
日本には株高材料が見当たらない
東京株式市場は攻防の分岐点に差し掛かっています。株価が下がる場合の3条件がありますが、第一に中央銀行・日銀が利上げ、金融引き締めをする、第二に政府が増税する、第三に世界経済が悪化、地政学リスクが高まるという3つです。
株価が上がる時には、この逆で金融緩和、減税、世界経済・地政学の安定ということになります。では、日本、米国を取り巻く情勢は株高材料か、株安材料なのか。日本は、日銀が利上げをし、さらなる利上げを検討していますから株安材料です。
それもあって、日経平均はなかなか4万円の壁を突破できていません。また、今のところ増税の話はありませんが、過去の日本は増税路線で来ています。そして世界情勢は米トランプ大統領登場で世界の地政学リスクは収まりつつありますが、日本の景気、株価は米国次第です。
2月末にかけて日本の株価が下落していますが、要因は円高になっているからです。利上げ、金融引き締めは円高につながります。
米国金利の動向にもよりますが、日銀が利上げをすると日米金利差が縮小し、円高になるという極めて単純な構図で円買い、ドル売りが起こっているのだと思います。
そうして1ドル148円台、149円台に入っていますから、それが株価下落につながっています。今は円ドル相場の動きが株価の行方を左右する状況になっていますから、その動きを解説したいと思います。
2023年1月の127円台の円高から、24年7月3日の161円までの円安相場の後、今は円高に向かうか、円安に向かうか、方向性が定まらない状況です。次の波動、相場展開に向かって、一種の踊り場になっています。
24年は日銀が7月下旬に利上げした直後、8月5日に1ドル=141円69銭となり、その日は株価が4400円下落し、水鳥の羽音に驚いて退散した平家のような動きになりました。
8月5日に続いて、9月17日には140円34銭という直近の円の高値を付けましたが、今の動きがここに向かっているのかどうか。
24年11月15日に156円76銭の円安があった後、12月3日には149円50銭という円高がありました。足元はこの水準と面合わせになっています。
24年末の149円50銭近辺で円高が止まるのか、あるいは24年8月、9月の140円近くまで行くのか、この後見極める必要があります。
24年9月の140円34銭に向かう円高なら、この後、日経平均は今の3万8000円から4万円という狭いゾーンのボックス相場から下に放れて、24年8月5日の3万1156円という一番底に対する二番底を付けに行く展開になります。
逆に、148円、149円近辺で円高がピークアウトし、再び円安に戻るようならば、3万8000円から4万円の間での揉み合いが続きます。日柄から見て、円高がこれ以上進まなければ3月中にもボックス相場が終わり、株価は上か下かに放れていくことになります。
まさに攻防の分岐点で、円安株高になるか、円高株安になるか、近く方向性が決まるのではないかと見ています。
今後の日柄の読みですが、24年7月11日に4万2426円という二番天井、直近の高値を付けた後、8月5日に一番底を入れ、下げ過ぎの反動高によるリバウンド相場がありました。
下げ過ぎの反動高で最初の高値が、9月2日の3万9080円です。この水準を付けて以来、3万8000円から4万円のゾーンで揉み合いが続いています。
いわば中段保ち合いが始まった9月から、中期波動で相場が動くなら6カ月後ですが、2月末から3月が6カ月目に当たります。日柄から見ても、3月中にも上か下かに株価が動き出すという読みになります。
下に放れる場合は円高が進みますから、株価の行方を左右する情報を考える必要がありません。世界情勢も米トランプ大統領が他国に関税をかけていますから、これも売り材料です。
日本国内を見ると、利下げ、金融緩和や減税は考えづらく、株の買い材料がなかなか見当たりません。そうなると、近く始まる2025年の企業の3月期決算が勝負ということになります。
企業業績がいいという情報が出てくると、それを織り込む株高となって、5月中旬、ゴールデンウィーク頃までには4万円の壁を突破し、24年7月の高値に接近、あるいは突破する展開が予想されます。
今後の株価の動きをシンプルにお伝えすると、円高なら二番底へ、企業業績好調なら4万円の壁突破ということになります。
前述のように、国内に株高要因はなく、株安材料だけがあります。日銀の動きを見ても、審議委員がさらなる利上げがあり得ると言及しています。何もしなければ日本の株は上がりません。
上昇の可能性としては指摘したような3月決算の好調、円高のピークアウトに加え、米トランプ大統領が外交政策である程度目的を達すれば、すでに公約している法人税や所得税の減税を打ち出してくると思いますから、これは米国の株高につながり、連動して日本株も上がります。
おそらく年央くらいまでにトランプ大統領が動くと思いますから、やはり4月~5月頃が転機となって、一進一退から4万円の壁を突破し、企業業績好調なら、24年7月の高値を奪回して新高値を付ける可能性があります。これは年央、7月の参議院議員選挙にかけて起きるのではないかと思っています。
関税によって米国内が物価高となり景気後退につながるという指摘も出てきています。最悪のシナリオはスタグフレーション(不況下の物価高)です。
トランプ政権はこれを避けたいわけですから、高関税の後は景気、株価にプラスとなる政策を打ち出してきます。なので、今は減税という伝家の宝刀を抜くタイミングを図っているのではないかと思われます。