電気自動車(EV)、電動スクーター、ノートパソコンなどでリチウムイオン電池が原因となった火災が世界的に発生しています。最近ではカリフォルニアのモス・ランディング発電所での火災、昨年もニューヨークでの電動アシスト自転車の火災、そして韓国の電池メーカーでの火災などがあり、リチウムイオン電池の安全性に対する懸念が高まっています。

リチウムイオン電池の火災の原因を特定することは難しいことが多いですが、主な原因としてはバッテリーの損傷/外部短絡と内部短絡が挙げられます。

バッテリーが外部から損傷すると、電解液漏れや外部短絡が発生し、火災につながる可能性があります。この外部損傷のリスクはパックや車体の設計によって、ある程度対策が可能です。

しかし、内部短絡は検知が難しく、パックや車体設計からの対策も困難です。特にリチウムや金属コンタミによる内部短絡は、充放電の繰り返しに起因するデンドライトの成長によるので、出荷前の検知は不可能です。

内部短絡のもう1つの原因は、正極と負極がアライメント不良によりセル内部で直接接触する事ですが、出荷前にとらえる事は容易ではありません。現在まで、内部短絡を根本的に防ぎ、モニターする実用化可能な技術は存在せず、発火事故や大規模リコールの多くが内部短絡を原因としています。これは、電池の安全性における重要な課題の1つです。

リチウムイオン電池におけるデンドライトの発生要因

リチウムデンドライトとは、バッテリーの炭素、シリコンなどの負極の表面で成長する針状または樹枝状の結晶です。

金属のコンタミによっても、同種金属によるデンドライトが負極の表面に成長します。バッテリーを充放電すると、リチウムイオンは負極(アノード)と正極(カソード)の間を移動します。しかし、急速充電や低温での充電、長期サイクルや長期放置による性能低下した電池の充電、低品質の電極や電解液を用いた電池を充電するなどの条件下では、リチウムイオンが負極材料に吸収されず、表面に析出(プレーティング)することがあります。また、セパレーターのしわやピンホール、電極の損傷などによっても、デンドライトが生じます。NMCやLCOの層状化活物質を用いた電池を過充電すると、負極上にデンドライトが大量に発生し活物質も不安定になり、すさまじい発火事故につながります。

デンドライト以外の内部短絡

電池の製造工程で負極サイズは正極より大きく、また、セパレーターは負極より大きくとる必要があります。リチウムイオン電池発売当初は、これらのマージンを大きくとり、安全性を確保していました。高エネルギー密度の要求によって、電池が大型化するとともに電極長が長くなり、特に電極幅方向(電池の高さ方向)において正極、負極、セパレータの安全性マージンを削り、エネルギー密度を向上してきました。これにより、製造プロセスの安全性への影響は次第に大きくなり、微細な不良が正極と負極が接触する内部短絡を生じる事故を起こし、火災事故・リコールを増加させたと考えます。

デンドライトの成長を防止し内部短絡をモニターするには?

より安全なバッテリーを作るために、24M Technologiesでは、デンドライトの発生源でその成長を阻止するセパレーター技術「Impervio」を開発しました。

Impervioはデンドライトの成長を原理的には100%防止できるほか、セルの状態を常にモニタリングすることで、熱暴走や内部短絡が発生する前に早期に予兆を検知し、個々のバッテリーセルの安全な放電やシャットダウンを実現します。今までのBMS(バッテリーマネジメントシステム)では、電池内部からの直接の情報はなく、事前に危険事象を検知する事は不可能でしたが、Impervioではそれを可能としました。Impervioセパレーターは、あらゆるバッテリー形式に対応できるほか、既存の製造プロセスへの統合も可能となっています。

持続可能な未来を力強く支えるテクノロジー

24M Technologiesのセパレーター技術は、デンドライトの発生を根本的に抑制することで、EVやエネルギー貯蔵システムといった重要なアプリケーションにおいて、バッテリーの安全性と信頼性を向上させることができます。よりクリーンで持続可能なエネルギー・ソリューションを目指し、電動モビリティーや再生可能エネルギーへの移行を安全かつ確実なものにするためには、Impervioセパレーター技術のようなイノベーションが重要となります。