
少数与党下で2025年度予算案の国会審議に臨む石破政権が、連日野党から予算案の軌道修正を迫られている。
社会保障関係では、医療費が高額になった際の患者負担を抑える「高額療養費制度」の自己負担上限額の引き上げ案が立憲民主党などから「がん患者らの負担が重すぎる」と厳しい批判にさらされ、政府・与党は長期治療が必要な人の負担を緩和する検討に入った。
高額療養費制度は、入院などで医療費が高くなる場合に備え、所得に応じて月額の自己負担に上限を設定している。
厚生労働省は昨年末、所得区分を細分化するなどして、今夏以降、3段階に分けて上限額を引き上げる案をまとめた。厚労省幹部は「賃金上昇分の反映や、子育て支援策に必要な財源捻出などが狙い」と説明。例えば、年収700万円の場合、27年8月には負担上限額が月約14万円となり、現在より約6万円高くなる。
がん患者などは治療が長期間にわたるため、直近12カ月以内に3回以上負担上限額を超えると、4回目からは上限額を引き下げる「多数回該当」の仕組みがある。現行では年収700万円のケースで4回目以降の上限額は月4万4400円。政府案だと27年8月には同7万6800円に上昇してしまう。
このため、患者団体から「高額薬が必要なのに、治療を続けられなくなる」「現役世代の患者の意見を聞かずに引き上げを決めた」などと猛反発。立憲民主党は、今年8月からの引き上げを凍結するよう求めた。
このままでは25年度予算案の年度内成立の足かせになると考えた石破茂首相は、2月4日の衆院予算委員会で政府案を再考する意向を表明。厚労省が4回目以降の負担上限額の引き下げ幅拡大などを検討している。
高額療養費の見直しは国会承認が不要の政令改正で済むため、少数与党の石破政権にとって「進めやすい負担増施策」のはずだった。しかし、丁寧な手続きを経なかったために暗礁に乗り上げてしまった。