日立製作所と日本IBMは3月17日、日立の融資DX(デジタルトランスフォーメーション)サービスと日本IBMの金融デジタルサービスプラットフォームとの連携を開始すると発表した。具体的には、日立が提供する「金融機関向け融資DX推進サービス」と、日本IBMが提供する複数サービスとの連携を可能とした業務マイクロサービス基盤である「金融サービス向けデジタルサービスプラットフォーム(DSP)」が連携し、従来は一連の融資業務のうち、金融機関側が個別に勘定系システムにアクセスしていた顧客情報顧客情報や与信などの照会に関するプロセスが融資DXサービスの機能拡大として組み込まれるという。
日立の融資DXサービスを機能拡大
両社は、2024年9月からアマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)と3社で、地域金融機関の課題解決による価値向上と地域創生の実現に向けて、DX推進に関する共創検討を開始しており、今回の融資DXサービスの機能拡大は共創の一環となる。
近年、金融機関を取り巻く市場の急激な変化や多様化する顧客ニーズなどに対応するためDX推進が求められているが、地域金融機関ではベンダー間のシステム連携が難しく、迅速かつ柔軟にサービス提供できないことが課題となっているという。
そのため、3社はベンダー間で連携したシステムの全体最適化を目指したDXを推進することを目的として、2024年9月より共創検討を行っている。
金融機関の業務でも重要な役割を担う融資業務においては、契約書の電子化やWebチャネルへのシフトなどのDX化が急務であり、日立はそのようなニーズを受け、2023年7月から融資DXサービスの提供を開始し、金融機関15行が融資DXサービスを採用している。
しかし、融資審査・契約・実行などの融資業務プロセスにおいては、勘定系システムとの連携が必要なためDX化が難しく、金融機関では従来型の業務フロー(端末オペレーション、紙媒体)で個別に対応している。そのため、金融機関が業務効率化や生産性向上を進めるにあたり、課題になっていたという。
また、これまで金融機関では、各種チャネルシステムや外部ソリューションと基幹系の勘定系システムが密接に結びついており、新たなサービスを追加する際に勘定系システムの改修が必要なため、タイムリーなサービス提供の阻害要因となっていた。
そのため、機能拡大の特徴として、勘定系システム内にデータが存在する顧客情報や与信などの照会に関する業務フローについては、融資DXサービスとDSPが連携することで、リアルタイムでのデータ照会が可能となる。
これにより、従来行っていた金融機関側からの個別対応を省略し、融資DXサービスと勘定系システムが連携し、融資業務をワンフロー化して効率化することで、生産性向上ならびにコスト削減を実現するとのこと。
また、融資DXサービスとDSPがAWSのクラウドサービス上で連携することで、クラウドでの共通サービスとして取引メニューや提供サービスが拡張され、各金融機関は自行ニーズに合わせたサービスを選択することができ、柔軟な拡張性を実現。これにより、金融機関は計画的なDX化の推進による迅速なサービス提供が容易になるという。
今後、両社は融資申込事務の効率化に加え、融資DXサービスとDSPの連携による広範囲な融資業務のDX変革に継続して取り組む。主なDX変革テーマとして「ペーパーレス化対象範囲の拡大」「生成AIの広域活用」「ステークホルダーとのデジタル接続」を想定。特に生成AIに関しては、融資契約書の自動生成などへの適用を検討している。
さらに、融資業務で発生する事務や審査、郵送物、関係各社とのやり取りの生産性改善やコスト削減にも全方位に取り組むことで、地域金融機関における融資ビジネスの収益性向上に貢献していく。
将来的には、生成AIを活用するなど、融資DXサービスとDSPの連携による、融資業務における広範囲のDX変革に継続して取り組む考えだ。