することで、将来の鉄道業界への波及効果を検証。将来的には他業界にも展開することで、可能な限り廃棄物を減らし、循環する仕組みの確立をめざす。