2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の中でも最大規模の「未来の都市」パビリオンが完成した。このパビリオンは「Society 5.0の未来社会」を主たるテーマに掲げ、万博を主催する2025年日本国際博覧会協会と、KDDIや日立製作所など12社の協賛企業らが共創した。
本稿では、メディア向けに先行公開された「未来の都市」パビリオンの中で最も大きなエリアである、KDDIと日立製作所による共同展示について紹介しよう。
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市民が参加し未来の都市を作る「Mirai Meeting」
両者の共同展示「Mirai Meeting」は、「Mirai Arcade(ミライアーケード)」「Mirai theater(ミライシアター)」で構成されている。どちらも、一人一人の行動によってSociety 5.0の都市を作り上げる「市民参加型社会」の未来を体験できる。
大型パネルのシューティングゲーム「Mirai Arcade」
Mirai Arcadeは大型のタッチパネルを用いたゲームコーナー風の展示。最大3人で協力しながら、画面内で次々と巻き起こる社会課題に対して「ミライボール」を投げると、その課題が次々に解決されていく。
サイバー空間とフィジカル空間の融合「Mirai theater」
Mirai theaterは、120人ほどの来場者が一度に座って参加できる劇場型の展示。「2035年の未来をのぞき、課題解決に参加できるサイバー空間」という設定でミュージカル風の演出が披露される。
参加者は劇中に登場する未来の子供から、食や医療といった身近なテーマについてSOSを受け取る。これに対しタブレット端末や自身のスマートフォンなどを活用して回答することで、来場者の投票に応じて物語の結末が変化する。
サイバー空間とフィジカル空間をITでつなぐ体験を通じて、現状分析や将来予測によって社会課題を解決する「サイバーフィジカルシステム」についても理解を深められる。後述するメタバース空間のおかげで、会場に行けなくても現地と連動した体験が可能だ。
KDDIはメタバース空間に未来の都市を再現、アプリで体験可能
KDDIは4月13日からの大阪・関西万博の会期中、アプリ「αU metaverse(アルファユー メタバース)」で「バーチャル未来の都市」を提供する。万博会場の内外を問わずにアバターを介してメタバース空間で未来の都市を楽しめる。サービス利用は基本無料。
バーチャル空間の都市は「幸せの都市へ」をテーマに、KDDIとパビリオンの協賛企業らにより共創された。フィールドは空想地図作家の今和泉隆行氏が監修し、さまざまな未来の都市機能や価値観を反映した空間として設計された。中心部、ビジネス街、住宅街、次世代の農耕地、みなとまちの各エリアで構成される。
未来の都市パビリオンの副館長を務める2025年日本国際博覧会協会(万博協会)の高見明伸氏は「バーチャル未来の都市は、一つの大きなストーリーがバックグラウンドにありながら、協賛各社がそれぞれの分野でメッセージを伝える内容になっている。バーチャル空間ならではのユニークな体験を楽しんでほしい」と紹介していた。
なお、万博協会はこれとは別に、「バーチャル万博」を提供する。バーチャル万博からバーチャル未来の都市へのアクセスも可能だ。
バーチャル未来の都市では、アバターを操作しながらさまざまなクエストをクリアすることで技術を学ぶ「ミライリサーチ」を体験できる。環境問題や人口減少、労働力不足などの社会課題に対する解決策を集めると、特別デザインのNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)を獲得できる。もちろん、クエストには参加せずバーチャル空間で街の中を自由に散策しても楽しめる。
バーチャル未来の都市プロジェクト全体を統括するKDDIの舘林俊平氏は「各社が見せたい技術を展示するために都市をデザインするのではなく、まずは未来にありそうな都市をデザインしてから各社の技術を配置した。万博会場では表現しきれないモビリティや高精細な表現をバーチャル空間で感じてほしい」と説明した。
バーチャル未来シアターでは、上記の万博会場の「Mirai theater」と連動した体験を提供する。現地参加者の選択した未来のストーリーがリアルタイムにバーチャル未来シアターにも反映されるため、会場外からもコンセプトを感じられる。
KDDIは万博の開幕に先行して、GINZA 456 Created by KDDI(東京都中央区銀座)においてベータ版の体験イベントを開催する。事前予約は不要で、無料で体験可能。万博が待ちきれないという方は、まずはバーチャル空間で一足先に雰囲気を感じてみるのも良いだろう。